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交渉人 真下正義
踊る大走査線シリーズのスピンオフ第1弾作品ということで、シリーズ自体大好きな人間としてかなり期待をして観に行ったこの作品。いい意味で期待を裏切られる作品だった。

前作のOD2でLAで訓練を受けて警視庁第1号のネゴシエーターとして帰ってきたキャリア組の真下正義を主人公に据えた今作。
交渉人(ネゴシエーター)、地下鉄パニックムービー、という前宣伝の決まり文句は確かにそのとおりの映画ともいえたけれど、そこは踊るシリーズ、OD1、OD2がそうだったように意外な展開の連続で大きく予想していたものと違う作品になっていた。

※この先、公開直後の映画についてネタバレが予想されるのでご注意ください。

※特に観る予定の方、なにも知らないほうが数倍楽しめますので!



まず限定された時間の中での攻防という緊迫感が凄かった。実際2時間ちょっとの映画の中で経過した時間は約6時間。その中で事態はさまざまなかたちに変容する。

前半の地下鉄の混乱状態は激しく荒々しく展開して緊張感を煽る。なかなか交渉の出番が来ないまま、わけもわからず事態がどんどん悪化していくさまはそらおそろしい。

その中で交渉課やTTRの面々のキャラクタの紹介や、さりげない笑い、この事件の舞台である地下鉄の前提条件の説明等が巧みにテンポよくなされていく手際がいい。それぞれの関係性ややり取りの基本がここではっきり提示されることで、そのあとの物語の深みがぐんぐん増すつくり。観終わったあとに今回初登場の人物たちに愛着を持たせる手腕がみごと。

特に交渉の真下とコンビのように活躍する現場捜査の木島丈一郎がとてもいい味だった。勘をたよりに強気で短気で昔風なべらんめえ口調でアグレッシブに足で操作する木島と後半までTTR総合司令室から一歩も動かない真下。とてもいいコンビ。さらにTTRの総合指令長や広報もいい。
しかしなんといっても僕が一番気に入ったのは線引き屋、熊沢鉄次。ダイヤが乱れたときに緊急にラインを引きなおす専門職らしいのだけど、この映画の中では和久さん的なポジションとなってその心意気がじんわりと心に沁みた。

交渉自体は前回OD2と大きな違いはなくゲームとして事件を起こす愉快犯との対決。ゆえにどこかの映画であったようなお互いの欲望の駆け引きのようなものではなく、ドライに淡々と、しかし真剣な勝負が繰り広げられる。その均衡をまず乱してしまうのは真下なのだけど、犯人もラスト近くで大きく揺れる。見落しかもしれないけどその理由がよく分からなかった。結局犯人のバックボーンはほとんど語られず正体も不明で終わってしまうためちょっと消化不良。

ユースケがとにかくかっこいい。真下というキャラクタの現代の若者的な存在感がとても魅力的にとられている。事態が急速に悪化していくときの涼しい表情や交渉中の話し方、犯人の本当の狙いが明かされてからの迷いやあせり、どれもいままでのヒーローにない表情をみせる。今回はほとんど笑いの要素がない役回りだったのにまったく問題なかった。

そして後半の怒涛の展開。地下鉄パニックムービーという触れ込みからこの流れは全く想像できなかった。西村雅彦がタクトを振るゆったりとしたクラシックに乗せて、めまぐるしく切り替わるカットがとてもスリリング。それでいてユーモアや仲間の絆といった要素が盛り込まれていてとても濃密。

犯人側にドラマがないことを含めて、映画を通して訴えてくるメッセージのようなものはなくあくまで娯楽として優れた作品だと思う。シリーズのテイストはあるものの、踊るシリーズの骨格である縦社会の上と下の軋轢のようなものを今回はばっさり切っていたり、意外とシリーズにとって大きな要素を徹底的に排除していて、1つのサスペンス映画としてのクオリティを重視しているところも素晴らしかった。

本編前と本編後にちょっとではあったけど、「容疑者 室井慎次」の予告も。こちらは踊るの中心人物だけにシリーズ色の強いものになりそう。留置所に入れられた髭が伸びた室井さんとかなかなか衝撃的。『青島よ、約束は果たせそうにない…。』なんてテロップを見せられたら、もうこれも観るしかないわけですよ。大期待。
by kngordinaries | 2005-05-09 01:25 | 映画、ドラマ


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