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アナログフィッシュ キッス・ジャパン・ツアー 名古屋クラブクアトロ
12月の京都磔磔からCDJそしてこの日のライブと立て続けにこのバンドのライブが観られることが、とても嬉しかった。

名古屋クラブクアトロは初めて行くライブハウスだった。
パルコの東館のタワレコの上。パルコを徘徊していて開場の1時間以上前に東館に一度訪れたとき、あとで並ぶことになる階段に設置された整理番号の案内を見てちょっと笑った。
「200番~」という案内の数m先に「当日券はこちら」という案内。なるほどチケットの売れ行きのほどが分かりやすい。

タワレコ内を物色していてふと時間を確認すると18時2分。急いで階段へ向かうと50番台が入場中。90番だったのでほとんど待たずに入場。
次のライブ告知があるはず、と予想していたので入り口で手渡されるチラシをすぐに確認。
きた!4月22日京都磔磔!
次は磔磔だ、と今から始まるライブをよそに未来へ想いをはせつつロッカーに荷物をしまい、フロアへ。

すでに前列は埋まっていた。5,6列目くらいの下岡側を確保。
ざっと見渡して200人はいないけれど、それでも前回の名古屋ワンマンの倍近い。しかもあのときは、ほとんどがアウターを着込んだまま棒立ちで聴くような雰囲気だったわけで。
今回はTシャツ姿も多く、みなわくわくしてる感じが伝わってくる。

開演時刻を数分過ぎたとき、客電が消え、このツアーお決まりの出囃子とともにライブは始まった。

※この先、公演中のライブ内容についてネタバレがそれはもうてんこ盛りです。ご注意ください。





KISSのロックン・ロール・オール・ナイトが大音量で流れる中、アナログフィッシュの3人が登場!
服装がいつもと違う。佐々木はいつもの白シャツ黒ネクタイにさらに今日は黒のジャケットを羽織っている。下岡は七分袖のYシャツにキラキラと輝く装飾がついた黒パンツ。斉藤は白地にピンクのストライプの入ったシャツにサスペンダーの付いた白いパンツ。なんだか全員カッチリしている。
佐々木が走ってステージ右隅から左隅へ、勢いあまって客席から観えなくなりそうになりつつ中央まで戻ってきてお決まりの舌をベロベロと動かすパフォーマンスで煽る。
「アナログフィッシュ!キッス・ジャパン・ツアー!名古屋!始まるよー!」
軽く音を合わせ、下岡がつぶやくように言う。
「リー・ルード」

リー・ルード
イントロのリフが鳴らされた瞬間、もう踊りだすしかない。
この単純だけど快感のツボを突きまくるギター、曲の色合いをぐいぐいと塗り替えていくベース、そして一音一音が体の芯まで震わすドラム。一気にフロアの熱が上がる。
下岡の「リー!」に「ルー!」と返す佐々木・斎藤・観客。もうこれで共犯関係は結ばれた。シンプルすぎるやりとりが奇妙にねじれた快感をフロアにもたらしていた。
すでにこの時点で腕が掲げられた回数は、前回の名古屋ワンマン全部の回数を越えていたかも。
スピード
さらにギアを上げて佐々木が熱っぽい歌声を響かせる。下岡がインタビューで語っていたけど、佐々木の歌はほんとに彼の人間性をまるごとぶつけてくる。上手いというより伝わる。熱のこもった歌声がBPMの何倍ものスピードを感じさせてくれる。曲間で下岡と佐々木が接近して演奏で掛け合いをする瞬間がかっこよすぎる。サビのコーラスも圧巻。
紫の空
さらに伸び伸びと歌い上げるアップチューン。いつもどおりなのかいつも以上なのか、とにかく佐々木の歌声が抜群に気持ちよく強い。
そしてインプロに突入。有無を言わせぬこの気持ちのいいグルーヴに乗りつつ、次に鳴らされるであろうアンセムをワクワクしながら待つ。
「ハロ――――――!!」
下岡のシャウトからジャカジャーン!とギターが響く。
Hello
浮遊感のあるポップとソリッドなバンドサウンドが融合した最高のアップチューンで盛り上がりは最高潮。ドラムの音一つ一つが気持ちよく心を弾ませる。ベースが体を踊らせる。ギターがめちゃくちゃに脳内をかき回す。なんて軽やかでディープな表現だろう。

