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新しいアナログフィッシュ
キラキラ キラキラ

4月7日深夜1時から、FM AICHIにてアナログフィッシュの「ROCKS」という番組が始まった。初回のDJは斉藤州一郎ただ一人。今後も基本は彼がDJし、メンバーはゲストで来るというかたちのようだ。
番組内で次々に流される色んな時代、色んなジャンルのロックナンバーの曲が終わると斉藤は「きれい!」とか「完璧!」とか「なごむ!」とか、一言で完結にその曲に対する気持ちを表していた。

そしてこの日、この番組内で世界初オンエアとなる、アルバム「KISS」以来8ヶ月ぶりのアナログフィッシュのニューシングル「Living in the City」の曲終わりの一言は、

「キラキラ キラキラ」

だった。


昨年9月リリースの「KISS」というアルバムとそのツアーで、ほんの少しではあるけれど確実にその存在を広げつつある状況の中でのこのバンドの次の一手に、僕は期待せずにはいられずにいた。
そしてツアーで聴くことができたいくつかの新曲のおぼろげな記憶とともに、新曲をなんとなく想像したりしていた。演奏の魅力を突き詰めたダンスナンバー。疾走感溢れるロックチューン。
その想像は見事に裏切られた。

それは斉藤の言うとおりと言ってもいい輝くようなポップソングだった。
優しく穏やかなサウンドに、流麗で心が弾むようなメロディ、もちろん下岡らしい数珠繋ぎな節回しでもあり、そこには今まで以上に突き抜けたポップが宿っている。
これはとても「歌」だ。間口を広げ、多くの人に口ずさまれたいと思っているメロディとアレンジだ。それがこのバンドの作品として、出てきたことにとても驚いた。

歌われている内容は、ざっくり言って下岡の最近の作風と地続きのものだ。
天気のいい並木道を「街」へ向かう2人、という物語を軽やかなメロディにのせて語り、人が生きるための人工的な機能の全体性をもった存在として「街」を描いている。
希望に満ち溢れるようなきらめくメロディにのって歌われる世界は、柔らかい語り口に似合わずシビアでリアルで、だからとてもたくましくやさしい。

なんでも揃っている街には大切なものなんてなにもない、そこで僕らは暮らし続ける、そんなシンプルな宣言。

この曲に強い主張はない。もしかしたらことさらに激しい感情もこめられていないかもしれない。
でも、そんな一時の熱情のようなものがなかろうと、この曲が強いのは、「街」という果てしなく広がる横軸と、そこに生きる「僕ら」の生活に流れる時間という縦軸を、できるだけその全体像をもらさずに描ききろうという大きな思想のもとに作られているからだと思う。
それは「KISS」収録の「Town」という曲でも表現されていたことではあるけれど、下岡にとってその思想の全てはまだまだ表現し足りないんだろうし、当然どこまでいっても足りるものでもないんだと思う。

とにかくこのポップさ、やわらかさには驚いた。心の奥を鷲掴みにされた。また新しいフェーズにいつの間にかバンドが進んでいることがよく分かった。
シンプルで歌に寄り添うアレンジや、開かれたメロディ、温かい温度感は、去年のくるりのモードとなんとなく似た印象も受ける。「birthday」や「Baby,I Love You」のようなそんなフラットな視点からの温かさ。


さあこの新作を皮切りにバンドは新たな作品に向けて速度を上げていくだろう。

まずは春のワンマンライブが聴き手を待っている。
止ることなく進化を続けるこのバンドのここからがほんとに楽しみでしょうがない。


がむしゃらに、ひたすらに、もっともっと自由に、泳げ。


アナログフィッシュ / Living in the City | Excite エキサイトミュージックにトラックバックさせていただきました。
by kngordinaries | 2006-04-08 23:56 | 音楽


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