奥田民生 'Cheap Trip' 愛知芸術劇場
開場前のグッズ販売でかなり頑張ってしまったので財布が軽い。ホールなので特に急ぐこともなく会場入り。なんだかちょっと高級なつくりで構造が入り組んでてわかりにくい。

3階席の最後方だったので相当観づらくて遠いかと思っていたけれど、着いてみると上に異様に高い分ステージへの距離はそれほどでもなかった。OTを見下ろすというのもおもしろいような。

奥田民生のライブはここのところのフェス・イベントも出来るだけ観に行っているので久しぶりな感はなかったけれど、ワンマンとしては9ヶ月ぶり、前回はバンドがMTR&Yに変わっての初ツアーの前半戦だった。前回はまだまだ出来たてのバンドだった。今回はどんなライブを見せてくれるんだろう、と期待が高まる。

注意事項のアナウンスが流れ、しばらくして客電が消え、ライブが始まった。


※この先、ツアー中の公演についてネタバレがあります。ご注意ください!



MTR&Yの4人がステージに登場すると大歓声が湧き起こる。

近未来
イントロが鳴った瞬間に拍手が起こる。きらびやかな白い照明がステージを輝かせる。ザックリと骨太なリズム隊が巻き起こす渋いロックサウンドがかっこよすぎる。ゆったりとしたテンポで思いっきりドライブする演奏に一気に会場全体が高揚していく。
ステージはそれぞれのポジションの足元にカーペットが敷かれ、頭上にはシャンデリア。Eツアーのセットと雰囲気が近いシックかつ華やかな雰囲気。なぜか斉藤有太の前には黒革のソファが。
まんをじして
さらに獰猛なリズムに乗って荒くれるサウンド。熱くやんちゃなのにしっかりと安定したグルーヴが気持ちいい。OTの歌唱も鋭く太い。
彼が泣く
深い悲しみや不穏な空気をロックサウンドに見事に昇華したOTの才気爆発ロックチューン。まんをじしてから流れるようにいきなり鳴らされるイントロに鳥肌が立った。ここのところGOZでも演奏されていなかったこの曲がここで聴けて嬉しかった。MTR&Yにはこういう曲がよく似合う。

ここでMC。
「このツアーも1月から始まりまして、結構やってきました。ちょうどいい感じになってきてまして、そろそろポカをやるころだと思います」
といきなり本音トーク。
「今回はアルバムが出たわけでもないのにツアーをやってしまってます。これまでもそういうことはあったんですが、その場合ツアーのあとには出るようになってたんですが、今回はそれもないです(笑)。もうどうでもよくなってきました」
とさらにぶっちゃけたトークを。さらにポツポツとつぶやくように話して
「まだ3曲しかやってないのに話が長すぎるね。ここはこんな喋るとこじゃないのに」
そして
「酔ってるわけじゃないんですよ」
と誰に言うでもない言い訳を言いつつペットボトルを手にする。
「これはスポーツドリンクですから」

荒野を行く
ドラムのみの演奏がしばらく続き、少しづつ他の楽器が絡んでいく。慎重に力強く突き進む意思を歌ったブルージーなロックチューン。ほとんどの既存曲をリアレンジしているけれど、この曲はわりと原曲どおりで、その分ツインギターでないことで少し物足りないところもあった。
曲の後奏で有太の熱くグルーヴィーなソロが炸裂。曲が終わりOTが改めて紹介
「斉藤有太!・・・ちょっと今日の衣装ラメってるね。それGLAYのときのなんじゃないの?ヒムロックのときのなんじゃないの?」
「ちうよ!」
とかなり嫌そうなイントネーションで否定する斉藤有太。
たばこのみ
ソロ初期のメロディアスで幻想的なミディアムチューン。不思議なトリップ感に包まれる。ゆったりとしかし心地よくジャストに刻まれるビートがサイケデリックな快感を生んでいく。OTの歌声のなんともいえない魅力が最大限に生かされた名曲。
「強い僕を育てよう 強い体を育てよう 強い心を育てよう たばこを愛してる」
プールにて
たばこのみに続いて流れるように続く演奏に、聞き覚えがあるようなないような気分でいるうちに曲が次第に輪郭を表していく。歌いだしでやっと気付いた。PUFFYに提供した穏やかで不思議な浮遊感に満ちたポップチューン。OTの歌声で歌われると楽曲の旨味がさらに奥深くまで引き出されるようで、はっとするほど美しい幻想空間に引き込まれてしまった。「ト ト トリトン」がOTの声で聞ける日が来るとは!
ロボッチ
さらにアレンジでがらりと印象を変えた久々のミディアムチューン。溜めのあるリズムが最高に気持ちよく響いていた。