ここで斎藤MC。
「こんばんは。アナログフィッシュです。久しぶりのワンマンライブに来てくれてありがとう」
と相変わらず棒読みスタイル。
「今回は、衣装をみんなで揃えたんですよ。今回のこの日のためだけに」
と衣装をアピール。
「もう脱いでしまった奴もいますが」
「すいません。暑くて脱いじゃいました!」
と佐々木。
「すごい汗かいてるよね。透けてるよ。その汗の量はライブの後半の15曲目くらいの量だよ。3倍くらい動いてるってことになるね」
と、下岡。

Queen
暖まった会場をズドンと底なし沼に落とし込むようなディープなミディアムチューン。このタメのあるリズムを聴かせるのは相当難易度高そうだけれど、今回は少しアンサンブルがぎくしゃくしていた気がする。
後半にかけてサウンドが爆発していくのと同時にどんどん幻想のなかに引きずり込まれていくようなサイケデリック。
いつのまにか
穏やかで柔らかなミディアムチューン。佐々木の歌声が優しく伸びやかに響く。
ラブホ
ふわふわとした出だしのメロにどうしようもなく切実な心情を綴った歌詞を乗せ、サビで一気に感情を爆発させるロックチューン。この初期の佐々木曲の王道パターンの曲たちは、このバンドのスタンダードとして強い。しびれた。
月の花
気持ちのよい歌謡テイストのメロを伸びやかに歌い上げる。穏やかに歌に聴き入っていると後半の複雑にねじれながら炸裂していくバンドサウンドに圧倒される、という1曲でお腹いっぱいな1曲。曲が終わった後、大きな感嘆のため息が出た。最高だった。

ここで佐々木のMC。
「今アナログフィッシュは年末から曲作り中なんですけど、今年は出来た曲はどんどんみなさんにライブで披露していこうと思っています」
会場拍手。というか、でも去年もずっと未発表曲をちょこちょこ入れたセットだった気もするけど。
「僕は本当にいつもいつもどうしようもない、だらしない毎日を送っているんですけど、それがなんか夜の感じなんですよね。そういう感じを表そうと思った曲です。アンセム」
というような曲説明だったような(記憶が曖昧、曲名も曖昧)。

アンセム(新曲 曲名は間違いかも)
メジャー感のある明るい雰囲気で力強い突き進むようなリズムのポップなアップチューン。最近の佐々木曲には珍しい突き抜けた明るさがあり、メロもこの上なく明快にして爽快。とても新鮮で佐々木の表現がまたさらに進化してることがはっきり伝わってきて嬉しかった。まだまだガツンガツンに成長期真っ最中のもよう。

「アンセム(2度目もよく聞き取れず)という曲でした。こんなふうにできた曲をどんどんライブで出していって、いい曲を作っていけたらと思ってます」
と佐々木。
「いや今のはいい曲だと思うよ」
「俺も」
と口々に感情のこもらない賛辞を送る2名。
「ありがとう」
素直な佐々木。
「じゃあ・・・行きますか、下岡さん」
とネタ切れて斉藤から下岡へバトンが渡される。
「では、明るくない曲を(笑)、やります。ハーメルン」

