KREVA 愛・自分博~国民的行事~ Zepp Nagoya
ちょうど1年位前にこけら落としされたばかりのZepp Nagoya。しかし、なんだかんだでもうかなりの回数お世話になっていて、もうずっと前からあるような気さえする。

先週末に映画を観に隣の建物に来たときにはWatがライブしてたっけ、とあまり関係ないことを思いだしながら、約2ヶ月ぶりのライブに胸高鳴らせつつ入場。

スペースの広々とした物販&ロッカースペースはとても快適で、これだけの大人数を収容するにしてはいままでひどい混雑を味わったことがない。
今回は初めてのヒップホップ系のワンマンライブということで、ちょっと新鮮な感じでライブ開始を待った。

※このさき、この日が初日のライブツアーについてネタバレが、ものっそいあります。ご注意ください!






フロアに入るとまず目に飛び込んでくるのはステージ左右にある大きな緑のハートのバルーンのようなもの。その上にはパイプで組み上げられているステージの端から端まで横にボードのようなものが設置されている。ど真ん中にはもちろんターンテーブル。
開演待ちのあいだは特に音楽も流れず、サウンドチェックもすでに完璧なのか、全くない。

と、開演時間を10分ほど過ぎたころ、ガタイのいい無表情の黒スーツの男2人がステージ両サイドに現れ、DJらしき2人がターンテーブルにつく。場内騒然。
ここでデパートなどでありがちなアナウンスが入る。ちょっと吐息まじりでイントネーションのおかしなあれである。
「ただいまより~、愛・自分博を~、開催いたしま~す」
そしていかにも万博のコンパニオンのような格好の女性2人がテープをステージ中央に張る。
「開催に先立ちまして~、英検2級~、漢字検定3級~(←この辺は、記憶曖昧)、男女関係黒帯の~、主催KREVAさまより~、テープカットを行います~」
会場が割れんばかりの歓声と笑いに包まれる中、「国民的行事」PVの白KREVAのような正装に白手袋のKREVAがこちらの歓声に答えながら颯爽と登場!

そして滞りなくテープカットが終了し、
「愛・自分博開催ぃぃぃいい!」
との宣言から
H.A.P.P.Y
きらきらと輝くような気持ちのいいトラックが柔らかくフロアを揺らし、ジャストに音に乗りながらくっきりはっきりと言葉を届けるKREVAのリリックが炸裂。一気に会場を乗せていく。
ステージセットの頭上に配されたボードは電光掲示板のようにそのときどきの歌詞を表示していた。
「H.A.P.P.Y!」の大合唱。
「悩みがないことはない 欲に囚われた大人たち なかなか降りてこない言葉たち etc...されど回る俺のベロは 文句言うよりかっけぇビート 増やしてかき消すだっせぇシット 人生賭けて本気で勝負できてんだから幸福」
国民的行事
そして一気にアゲていく最高ポップチューン。ど頭のサビから会場全体でシンガロング。分かりやすく、シンプルで、ポジティブで、健全で、強靭なメッセージを、ださくもリズミックな言葉でいきおいよくぶつけてくるこの曲は、とてつもなくポップ。カラリと爽やかで歌い手の言葉にどこまでも嘘がないこんな曲が、どれだけ心強いか。
歌詞の細かなニュアンスやそこに込められた思いの丈を、身振り手振りで丁寧に伝えるKREVA。言葉数が多くても中身が薄い人も多い中で、この人は特濃。

ここでMC。
ぶっ通しで続いているバキバキのビートを作っているステージ中央の2人、MPC4000を操る熊井吾郎とターンテーブルで皿をまわすDJ SHUHOを紹介。
「じゃあ、この最高の音にのせて、特に夢を持つ男の子に向けて歌うぜ」
all day,all night
ガツンガツンと響く、骨だけのビートに、熱のこもったKREVAのフロウが乗っかっていく。KREVAがいま、ポップスシーンで大きな現象を起こせているのは、最大公約数に響くメッセージを本質的に理解しているからだ。というかそう生きているからなんだと思った。
「進め 悩むよりまずとにかく 行く手はばむ目の前の壁を壊せ 自分の両手で崩し続ける 道が開ける 進め」
希望に溢れたバース1のみ(バース2はとても辛辣で「生半可な覚悟の甘ちゃんじゃ 大ヤケドすんぞ やめろ」と叱咤する)を一気に歌いきると熱い歓声が湧き起こる。
「・・・この今の感じ。熊井のMPC、SHUHOのターンテーブル、そして会場の感じ。これを言葉にするとしたら・・・いいと思う
いいと思う
なんとなくで進んでしまう日常を嘆かず、それでもこう考えればまだまだ進めるぜと優しく穏やかなビートに乗せて歌うミディアムチューン。「いいと思う」のコーラスは客席全体で。
「次の曲はサビだけこんなフリ(片手を高く上げ左右に降る)でお願い。じゃあ歌詞をじっくり聴いてください」
I was a fool
「昔はバカだった!今クレバー!」で始まるこの曲は、KREVAのストーリーテラーとしての才能が爆裂したまるで落語のようなおかしみを持つ大名曲。よく聴けばありがちな話、でもそれをラップにしてこれだけおもしろく語れる人がKREVA以外にいるのかということ。
「Oh No! 少々払いすぎたぜ たっかい人生の授業料」