「私語が少ないですね。曲が終わったらもっと隣の人とかと話していいんですよ」
曲が終わってしばらくのあいだ静まりかえる会場に向けてOT。いや、あなたの話が聞きたいわけで。
「もっと今の曲は良かったとか、今の曲は1箇所間違えてたけど良かったねとか、隣の人と話してください。隣、知らない人でもいいんで(笑)。そのときは良かったですよね、ってね。ですね、とか敬語になる」
ここでも客席からの言葉に答えたりしながら「長いよね」と言いつつよく喋るOT。
「戌年とか言ってますけど、今年は僕にとってはなんでもない年なんで。来年は20周年だそうですが。(会場拍手)去年10周年とか言っていて、なんでなのか(笑)。商売とはこういうものか、という感じがしますが」
等々いろいろと。とにかく楽しそうだ。湊は喫煙中。

野ばら
メロディアスなミディアムチューン。イントロから歓声が上がる。OTラブソングのなかでも朴訥としたやわらかな愛情が感動的な1曲。
The STANDARD
民生のギターから静かに始まるイントロから胸が震えた。まっすぐに伸びやかに響く歌声に会場が包まれる。バンドのメリハリの効いたサウンドが曲の感情をよりダイナミックに響かせ、大きなうねりを起こしているかのようだった。こういった緩やかな曲もMTR&Yらしさもありつつ曲の魅力も損なわないところが素晴らしい。

「やっぱり私語が少ないですね」
となんだか分からない指摘をまた繰り返すOT。
「どんどん私語して。私語して」
と小原さんも言う。
「いろいろやりたいことをやってかまわないんですよ」
との民生の言葉に
「携帯のメール見るとか」
と返す小原礼。
「いや、それはダメですよ!メールは見ちゃいかん」
とここはきっちりまじめに諭す民生。
「なんのためにアナウンスしてるんですか!それはダメダメ。ってあなたカウントダウンのとき電話してましたよね」
「うん、ちょっと家族に」
と衝撃の事実を明かす小原礼。会場爆笑。
「最初にも言いましたが、アルバムも出してないのにツアーをやっているわけですが、曲がないわけじゃない!(←いきなり力強く) 新曲をやります。(客席拍手) しかも2曲。(客席拍手) ちゃんとやることはやってると言うところをですね、観ていただこうかと。2曲だけ?と言われるかもしれませんが、2曲も!という言い方もあります」

新曲1
OTのロックンロールなギターリフを中心に疾走するアップテンポのロックチューン。「comp」の流れを引き継いだような怒涛のロックンロールに体が踊りだす。さらにラウドにさらに攻撃的なサウンドにしびれた。
新曲2
穏やかなミディアムチューンながらこれもギターリフが気持ちいい。OTのギタリストとしてのモチベーションはどんどん高まっている様子。断片的に聞き取れた歌詞とおもしろいメロディの動きに耳を奪われた。

