吉井和哉 'MY FOOLISH HEART' Zepp Nagoya
初めて乗ったあおなみ線をささしまライブ駅で降りて会場に向かう。

18時35分、すでに入場の混雑はなくなっていたのですんなりと入場。とりあえずロッカーに荷物を預け、すでに人で埋め尽くされたフロアへ。
前回も感じたけれどやはり普段行くライブとはずいぶん客層が違う。でも前回はほとんど見受けられなかった10代っぽいお客さんも散見された。

前回のツアーのようなステージ上からではなかったけれど、場内にライブ中の注意事項のアナウンスがされ、しばらくしてライブは始まった。

※この先、公演中のライブ内容についてネタバレがあります。ご注意ください。




かっこいいロックンロールなノリのリズムトラックが流れる中、吉井和哉とサポートメンバーがステージへ。
吉井は白っぽい少し大きめサイズのトレンチコートを羽織っている。前回のすっきりした短髪にTシャツのスタイルに比べれば今回はパーマがかった長髪にコートで少し着飾った印象。

TALI
イントロから大歓声が湧き起こる。そして白くまばゆい照明に照らされ歌いだす吉井和哉。歌声がフロアに響き渡ると一気に会場の空気が変わる。2番の歌詞では
「雨降っ・・・髪切っ・・・みごもっ・・・」
と、『たり』をこちらに歌わせようという演出も。

「名古屋のみなさんこんばんは。今日はこちらから見た印象では・・・岐阜・三重から来た人が多いような」
どんな印象だ、それ。
「最後まで楽しんでいってください」

CALL ME
シリアスなイントロが鳴り響くと湧き上がる拍手。冒頭からいきなりのアンセム連発に鳥肌がたった。バンドの演奏が素晴らしく固まっていてこの曲の持つ熱さと冷たさがまっすぐに表現されていた。ハンドマイクを抱え込むようにして吐き出すように熱唱する吉井の歌声はどこまでも切れ味抜群だった。
SIDE BY SIDE
切り裂くようなギターから「破れている 中身出てる 可愛い顔のBABY 君だって」という歌いだしから一気に奈落に突き落とされるようなディープな表現に包まれる。深い絶望感を感傷的なバラードにも攻撃的なアップチューンにもせず、気持ちの悪いミディアムテンポのロックに託した重苦しい1曲。
「まだ平穏じゃ 平穏じゃない 一過性の夢想でもない 無理に笑うのよせ」
とラストのフレーズを歌いきり、乱れた前髪に目が陰になっている状態でにやりと口元を引きつらせる吉井。赤い照明がそこだけを一瞬くっきりと照らし、暗転。
背筋が凍るような演出だった。

暗転したステージでセンターにマイクスタンドが置かれギターを手にする吉井。
SADE JOPLIN
さらに沈み込むようなミディアムチューン。前回のツアーでは披露されなかった「at the BLACK HOLE」からのまさに底なしの闇のような曲が続く。
この展開は意外だった。最新曲であり吉井和哉名義での初のシングル「BEATIFUL」があんなにもフラットで澄み切った感情を表現しているのに、今この暗黒期とも思える曲たちをセットに組み込む吉井和哉の真意が少し疑問にも思えた。
HATE
さらにシリアスなミディアムチューン。どの曲もバンドの演奏がとにかく素晴らしい。
FALLIN' FALLIN'
ここまでのディープな流れに比べるといくぶん開放的なアップチューン。しかしこれもとてもシリアスな表現を鳴らした濃厚な味わいの1曲。
「出口は入り口だ」

「えー、今回のライブは、前回のツアーで演奏できなかった曲をできるだけ聴いてもらいたいと思って、まあ今もいろいろ聴いてもらってたんですが」
と語る吉井。
「どの曲ももちろんすごく思い入れがあるんですが、次の曲はYOSHII LOVINSONとして曲作りを始めて最初に取り掛かった曲で、それからいろいろ直しがあったりして、結局できるまでに3年かかった曲です」

