アナログフィッシュ ハルコ・スプリング・コレクション トミノコウジ・クランク・グルーヴ 京都磔磔
名古屋を出たときには暖かすぎるくらいの気候だったのが、京都に着いてみると風が肌寒く感じられた。

前回のアナログワンマンに続いて2度目の磔磔。
文字通りのトミノコウジ・クランク・グルーヴに戸惑うことなく、すんなりと駐車場に車を止め、余裕を持って出てきたため開場時間までの空いた時間をドトールで潰す。

開場10分前に到着した磔磔はすでに人だかりができていた。
この春から物販で売り出されている「ROCK IS HARMONY.」Tシャツを購入。これほどこのバンドの本質を簡潔に表したフレーズが他にあるのかと。ほくほく。

開場して中に入ると荷物を適当に置いて、ステージ方面へ。
前から7,8列目くらいのフロア真ん中の大きな柱の後方の少し右側、つまり下岡側。ソールドアウトしただけあり、開演が迫るにつれかなり混みあう感じになりつつ開演を待つ。

そしてもう半歩右前にずれて、との会場スタッフのアナウンスのあと、ライブは始まった。


※この先、ライブ内容についてネタバレがあります。ジョントポールと被るところも多少はあるかもしれないですし、ご注意ください。MCの位置関係はかなり適当です。




登場SEとともに会場後方の階段上からアナログフィッシュの3人が登場。

「アナログフィッシュ!トミノコウジ・クランク・グルーヴ!」
下岡と佐々木がなにやら言葉を交わしたあと、佐々木のシャウトで演奏スタート。
世界のエンドロール(新曲)
いきなりの佐々木新曲。アンセムとも通じるような開放的でアッパーなロックチューン。斉藤のジャストでグルーヴィーなドラムが鳴り響くと、それだけでめちゃくちゃに気持ちいい。アナログフィッシュのライブだ、という感じ。
確信なんかなくてもいいよ
ゆらゆらと不安定なAメロBメロから爆発するサビへの飛距離が最高な佐々木曲。いつ聴いても佐々木の歌声の熱量は半端ない。
そして曲終わりからドラムの演奏が続き、ギター&ベースがセッションのように絡みだす。その音色・フィーリングからだんだんざわついていくフロア。やおら下岡が叫ぶ。
「ハロ――――――!!」
ギターがジャカジャーンと鳴れば、フロアが波打つ。
Hello
ここが着火点。前回のツアーに比べて落ち着いたスタートだったのが、この曲で一気にフロアの熱が上がる。ライブで鳴らされるこの曲の吸引力はどんどん強化されていく。最強のライブアンセムにして痛快なポップチューン。
間奏のあの気持ちよすぎるアンサンブルを曲終わりにも繰り返して、フロアの熱狂は最高潮へ。

ここで一息ついてMC。
「やー、いいね。凄い楽しかった」
と下岡。まだ終わってないよ、との声がフロアから。
「そうです。まだ終わってないですよ」
と斉藤も。

赤い自転車
ちょっと懐かしいポップチューンでまた穏やかなライブが展開していく。佐々木の伸びやかなメロディが映える。
チンパンジー
さらに懐かしめのポップチューンで速度を上げていく。鬱々としたやるせない袋小路へ入り込む思考を穏やかなメロディーで綴る、で、闇雲に感情を爆発させる、という実はアシッドでヤバイ佐々木曲が連続。
アンセム(新曲)
キッス・ジャパンツアーでも披露されていた突き抜けるアップチューン。前2曲のもやもやを吹き飛ばしていくような爽快なグルーヴと明朗なメロディ。冒頭の世界のエンドロールといい、確実に先へ進んでいる佐々木の世界観がはっきり感じられた。

ここでMC。
「今アナログフィッシュはたくさん曲を作っていて、さっきからも披露してるんですけど。出来てくると皆さんの前で披露したくなって、やっています。・・・あんまり気にしないで楽しんでください」
と佐々木。
「そう。このあともドンドンやっていくけど、普通に楽しんでください。って言っといて次の曲は全然、みんな聴いたことあるとおもう曲なんだけど・・・」
と下岡。