ここでOT以外のメンバーがステージを去っていく。最後に残った斉藤有太が
「奥田民生!」
と言って立ち去る。
「どうも奥田民生です!」
とアコギを構えて挨拶するOT。ギターを適当に鳴らしながらもなかなか曲を始めようとしない。
「こんな感じでゆっくりするのもいいんじゃない?」
とか言ってステージ中央を散歩するOT。自由すぎるぞ。
空に舞い上がれ
ずっと続いていた演奏がいつの間にかこの曲のイントロと化していた。突き抜けるように広がっていくメロディがのびのびと歌い上げられる光景に聞き惚れるしかない。
「3曲も新曲をやってしまいました。嘘です。いい曲ですね」
ここでエレキギターにチェンジして
トリッパー
ステージ上にひとりのままで歌いだされる。ギターと歌だけでなぜここまで強大な引力が生まれるんだろう。途中からバンドサウンドが重なってくるところは何度聴いてもぞくりとするほどかっこいい。ずっとステージでロックを鳴らし続ける奥田民生がまっすぐに人生というテーマに向き合ったシリアスで強靭な名曲。
「もうあちこちだめんなった さびかけのボディーだ だけどそのエンジンは まわりつづけていた」
「もう荷物はカラになった すてたりあげたりだ 身も心も軽くなって スピードを上げるんだ」
「一本の光 まっすぐで 一本の光」
最後のニュース
さらにもう定番となった、もしかしたらご本家より多く演奏してるんじゃないか、と思ってしまうこの井上陽水の大名曲。爆発するバンドサウンドと熱のこもった歌唱が、曲の深遠にして簡潔なメッセージを大きな塊のままぶつけてくる。

ここでMC。
「新曲もやりましたけど、アルバムもまあそのうちには作ります。(会場拍手)今2月ですよね。ん?明日からか。あ?明後日からか。まだ1月?じゃあ絶対出るよ!(←いきなり強気) まだあと11ヶ月もあるんだよ?出る出る。出ます。いや、出る・・よ?くらいの微妙なニュアンスにしとかないとまずいか」
と大人な計算を働かせるOT。
「またアルバムが出たらまた名古屋にも来ますので、そのときはまたよろしく」
と言ったあとくらいの客席からの声援がバリバリ名古屋弁だったらしく、ここから最近乗った新幹線で近くの席でうるさかった名古屋弁のおっさん集団にMTR&Yで大爆笑してたという話に流れていき、OT&斉藤有太で大盛り上がり。
この辺はおもしろさを文章にしにくいし、とても長かったので割愛させていただきます。あとどこかのタイミングで小原さんとサディスティック・ミカ・バンド再結成話でも長く盛り上がっていた。木村カエラの顔が小さすぎるという話とステージにあるビールがミカバンドの曲を使うビールじゃないという話でした。
「もう曲いくよ!いつまでダラダラやってんだ」
とOT。

そして民生と小原さんがドラムの方に集り3人が向かい合って息を合わせ一気にズガンズガンズガンとラウドな音を響かせ一瞬の静寂のあと鳴り響くあのイントロ。
快楽ギター
ダンサブルで攻撃的なロックチューンに一気に歓喜が爆発するフロア。疾走するMTR&Y。
御免ライダー
さらにノリノリのダンスチューンで飛ばしていく。まったりMCが嘘のようなこの開放感とロックの快楽に酔ってしまう。
プライマル
イントロが響き渡ると怒号のような歓声が起こり、ホールの熱気は最高潮に。ゴリっとしたロックでありつつソフィスティケイトされたポップさもあって、この快感は奥田民生にしか出せない神秘を鳴らしている。素晴らしい演奏だった。
さすらい
大熱狂のフロアを優しく力強く包むようなライブアンセムが鳴る。「さすらおう」という言葉を緩やかなサビのメロで歌おうと考えるミュージシャンが他にいるだろうか。特に奇抜でも特異でもないけれど、普通誰も思いつかない音楽を鳴らし続ける奥田民生は正しくロックだ。
曲が終わってしばらくしても拍手が鳴り止まない。それを突き破るようにシリアスなギターが鳴る。
ドースル?
「不満もなんもない毎日だ 愉快でのんきな毎日だ 幸せとはこの事だ 僕は笑顔 でも知らねえ」
棘のある響きで歌い放つアルバム「E」のラストにおさめられたOTには珍しく強いメッセージ性を持つ名曲。ストレートな問いかけがいつも胸に突き刺さる。
「君だったらドースル? 気になったらドースル?」
大きな拍手で会場が満ち満ちてライブ本編は終了。

