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STANⅡ STAN
破格である。

まずそれだけは断言できる。
だけれども規格外ではない。

彼らの音は、彼らの表現は、相当に新鮮に、かなりの棘をもってこちらに突き刺さってくるけれど、実はとても真っ当なロックの表現だ。

例えばミッシェル・ガン・エレファントのサウンドは決して幾多のロックバンドの中で突出した音圧や偏った音像で作られてはいないけれど、とても耳うるさく聴こえるだろう。それは内にある嫌な部分をざくざくと刺されるような高性能な表現に耳をふさぎたくなるからだ。

STANのサウンドもとてもオーソドックスにロックだ。全くもって分かりやすいロックのクリシェを使い、演奏している人間そのものをゴロンと出した素直でまっすぐな表現だ。
だからそれはとても耳障りだし、やかましく感じられるし、またそれはそのストレートさゆえにとても強靭でとても健康的なのだ。

STANにとって2枚目のアルバムになる今作で、彼らは前作における攻撃性や痛烈な批評性はそのままに、俯瞰的な視点から自分たちの表現を世界に歩み寄らせる作業をしはじめたと思う。
例えばいつもながらのビッグマウスを炸裂させたあとに「なんちゃって 言ってみただけだよ boy いいかげんジョークに気づけよ girl(STAN'S HOUSE)」と説明する。
ロックの深層を見せ、ビッグマウスで嘯きながら挑発し、ストンと落とす。この落とす作業は実はSTANムラで盛り上がるためには必要ない。そこにいるみんなはジョークだと認識しているから。そこに説明を加えるのはムラの外を見据えているからだと思う。
ただ、その説明までも高性能なファンクネスを補強する表現に昇華しているわけだけど。

そしてその説明を1曲にしてしまったとんでもない曲が「J.D.」だ。すかすかでグルーヴィーなミディアムチューンとしても最高なこの曲で歌われるのは歌詞が浮かばなくて苦悩するKYGの姿。そしてまわりに八つ当たりする自分をマジサブイと鼻で笑う。
もの凄く素な話し言葉で歌われるこの世界的トップレベルに思えるほどの本音トークが、美しいメロディに完全にはまり込んで、しかもこんなにも鋭い批評性で迫ってくると、もう笑うしかない。

まあそんな表層的な部分での変化はありつつ、1枚目に引き続き流麗で心の琴線に優しく触れるようなメロディはさらに好調に、もの凄い深みから一気に飛翔したりする変幻自在で文句なく気持ちのいいグルーヴはさらに派手に、速度を上げている。
その基本性能において本当に破格としか言いようがないSTAN君は健在。

奥田民生がインタビューでよく言っている「メロディーというより言葉を転がすように歌う」という極意を掴んだような、歌詞と歌い方とメロと歌い手のキャラ、という全ての要素が分かちがたく結びついたKYG節もあれば、完全にジェンダーフリー、エバーグリーンな輝きを持つ口ずさみたくなるメロディもある。

STANはとんでもない。
もの凄く真っ当なだけに他との格の違いが歴然としてしまいすぎて、逆に悲しいくらいだ。本人たちも「悲しい男」で歌っているけども。

この2枚目のアルバムでそれが確信できた。それと同時に才能ありすぎな人の常で、自分達が満足できる世界を掘り下げたり、閉じたところで楽しんでしまうのでは、という心配も生まれそうなところなのだけど、もうすでにこのアルバムでSTANくんは思いっきり世界に打って出ていた。
そんな状況判断も含め、クレバーすぎてちょっと怖いくらいだ。

とにかくひたすら聴き続けたい大好きな作品。文句なし。



大体ウソばっかって バレバレ あーもー全部うっとーしー
本来オレはこんなんじゃない 勝手に脳が言ってるの
残念ながら才能がないYOU 嫉妬してんの知ってんし
外人だってマジ大したことねー 言っとくけどさ We are STAN !!
                                /STAN'S HOUSE


心 揺さぶられる グルーヴ
体 揺さぶられる グルーヴ
                                /KYGのイチゴジャム



曲がり角を曲がり切れずに落ちてゆく
そーゆーのって最高だろ?

やがて君もたどりつけるだろう そうだといいだろう なあ I don't care anymore !!
                                /Dolphine Dance


太陽さえ壊れそうな予感がするよ
さあ さあ 逃げ出そうよ うん でもさあ どこに?

恐いよ 恐いよ
                                /JAPANISTAN


さっきと街の色が違う
僕と君の視力が落ちる
何もかもがボヤけて見えてくる
だけど かまわない
                                /Love you

by kngordinaries | 2006-03-09 01:49 | 音楽


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