BLOWN UP CHILDREN
アコギを手にした吉井が伸びやかなメロディを高らかに歌い上げると空間の色がまた塗り替えられていく。バンドのメンバーと視線を交わしながら楽しそうに演奏していた。
20 GO
さらに「at the BLACK HOLE」の1曲目であり核のような存在であるこのミディアムチューン。シリアスで不穏な世界観のなかで響き渡る「FAXを送信します・・」の機械音声。
欲望
熱いロックのグルーヴが鳴らされるとガラリとフロアの雰囲気が変化する。一気に会場はヒートアップし掲げられる腕。吉井のボーカルも爆発的に勢いを増しいく。
RAINBOW
さらに不思議な銀世界の幻想の中を疾走するアップチューンで熱を増す演奏。演奏のキメも多いこの曲の中でやはりドラムの気持ちよさが素晴らしかった。サビに入るところのロールが最高。吉井の歌唱は後半のスピードを増すパートでも演奏にがっちり絡んだ歌いっぷりでそれが逆に疾走感を生んでいた。圧倒的な迫力。
MUDDY WATER
イントロのギターリフが鳴り響けば大歓声とともに踊りだすフロア。すでに完全に吉井のライブアンセムとなったロックチューン。キレまくり吼えまくりの歌唱に会場の熱はさらに上昇。
そしてお決まりのこの部分。
「ど!れ!が!オ!レ!の!は!か!」
ピタリと止るステージ上のメンバー。吉井も無理な体勢で身動き一つしない。

フロアから歓声が沸き起こる。

笑いも。

そしてアンコールかのような手拍子も。


まだ動かないステージ。



やおら動く吉井。

ステージ袖の方を振り向いて
「・・え?これって本番なの?へえ。・・・ばっ!!!
それを合図に一気に動き出すステージ。湧き上がる会場。楽しくて仕方がない。歌いながら吉井も笑いを堪えていた。

「楽しいねー、名古屋」
と吉井のMC。一息つくフロア。
「まだまだ盛り上がっていきましょう」
というようなMCがあったような。

BLACK COCK'S HORSE
ダークなメッセージを乗せて疾走するロックチューン。「死ぬときはひとりだ」と言い放ち絶望を見つめながら壊れたように突き進むこの歌の主人公に、救いはあるのか。
「少女になり少年になり老人になり老婆になる
オレの歌はオレの歌君のものじゃないぜ」
FOR ME NOW
さらに何段階もギアを上げたかのように高速で疾走するロックチューン。前半で披露されたダークな曲の作曲者がこの開放感にたどり着くまでの過程はどれだけ過酷だったんだろう。
「『あっち向いてホイ』でまた負けた」

「次の曲は、雪が降ると似合うなと思ってたんだけど、今日は降らなかったんですね。まあ今年は雪が多いからこんなこと言うのよくないかもしれないんだけど・・・」

SWEET CANDY RAIN
美しいメロディーに飲まれた。静かに静かに聴き入る観客。
PHOENIX
熱く焦がすようなロックチューン。一気に爆発するフロア。
「来たみたい BRAND NEW DAY 何回でも生まれ変われる」
「元気出せ 元気出せ もう恐れること勿れ」
FINAL COUNTDOWN
歌いだしから一気に跳ね上がるフロア。最強のライブアンセムで会場が熱狂の渦と化していく。
吉井も
「チケット代無理してまで来てくれてありがと――う!!お金ないのにありがと――う!!」
とか、もの凄いはしゃぎっぷりで叫ぶ。分かってくれますか、その辺の事情まで(涙)。

「楽しいです、ほんとに。さっきは失礼なこと言ってごめんね」
と会場に語りかける。
「でもほんとにありがたいです。このご時世に3daysやらせてもらって全部売り切れなんてね」
「名古屋、今年またアルバム作ってすぐ来ます。秋に短髪になってまた来ますよ!」
との嬉しい宣言も飛び出した。前回のツアーも名古屋公演ではリラックスしてるように見えたけど、今回の方がさらに無駄な力が抜けてさらにパフォーマンスの集中力がアップしてるように感じる。