ハーメルン
リバーブを効かせた下岡ボーカルが怪しく歌いだし、不穏なギターソロが鳴り響けば会場はまたディープゾーンに包まれる。しかしここで下岡が歌詞を思いっきり飛ばす。佐々木のハモリを頼りに後半復活したものの、この狂気すら感じる1曲にどっぷり浸かれなかったのは残念。
ナイトライダー2
イントロのドラムが響いただけで体が踊りだす、中毒性の高すぎる劇薬のような1曲。ここまでも素晴らしかったけれど、この曲はさらに演奏のキレが増し、下岡の歌もグルーヴを深め、穏やかな曲調なのに心を熱くさせる力があった。
さらに後半、激しく波打つようなブリッジからさらにギアを上げ爆裂するサウンド。静と動を交互に繰り返すようなアウトロに合わせ、ゆらゆらとステージ隅(静)からドラムの目の前(動)までを行ったり来たりする下岡。何かがとりついたような鬼気迫る演奏が圧巻だった。
バタフライ
さらに深みにはまっていくような粘着質な1曲。ほんとにステージが魔法がかったように気持ちのいい演奏が続く。後半、一気にテンポを上げていくパートからフロアは壊れたような盛り上がり。

圧巻のパートが終わり、しばしステージもフロアも息をつく。
「こんばんは。アナログフィッシュです」
今日何度目かの挨拶をする斉藤。眼鏡のくもりをふき取りつつ
「あなた、さっき歌詞とんだでしょ」
と下岡を攻撃。
「よーし。次。が ん ば る ぞ!」
と聞こえないふりをする下岡。会場笑。

白黒ック
ポップな曲調で乗せていくポップチューン。スカスカのアレンジがきっちりと決まっていて抜群に心地いい。
LOW
さらに初期のアンセムを畳みかける。サビの突き抜けるようなメロとコーラスが爽快。
確信なんかなくてもいいよ
さらにがむしゃらでやぶれかぶれな勢いに満ちたロックチューンを畳みかけ、フロアの盛り上がりは最高潮へ。
「ドゥーユースティルニード ビージーエム?」
との下岡の問いかけに「ノーサンキュー!」の大合唱で答える観客。
BGM
放たれたアンセムに一気に飛び跳ねるフロア。「B!G!M!」の大合唱が巻き起こる。音楽の大切さを歌ったアップチューンは早くもエバーグリーンな魅力を宿している。
「名古屋の街の住み心地はどうですか。僕のTownはアップアップです。Town」
Town
穏やかで冷静でシニカルな世界(Town)への目線は、だんだんとその視界をくっきりと定めていき、いつしか寄り添うように暖かいメッセージを投げかける。全くの他者であることを百も承知で、それでも真摯に全て(Town)を見つめるこの曲の主人公に、どれだけの人が背中を押されたことだろう。なすすべも無く、立ち尽くす前にこの曲を聴こう。
ずっとずっと聴き続けていたくなる最高の演奏だった。

ここで下岡MC。
「こんばんは。アナログフィッシュです」
MC冒頭で必ず挨拶するのはなぜだろう。会場微笑。
「なんか言うことありませんか。佐々木さん」
と斉藤にふられて佐々木が話す。
「えーと(汗)、えっと、あの、さっき言ったことと被るんですけど、今年は出来た曲をどんどんライブで見せていこうと思ってます」
それにつっ込む下岡。
「それ被ってるんじゃないでしょ。被ってるって言うのはこう全体があってそのこの3分の1くらいが同じことで(と身振り手振りを交えて力説)、他は違うって言うのが被ってるってことなんだよ」
会場笑。
「細かいですよー。下岡さんは」
と加担する斉藤。さらに勢いとまらぬ下岡が
「今のは全部さっき言ったことと一緒なんだから『さっきと同じこと言いますけど』って言わないと。言い直せ」
と命令。
戸惑い2,3回客席と下岡にきょろきょろと視線を泳がす佐々木。
「さっきと同じこと言いますけど」
素直な佐々木。会場爆笑。
「今年もアナログフィッシュは頑張りますんでよろしくお願いします」
ここで、あれ?結局今はさっきと同じこと言ってない!と心の中でつっ込んだのは僕だけだろうか。

僕ったら
前回の京都磔磔では一部高音が出ていなかった部分が今回はしっかりと出ていた。佐々木の熱のこもったロマンチシズムが爆発した人間臭いラブバラッドが大きな感動を会場にもたらしてライブ本編は大満足で終了。