「さて、次のパビリオンは、最初のゲストが登場します。そのゲストとやる曲のヒントをMPC4000から流すので分かった人はゲストの名前を叫んだり手上げたりしてください」
といって三味線の音が鳴らされると大きな歓声が上がる。
もちろんSONOMIの登場でこの曲。
island life
SONOMIの伸びやかで美しい歌声が一気に会場の雰囲気を刷新する。それに合わせて少しのニュアンスの変化でKREVAのフロウも印象を変える。
涙止まれよ
そしてなだれ込むようにこの応援ソングへ。
あくまでカジュアルに、感傷的にならず、つまりもっとも真摯な態度で、スピーカーの前やステージを見つめるあなたを励まそうとするKREVAの応援ソングは、今現在、もっともぬるくなくてリアルな応援ソングたりえていると思う。
「(サビの合唱に対して)いいね。みんなありがとう。次の曲もきっと歌えると思うんで声を聴かせてくれ」
ひとりじゃないのよ
「それじゃ始めますかKREVAとSONOMI」でいきなり歌いだされると大歓声が巻き起こり、ビートが入ってくるとフロアは波打つように踊りだす。
KREVAというとどうしても2004年のROCK IN JAPANのステージが強烈に印象的なわけだけど、その対30000人を前にした彼にとって人生初のソロライブで、この曲をやる前にサビを一度披露し、
「簡単で最高に歌いやすいメロディなんでよかったら一緒に歌ってください。俺はこのメロディが全国にリリースされて誰もが口ずさむことになるともう確信してます。毎日俺もついつい口ずさんでるし」
と言っていたことを思い出した。この時点ではまだインディーズで枚数限定シングル1枚しかリリースしていないソロのラッパーが言うセリフではないわけだけど、結局そのとおりになった。
自分のバースを歌い終えるとステージを去るKREVA。回しっぱなしのベロ休めだろう。
雨天
続いての曲もSONOMIひとりで披露。力強く優しい歌声がフロアを魅了する。

SONOMIがステージを去り、しばらくトラックが流れ続けるなか、昔の漫才師さながらの緑のラメラメジャケットを颯爽と着こなしKREVA再び登場!しかもうっすら流れるこのトラックは?
「ここからはカバー曲パビリオン」
POP STAR
昨年末のCOUNTDOWN JAPANで大好評だったというこの平井堅「POP STAR」に乗ってラップするスペシャルなカバーで会場はアゲアゲ。あのPVを意識したアフロやぬいぐるみも登場。
「次の曲は、またカバーなんだけどこのあとのパビリオンのヒントにもなってます」
今夜はブギー・バック
なんだか聴いたことのあるトラックだと思ったら!!まさかまさかのこの大ヒットチューンのカバー。原曲にほぼ忠実に(一部リリックを変えていた)、このスムースなヒップホップチューンを歌い上げるKREVA。最高だった。
「この『今夜はブギーバック』という曲は1996年、つまり今からちょうど10年前の曲です。で、20年前は86年、を飛ばして76年は俺が生まれた年ぃぃぃぃいいい!つまりある意味愛・自分博は30周年んんんん!そして次のゲストも76年生まれです」
といって呼び出されたゲストはCUEZERO。
WAR WAR ZONE
76年のトラックだというファンクっぽいレコードにのって歌われたのはこのアップチューン。
DAN DA DAN
さらにこの曲で一気に会場はヒートアップしていく。会場全体でクラップクラップ。
トリートメント
さらにこのミディアムチューンはDABOを除いた2人バージョンで披露。
「この曲は別に俺らが育った江戸川が最高!って曲じゃなくて、みんなそれぞれの故郷を見つめなおして欲しいって曲です」
といってさらにゲストのWADAが登場しこの曲。
江戸川ロックオン
もの凄くパーソナルな思い出を歌ったこの曲は、具体的すぎて共感できる細部はないけれど、「ガキの頃」のあの風景というものをそれぞれに思い出させる叙情ソング。