WHAT TIME
静かに穏やかに奇妙なくらい凪いだ世界観と、力強い決意を感じる歌詞が、吉井の新しい表現の結実を感じる「WHITE ROOM」の最後を飾る名曲。ここにきても抜群の集中力でこの繊細な世界を歌い上げる吉井がいた。
「たぶん たぶん 僕はもう 孤独な海になんか 来ないよ 来ないよ」
「ヘブン?ヘブン?ジョンレノンは 天国になどいないさ レコードの中だよ」
「走れ黙って 走れ染まって 足跡残して 夢に向かって 気休めだって いいじゃない心の赴くままで」
「そうだよ僕だってね この中にいる」

そしてアコギを手にする吉井。

BEAUTIFUL
「草原で揺れている小さな花」
本人のアコギ1本で歌いだされる穏やかで美しいメロディに一瞬で心が包まれた。寄り添うように鳴り始めるキーボードが優しい。これが新しい吉井和哉の世界だった。
「永遠の太陽に照らされた 君の横顔はBEAUTIFUL」
「人類の愛情は元気か?とか 結局人間は一人かとか わからないほうがBEAUTIFUL」
「髪を撫でて 手を握って 目を閉じて 小さな祈りを知って」
温かな感動に包まれて本編のステージはここで終了。

興奮冷めやらない会場のアンコールに答えて6人がステージに登場。
HIKARETA
一言も発さないままいきなり演奏スタート!楽しそうにシャウトする吉井。これだけのステージをこなしながらまだまだ全開。気持ちのいい盛り上がりに包まれる会場。
ここで軽くメンバー紹介。ネギ坊は名古屋で今日買ったばかりのベースで演奏していたらしい。
MY FOOLISH HEART
ツアータイトルにもなった穏やかにシリアスに温かく気高い決意を鳴らす最新曲。
このライブにはここ数年の吉井和哉の変遷が詰め込まれていた。その深い闇、そこに差し込んだ光、そして今、このやわらかな陽光のような淡い光の中で彼は大切な一歩を踏み出そうとしている過程なのだと感じた。
曲が終わり大きな拍手の渦に会場が包まれてこの日のライブは全て終了。


本人も言っていたように、前回のツアーで演奏できなかった曲たちをちゃんと届けるツアーだったんだと感じた。その曲たちは「at the BLACK HOLE」のヘビーでダークな曲が多く、初ツアーでやることを躊躇した、とインタビューで語っていた曲たちだった。実際この日のライブで聴いていてもその圧倒的な闇や混沌はとても息苦しく重かった。それでも披露せずにはいられない吉井和哉という人は、やはり業が深いというか、厄介な性分を持って生まれたスターなのだと思う。

そして本編ラストとアンコールで披露された『吉井和哉』名義の3曲。「HIKARETA」に関してはロックチューンでそんなに「WHITE ROOM」の雰囲気と変化がないようにも思ったけれど、残り2曲の世界はとても新鮮だったし、それまでのライブを吹き飛ばすくらい感動的だった。
その新たなステージに上がるまでのストーリーを魅せる意味でも「at the BLACK HOLE」の曲が必要だったんだろう。

吉井は奔放に乱暴に楽しんでいたけれどかなり落ち着いてリラックスしている印象もあった。前のツアーの手ごたえからか、すでに方法論が自分の中で整頓されていて楽しめる状況にあるんだろう。MCも言葉少なく気負いがない感じがした。

しかしその分、この楽しさは分かったから早く次が観たい、という思いを抱いてしまう部分もあった。

とにかく吉井和哉は耳障りのいい渋くて退屈なロックで楽しくライブする気なんて毛頭ない、という様子で、真摯に次のサウンドを手に入れようと着実に進んでいるようで、それが嬉しかった。

吉井曰く次のツアーは秋。ということはアルバムは夏終わりだろうか。もの凄く期待しつつ、ジリジリしながら待ってます。
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by kngordinaries | 2006-01-28 22:54 | ライブ


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