ASIAN KUNG-FU GENERATION count 4 my 8 beat Zepp Nagoya(060620)
今、このバンドのライブを観逃すわけにはいかない、というアホな使命感をもつことが、ごくごくたまにではあるけれど確かにある。

それは、あまりに自分とシンクロしてしまう1曲に出会ったときだったり、一つ前に観たライブが良過ぎたときだったり、普段のライブと違うよだれものの趣向が凝らされているときだったり、理由もいろいろだ。

最近の僕にとってそのバンドはASIAN KUNG-FU GENERATIONだったし、その理由はアルバム「ファンクラブ」だった。

開演10分前に会場に滑り込むと当然ながらフロアは人で埋め尽くされている。入り口を入ったところで足が止る。
数日前、岐阜公演が後藤の不調によって延期されたことを知って、名古屋公演が行われるのか不安に思っていたけれど、2daysの初日は予定どおり行われていたもよう。バンドのフロントマンにとって病み上がりの2daysのライブがどれだけこたえるものかなんて想像もできないけれど。

※この先、公演中のライブ内容についてネタバレがあります。ご注意ください。



客電が落ち、ステージをシンプルな照明が照らすとメンバーが登場。
音を確かめるようなそぶりで楽器のセッティング。場内は黄色い声援も飛び交う大きな盛り上がりを見せるが、ステージは淡々としたものだ。
慌てなくたって
何時か僕は消えてしまうけど
そうやって何度も逃げ出すから
何もないんだよ

ライブはそのまま暗号のワルツが鳴らされて始まった。どことなく誇り高いような物悲しいようなイントロから、虚しさと諦めと怠惰がないまぜになったようなメロディが歌いだされる。
3拍子と4拍子を掛け合わせた風変わりなリズムが心地よくじわじわとフロアの温度を上げていく。次第に勢いを増し、最後のワンフレーズに胸を貫かれる。
君に伝うわけはないよな

拍手が巻き起こる中、間髪入れずに鳴らされたのはアップテンポなロックチューン、ワールドアパート。最高のライブアンセムであり、ファンクラブの世界観を一曲で体現する重要曲だ。
高音のシャウトも頻発するが、後藤の歌声は問題なく出ている。というかきっちりと表現になっている。
遠く向こうで
ビルに虚しさが刺さって
六畳のアパートの現実は麻痺した

目を塞いで
僕は君を想い描いて
想像の世界で君も全部なくして
分かったよ

果てしなく広い世界と自らの孤独な個室、遠く遠くで起こった破滅に自分の現実が麻痺してしまった、と歌うこの曲は現代人なら誰もが共感できるいまどきの感覚を悲痛なシャウトで歌い上げるロックソングだ。時代性と社会性と個人の内省をポップに簡潔に描ききっている。
「こんばんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです」
曲が終わり、そう挨拶をする後藤。観客の祝福の拍手を置き去りに間を空けず次のイントロが鳴る。
ブラックアウト、イントロからそのシンプルなのにソリッドで新鮮なリズムの快感にフロアが揺れる。
鈍る皮膚感覚 僕を忘れないでよ

今 灯火が此処で静かに消えるから
君が確かめて

機能性高く心地いい音に乗って届くメッセージは、絶望よりもずっと性質の悪い、底なしの無力感と薄れていく現実感そのものだ。このヘヴィでディープな表現に、フロアが熱狂する光景は、どこかしら倒錯しつつも淡い希望のあるものに思える。
これがヒリヒリするような今ここを描くロックなんだと感じた。
さらにテンポの小気味いい曲が続き、軽いセッションからロードムービー。ここまでのどの楽曲にも感じられたけれど、バンドの音が太くなっている。ファンクラブで感じた音源の進化は生のライブでもそのままに機能していて違和感なし。むしろ音源よりソリッドで、複雑なリズムも問題なく、抜群に心地いい空間を作り出していた。音の中をたゆたうような感覚。
一日中毛布に包まって
世界から逃げる
傷つくことはなかったけど
心が腐ったよ

全部拾い集めたら
憂鬱な日々も少し晴れるかな

今日も 嗚呼・・・
何も出来ないまま赤は燃え落ちて
一日が終わる
深い青 黒く染まりはしない
空で無数の星が弱く光るから

桜草路地裏のうさぎとまたファンクラブの曲順に戻り、ソリッドでポップなロックチューンが続く。

ここでMC。
岐阜での公演延期のくやしさをあくまで淡々とあっけらかんと話す後藤。
「もうここ数日で、3年分くらいの注射を打ちましたから。もう大丈夫ですよ。いろんなとこからもらった応援の言葉、ほんとにありがとう」
「ここに全部吐き出してくから。もうここに全部出しきる気持ちでやりますよ」
と力強い言葉を連発。曲と曲の合間にその都度うがいをしているようだったし、けして本調子ではないだろうけど、少なくともそんなそぶりはみせなかった。