夕暮れ
始まりのコーラスから水を打ったように静まるフロア。独特の空気感にフロアが一気に染められていく。
「胸骨と胸骨のすき間に真ん丸い大きな穴があいたので 
僕             は                  、
踏み切りでボーッとして立ってたらカマイタチに滑り込まれてしまったので
ア  ゴ  が  グ  ラ  グ  ラ  で  す  よ  。」
なにひとつ意味がつかめないようで、その表現全てが固まりになってこちらの脳内に侵入して、なんとも言いようのない世界を描きだす。どうしようもなく暴力的で幻想的で、危険な劇薬ポップチューン。ディープな世界にズブズブと引き込まれてしまった。
シティ(新曲)
「パーパーパー」という最初のコーラスからもうなんとなく耳馴染んだまだライブでしか聴けないダンサブルなポップチューン。この街で生きる「みんな迷子の子」、と歌ってるように聴こえるこれも毒と本当と優しさで出来た下岡の表現の本質が濃厚に息づく名曲。すでにライブアンセム。フロアも一気に笑顔笑顔。噂の斉藤ソロパートも確認できました。リンゴだ!(←謎)
鰯(仮?)(新曲)
前回のツアーでも披露されていた最新曲。少しアレンジが変わったのかより歌詞に寄り添うようにドラマティックな曲展開になっていた。まだライブでしか聴いたことがないけれど、これは本当に決定的な1曲になるような予感がする。ロックを欲する全ての「魚の目をした青年」たちみんなが「これは自分の曲だ」と強く強く思えるような引力をもつ楽曲だと思う。胸が震えた。
下岡の新旧のディープサイドにどっぷり浸りこみました。満腹。

ここでMC。
「ハルコ。スプリング。コレクション。・・・トミノコウジ。クランク。グルーヴ。・・・やってます。(観客笑) 2人ともちゃんとこの名前覚えてた?(覚えてる自分が)えらいでしょ」
と斉藤。
「いや分かってたよ。こいつ(佐々木)は会場に車で入るとき言ってたよね」
と下岡。
「うん。とみのこうじをぐるぐる回ってここに入ってくるときにほんとに『クランク・グルーヴ』だなー、と思ってポロっと口にでちゃって」
というようなことをいう佐々木。
「それはねーだろ。良くいいすぎだよ」
と些細な部分でも佐々木の好感度が上がるのを嫌がる下岡。
「ハルコ・スプリング・コレクションと言ってますけども、実際はアナログフィッシュの新曲お披露目ライブです」
との斉藤の説明にフロアは納得&大拍手。

ナイトライダー
これも久々の頭の中に直接世界を描き出すようなアシッドなでヘヴィーなロックチューン。
シムシティー(新曲)
これも初めて聴く、下岡新曲。曲始めは鰯のようなシリアスでポップな曲かと思いきや、表情をコロコロと変えるひねくれたアナログポップソングの進化版。かなりふざけた歌詞やアレンジも飛び出すおもちゃ箱の様なガチャガチャした面白さ。そしてそこに息づく強烈なグルーヴ。
このふり幅があるからここそアナログフィッシュは正しい。
僕ったら
ここで静かに静かに始まる最高のラブバラッド。前回のツアーで後半にやっている印象が強いせいかここで披露されるのが意外な感じがした。流麗なメロと佐々木の優しくも熱のこもった歌唱がフロアをまた全然別の色に一気に染め上げていく。


LOW  摩天楼(新曲)
さらに初期の名曲から新曲へと佐々木曲が続く。いつ聴いても安定感のある歌いっぷりに嬉しくなる。

ここでさらにMC。
「最近どんどん曲ができています。次のアルバムに全部は入りきらなくなりそうなんですが、とりあえず出来たら聴いて欲しくなるので、どんどん披露していきます」
との下岡発言に大拍手。
「今年はそれを音源にしてたくさん出そうと思ってるので、よろしく」
嬉しすぎる発言にさらに大拍手。

「ドゥーユースティルニード ビージーエム?」
「ノーサンキュー!」
下岡とオーディエンスのお決まりのコール&レスポンスからこの曲へ。
BGM
明朗にして快活なサウンドと、示唆に富んでいながら簡潔なメッセージ(「BGMはいらない」)を放つ下岡のねじれた世界を真っ直ぐに差し出したライブアンセム。他の曲たちに比べても相当スカスカなアレンジなのにもの凄い吸引力でフロアの熱を上げていく。
スピード
最初から一気に最高潮のテンションで始まるこの曲の即効性は凄い。とても軽やかで早いリズムなのに濃厚に煮えたぎった重量感のあるロックチューン。間奏のギター&ベースが近距離で向き合って演奏されるパートがいつもながらかっこよすぎる。

ここでMC。
下岡が口を開く。
「俺、スピードのときに発見したんだけど、この辺(自分のマイクスタンドのちょい前)に来ると時々涼しい風がくるんだよね。こう・・・ふわーっと(両手で自分の目の辺りに風を送るような仕草をしては目をパチパチする)。・・・こう、ふわ~っと(それを繰り返す)、ふ、ふ、ふわわ~っと(←かなりしつこく)。だから俺結構この辺に行く回数増やしてく感じだったもん」
それに返して佐々木。
「まさか、スピードを演奏しながら同じバンドのメンバーがそんなこと考えてたなんて」
観客笑。
「だから健太もそっちのその辺なら涼しいんだよ。行ってみ」
との下岡の言葉に、素直にその辺に行く佐々木。そしてすぐに
「あ、ほんとだ!」
観客爆笑。
「(少し笑った後)・・・というかお前、今行ったとき、扇風機全然違うほう向いてたぞ。なんか流れで言ってるだろ。なあ。適当にあわせただろ」
との下岡の鋭い追求に
「う・・あ・・(もの凄くキョドる)・・・・はい」
と佐々木。そして
「あるよね~。あるよ、そういうこと」
と第3者的感想をいう斉藤。そしてよく見るパターンへ。
「はい、謝って」
「すいません!」
観客ほんわか笑&拍手。
そして「次で最後の曲です。Living in the City」というようなことを言ったのにタイミングが悪かったのか静まる観客に、もう一度同じセリフを繰り返し、拍手が起こりホッとする下岡。
「今、最初シーンとしたからどうしようかと思ったよ」