ゲストが続々登場したちょっとしたパーティーゾーンが終わると、ほぼ完全に暗転するステージ。何も見えない。しばらく静かにシンプルなトラックだけ流れ続ける。
「暗くてなんもみえないだろうけど、今、凄い勢いでチン○触ってます」
会場失笑。
「凄い勢いだぜ。見えないくらい。ちょっと触ってみる? 触ってみたいだろ? 俺の。・・・大丈夫だって。全然大丈夫だって。安心しろよ。・・・安心しろよ」
だんだんニュアンスが変わっていくKREVAの声。そしてトラックが鳴り出し、暗闇の中この曲が歌いだされる。
暗闇のナビゲイラ
「さぁさ 両の手を取り合おう 裸同然で踊りだそう 俺はコレで十分 でもキミ足りなそう OK なら音に魔法」
と歌われると本当に魔法がかったように壮大で重厚なトラックに変貌する。幾筋かのライトにステージ後方から照らされるのみで浮かび上がるKREVAの姿が神々しいもののように見える。
「たとえ見えなくても感じてる この先俺が道案内 ぎこちない一歩でもいい 進めるならば気になんない」
「日に音 門に音 暗闇のナビゲイラ」
曲が終わり湧き起こる拍手。
It's for you
圧巻のパフォーマンスにため息をつく暇もなくさらに鳴らされたのはこのロマンチックなラブソング。一気に波打ちだすフロア。はっきりとその匂いまで感じられそうなリアルな感情を歌うスムースで平熱でだからこそ胸に迫る1曲。この手のトラックは誰も太刀打ちできないハイレベル。
スタート
さらにここでこの大ヒットチューン。会場全体でシンガロング。涙する人多数。
何も言うことのない、何もいえなくなるような大名曲。吐き出すように、想いを込めて全力でメロディを歌っていた。最後はトラックを止めて「スタート」の一言を会場全体で。
イッサイガッサイ
「これがラストチューン!」とシャウトして始まると、会場の熱気はさらに爆発して掲げられる腕。トラックからリリックから全てがポップで優しくてリアルなミディアムチューン。
大きな盛り上がりをみせて本編はここで終了。

熱いアンコールに答えてKREVAが緑のジャージに着替えて登場!
「くつろいでジャージに着替えたんだけど、アンコールの声に呼ばれてまた出てきちゃいました。じゃあアンコール1曲目は俺のメジャーデビュー曲」
音色
そして放たれる最高のアンセム。この曲が今のKREVAの音楽の中心点であることは間違いない。メッセージもサウンドも高純度で完成しつつあくまで溢れるほどポップなミディアムチューン。
さらに今夜のゲスト全員集合でくレーベルコンピから
ドモアリガト
とても分かりやすく観客への感謝を表しゲストはステージをあとに。
My Life
アンコールラストチューンは、アルバム「愛・自分博」でもラストを飾るタイトルどおりの人生賛歌。
「なんでそんなに過去見てる 俺は今のがよっぽど楽しいぜ 必要ねぇタイムマシン」
「確実にリニューアル 続け開催中 愛・自分博 無理をして取り繕うはずない 必要ならば縮小拡大 文句ない今 常に追い求めロングランになる」
「ほら思い出話ばかりじゃもったいないよ」
温かいメッセージに包まれてここで愛・自分博は全て終了。


文句なく完璧なステージング。素晴らしいライブだった。
KREVAの楽曲は基本的にトラックがとても高性能だし、ラップのスキルももの凄いのだけど、今回はその楽曲に込められたメッセージの威力に圧倒された。

一般的な「応援ソング」とか「ラブソング」とか「メッセージソング」とか、そういうカテゴリに属する曲というのはシビアだったりナイーブだったりモラトリアムだったりするロックを聴いている身からすると9割はダサく感じられる。
ただ、KREVAの曲はそうじゃない。それはあくまでカジュアルな物言いをするからかもしれないし、本人のキャラが持つ説得力かもしれないし、ずるさも弱さも自覚しつつ少しもそこに依存しない健全さによるものかもしれない。
とにかくKREVAが今、唯一と言っていいくらいポジティブなメッセージソングやロマンチックなラブソングや一生懸命なメッセージソングをエッジの効いた表現として多くの人に受け入れられる存在であることは間違いないと感じた。

あとこれは個人的にSTANの音楽の魅力について考えていて思っていたキーワードだけれど「健全な表現」というものを感じられる存在としてKREVAは数少ないひとりだ。
どこかの音楽ジャンルの村に色目を使わず、リスナーに受け入れられるために下手に出ず、弱さや苦悩や感傷に浸ること、つまり一番手っ取り早くポップに人に受け入れられる表現にNOを突きつけ、ほんとうに言いたいことをまんま差し出す、そんな表現。

このままどこまで行けるのか、この先どんな価値観を提示してくれるのか、ますます楽しみになった。



とりあえず誰が行こうと楽しめるライブランキングがあれば相当上位なんじゃないかと。
初めて聴いてもリリックがちゃんと通じるのはやっぱり凄い。
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by kngordinaries | 2006-03-21 21:55 | ライブ


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