熱いアンコールに再びステージに登場したのは佐々木健太郎ただ1人。
このツアー恒例の弾き語りタイムだ。
「アナログフィッシュ以外の曲でもいいですか?(会場拍手) 僕、斉藤和義さんが大好きなんですけど。斉藤さんの曲で『空に星が綺麗』という曲をやらせてください」
空に星が綺麗
確かな演奏と力強い歌声が抜群にここちよく響いた。暖かな雰囲気が会場を満たす。
「ではアナログフィッシュの皆さん、どうぞ!」
となんだかおかしな佐々木の呼び込みで2人がステージへ。2人とも上はTシャツに着替えていた。パンツがかっちりしてるだけになんだかおかしい。
シティ
トリッキーな演奏と弾むようなメロが心地いいアップテンポなポップチューン。まだ音源化されていなく、4月の名古屋ワンマン以来久々に聴いたけれど、すんなりと曲に入っていける即効性がすごい。「In the city!」と繰り返されてたと思われるサビが最高だった。早く音源化希望!
「シティ、タウン、BGM・・・。下岡さん、街関係多いですよね」
と斉藤。
「うん、最近いっぱい作ってる曲を整理してみたら『シティ』って付いてる曲が3,4曲あった(笑)。これはいかんな、と思って違うの作ろうとするんだけど、そうやると上手くいかんのよ」
と下岡。
これは凄く興味深い発言だ。天才肌のこの表現者の脳内は今どうなってるんだろ。
出かけた
散歩に出かけたことを歌うミディアムチューン。そのあまりに日常な題材が下岡にかかればこんなにも壮大な脳内小宇宙を作り出す。果てしなく広がる言葉の世界感とビリビリと音が割れるほど爆発しながら不思議と心地いい幻想感をもたらす圧巻の演奏と下岡渾身のシャウトに、完全に別世界に連れて行かれてしまった。壊れたように踊り狂ってしまった。
ここでアンコール終了。

なおも熱いアンコールが湧き起こり、しばらく続いたところでステージライト点灯。佐々木が登場。
「アンコールありがとうございます。すみません。今日はもうこれで終了です。次はまた秋に!」
ん?ずいぶん先だな、という微妙な反応が広がる客席。
「いや、あ、あたたかくなるころに!」
あーそれなら納得。というかなんだろ、その言い間違い。
ということで残念ながらも頭を下げて退場する佐々木に拍手を送ってライブは完全に終了。

言うことなし。最高のライブだった。
前半、少し演奏が完全じゃなかったり、下岡の声は微妙に出ていないところがあったり、ハーメルンでの歌詞飛びもあったけれど、全体のクオリティとしては何の問題もなかった。
特に佐々木の歌声は素晴らしかったし、佐々木新曲の新鮮な世界はとても嬉しかった。個人的には佐々木デイ。

Town、ナイトライダー2、出かけた、といった長尺な曲の演奏が素晴らしく、他の曲も含め奇跡的な瞬間が何回も何回も訪れた。4月の名古屋ワンマンからずっとアナログフィッシュは、今バンドマジックが起きている特別な状態にあるんだな、と思っていたけど、今回のライブを観て、もうそれがこのバンドの日常になっているんだと思った。
そんな瞬間の作り出し方をバンドがコントロールでき始めているような。どんな状態でも観客を満足させられる、という職業ミュージシャンに必要な高度な保証がなされたような。そんな印象を受けたいいライブだった。

ただ一つ。京都磔磔ワンマンで披露された新下岡曲「イワシ」が聴きたかった!あれは強力だ。

イワシ、シティ、アンセム(?)。ライブで1,2回しか聴いてないのにもう最高に気に入ってしまったこの曲たちを音源で聴けるのはいつの日か。

帰り道。チラシをよく観ると新宿LOFTは下岡曲限定ライブと佐々木曲限定ライブの2daysだという衝撃的事実に気付き、どう策を労せば行けるか考えつつ、頭の中は「出かけた」で別世界に飛ばされたままふわふわしていた。

最高のライブのあとにその次の行けるライブが決定してることほど嬉しいことはない。
あ、当然ですが京都磔磔行きます!
by kngordinaries | 2006-01-15 23:54 | ライブ


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