Living in the City
ここまで多くの曲を聴いてきた中でも、イントロの空気感だけでもこのバンドにとってどれだけ新鮮な曲なのか、よく分かるこれまでにない感触の柔らかで穏やかで優しい一曲。
とはいえ
「いいや悪いに関わらず全て揃ってる」
「どうでもいいよ My Life in the City」
「だってここにはいつでもなんでもあるけどなんにもないんだぜ」
と構造的には「BGM」にも通じるような、かすかに、でも強い毒を含んだ問題提起を感じさせるポップなコーティングを施したロックチューンだ。後半のサビでいつになく多くの言葉で語られるその全てが、鋭い。圧倒された。
柔らかい盛り上がりのなか、本編終了。


熱いアンコールの拍手に答えて3人が再びステージへ。
月の花
アンコールという場にとてもハマる穏やかで心地いい雰囲気のメロディアスな1曲。佐々木の歌声はここにきても伸びやか。
下岡がまとまらない感じで話し出す。
「なんか、さっきもやったけどシティって付く曲がやたら多いのは、なんか凄い街にはいろいろなものがあって・・(とかなんとか)」
「さっきやった新曲『Living in the City』とかは、昔の曲で『のどかないなかのしずかなもぐら』という曲があるんだけど、その主人公が都会に来た、みたいな感じがあるというか・・・(とかいろいろと)」
「そんで・・・えーと、街・・・・もういいや(←投げやり)。君の住む街はどんな感じ?僕の住む街はこんな感じ。Town」
Town
イントロから特別な瞬間が始まったような高揚がフロアを満たす。神々しく思えるくらいスペシャルな魔力を持った1曲。それはこの曲が社会の全てを、街に生きることの全てを、描ききろうという壮大な構想のもとにある曲で、その無茶な妄想を、聴き手の妄想に多くを委ねることでその構想の一部を具現化するという、共犯関係を結ぶことで成り立つ曲だからだ。
満ち足りたような安心感が広がる中、ここでほんとにライブ終了。

まず驚いたのは、キッス・ジャパンツアーの大成功だったあのセットリストのポイントとなる部分を、なにひとつ踏襲しなかったことだ。
リー・ルードという飛び道具的な曲を1曲目に持ってきて、このバンドらしからぬ熱狂を作り出すことはなかったし、本編後半に唯一にして最高のスローバラッド「僕ったら」を配することもなく、KISSの中での裏のキー曲とも思える「ハーメルン」や「Queen」も披露しない、というのは「スピード」「KISS」で認知度を大きく広げたバンドとしては勇気のいる決断だったかもしれない。

さらに昨年夏から続いていたアップチューンの連打でとにかく盛り上げていく、という普通のバンドの正攻法でありこのバンドにとっては新機軸な手法自体を、終わらせた感じも受けた。
実際、今回のライブは静かなのに沸々と内側から熱くなるような昨年の春以前のこのバンドのライブの印象に近かった。
ある一定の成果を得たし、いくつかのアンセムも産まれ、また別の課題を見つけたんだと思う。

それはきっと、新曲群のほとんどが開かれたメロディとアレンジを持ち、シンガロングしたくなるような魅力を持っていることと関係していると思う。つまり大きくポップに踏み込んだところに行きたいんだと思う。
といっても一方でシムシティのようなねじれたポップ感も爆発していたり、いくつかの新境地を開きつつ、従来の魅力もさらに磨かれているようで、もの凄く今後への期待が膨らみすぎて困ってしまうようなライブだった。

ああ早く「Living in the City」(c/w City)を手に入れたい。「鰯」の音源が欲しすぎる。「アンセム」、「世界のエンドロール」「シムシティ」・・・。次のアルバムはどんなことになってしまうんだろう。そしてそのライブはどんなことになってしまうんだろう。

まずはジョントポールでなにが起こるのかは、結構重要なところだと思うし、次の音源でどういう方向の楽曲を切るかも興味深い。
初めて「Hello」を聴いたときより、初めて「ナイトライダー2」や「Town」を聴いたときより、今現在が一番今後への期待値が高まってるってこと自体、ありえない。
何度も思ってるけど、どこまで行ってしまうのか。行けるのか。

もう安心して、でもドキドキして見守るしかない。ROCK IS HARMONY!
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by kngordinaries | 2006-04-24 01:57 | ライブ


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