熱い熱いアンコールに答えてMTR&Yが再びステージへ。
「ありがとうございます。・・・感謝の気持ちをこめて今からマシマロという大ヒット曲をやります」
とOT。観客笑。そのあと小さい声で「スマッシュヒットくらいか」と言っていたような。
おもむろにじゃんけんを始める4人。負けたのは小原礼。ということでなのかなんなのかベースから演奏はスタート
マシマロ
ジャジーなアレンジがおもしろい大ヒット曲が炸裂。かなりルーズなビートなのにとても心地いい。アンコールという状況にふさわしい優しい盛り上がり。
「じゃあもう1曲」
すばらしい日々
きらめくようなギターのフレーズで曲がスタートすると大きな拍手が巻き起こった。メロディーも歌詞も歌も全てが奥田民生でしかない最高にオリジナルで普遍的な名曲に、大きな感動に包まれる会場。
曲が終わるとゆっくりと舞台右端にあつまるMTR&Y。揃って深々とおじぎをし、今度は左端へゆっくりと移動。そちらでもおじぎしステージを去る4人。そのあいだずっと熱く大きな拍手が鳴り響いていた。

さらなるアンコールの熱い拍手に答えてMTR&Yが3度ステージへ。
「アンコールありがとうございます」
イージュー★ライダー
ここにきて永遠不朽の名曲が鳴る。これでこの最高の空間が終わってしまう名残惜しさに包まれながら、会場全体で大合唱。
最後はまた延々と続く大拍手に包まれながら4人でキーボード前のソファでくつろぐ礼さんが両手を挙げて右に左に揺らす動きをしているのを会場全体で真似る。何度もこちらに手をふりつつ、4人で笑いあってゆっくりとMTR&Yはステージをあとにした。

言葉がないくらいに最高だった。選曲もよかったけれどそれ以前にバンドの音がたまらなくかっこよかった。4人の中で自在にノリがコントロールできていて、曲間がスムースに繋がっていたり、無理なく演奏のキメのポイントが用意されていたり、刺激的で爽快な音空間が出来上がっていた。過去の曲たちがリアレンジされて少し雰囲気の違う新鮮な印象もあって楽しかった。

MCもとてもリラックスしていて余裕というか油断してるくらいの感じだったけれど、演奏は一切ルーズさがなくソリッドで緊張感があって、そのメリハリが効きまくっていて素晴らしかった。

新旧織り交ぜたセットも最高だった。「近未来」「彼が泣く」や「荒野を行く」といったGOLDBLENDの超名曲から「たばこのみ」「すばらしい日々」といった懐かしいポップな曲たち。新曲も2曲もありPUFFYのカバーというサプライズもありそして本編後半の怒涛のライブアンセム連発、ともう完璧すぎる内容。もちろん演奏の充実があってのこの満足感。


というところで気になるのはOTの今後だ。
この流れでMTR&YでがっちりとGOZで言えば「股旅」や「GOLDBLEND」のようなアルバム作りに行くかと思いきや、またNYバンドともセッションしたとかいう未確認情報もあるし。この間のWhat's In誌のスティーブ・ジョーダンとの対談からもあちらとのつながりは強いようでもあるし。
新曲が良かっただけに、気になる。来年で20周年だというのに次の作品が各方面からこれだけ期待される人も珍しいけど、いつでもハッとするような創造性と音楽的歓びに満ちた瑞々しい音楽を飽きもせずに作り続けるOTにはまだまだ期待せずにはいられない。
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by kngordinaries | 2006-01-31 21:49 | ライブ


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