さらにファンクラブの深層へと向かうようにブルートレインが鳴らされる。
シングルリリース当時は、どこか性急でアブストラクトな音像がバンドの新しい世界を切り開いた変化作という受け取られ方だったけれど、ファンクラブの中ではど真ん中に位置する王道感たっぷりのアップチューンという感じがする。
そしてさらにダンサブルで穏やかなリズムの真冬のダンスでどこまでも心地いい音空間へいざなっていく。キメどころの多い難曲だろうに、最高にツボをつく抜群の演奏。
スローなダンス
悲しみのステップ
ドラマもないそんな僕らの
足跡もない夜明けの街
汚れ知らない白い心でいて

暗く沈んだトーンの中にかすかな美しい光景を垣間見せる優しい1曲。さらに幻想的なミディアムチューン、バタフライで奥深くまでファンクラブの世界をライブ空間にさらしていく。
ここで一転、開放的な空気感を放つセッションが繰り広げられる。フロントの3人はステージ最前までせり出して、音のアンサンブルのみで会場を乗せていく。ぐいぐいと上がっていくボルテージ。
Re:Re:のイントロが鳴ると一気に熱狂するフロア。前作ソルファのキラーチューンの吸引力は絶大だ。
さらにアンセム、リライトでさらに爆発するフロア。間奏では喜多によるいろんな楽器でのソロで笑いと拍手を誘いつつ民族音楽風のセッションで楽しませる。大サビ前のブリッジを後藤が復唱するよう煽ったり、ここまでのどちらかというとストイックな雰囲気から一転、遊び心を前面に出した展開。

ここでようやく2度目となるMC.。
またも岐阜公演の延期をくやしがる発言ばかりが飛び出す。
「何がくやしいって、俺がいいとこ見せらんなかったぁ、とかさ、そういうことじゃないんだよね。わざわざ来てくれた人たちもさ、いろいろあるわけじゃん。俺さ、サラリーマンやってたから分かるんだよ。平日にライブに行くのとかってさ、かなり大変なことなんだ。前日に余分に残業して、定時で帰れる雰囲気作ったりさ、ちょっとお腹の調子悪い感じにしてみたり。(会場笑) それがよくわかるからさ、ほんとに悔しいんだよね。申し訳なくてさ」
もうまさに、それで開演ギリギリに飛び込んできた身としては、グッときてしまうMC。
「今日だってさ、名古屋だけじゃないよね。色んなところから来てくれた人がいてさ。俺らがファンクラブっていう作品を出してさ、それを聴いて、おうちょっとこいつらのライブでも行ってやるか、と思ってお金出して来てくれたってことでしょ。(会場拍手) ほんとに嬉しいことですよ」
と、あくまで軽い調子で話す後藤。なんだかしんみりする客席。

後藤の曲紹介と、その後の爆発を予感させる地底を蠢くようなギターのイントロで早くも大歓声が湧き起こり、始まったのは最強のライブアンセム、センスレス
曲が進むにつれぐんぐん開放され高揚していくサウンド、小気味良く跳ねるリズム、しびれるようなギターフレーズからカラフルに表情を変え、高みへと駆け上がっていく。
それでも 想いを 繋いでよ

闇に灯を 闇に灯を 心の奥の闇に灯を 闇に灯を 闇に灯を 心の奥の闇に灯を

ここにきてさらにガッチリとまとまり、凄みを増すサウンドにため息も出ない。そしてさらにこのバンドの最高のライブアンセムが鳴る。サイレンだ。
ディープでグルーヴィーなのに優しくアグレッシブなロックが絶妙なサウンドで鳴り、蕩けるような感覚に捕らわれる。
そして本編ラストチューンは月光。穏やかで優しいサウンドとメロディーに乗せ、なすすべもない絶望と後悔の中で生まれるわけもない悲しみを歌った激情のバラッド。
ギターの残響を残し、メンバーがステージを去って、本編終了。



熱いアンコールに答え、メンバーが再びステージへ。
伊地知が前に出てきて
「ドラムやってる人いる?」
と問いかけ、数人が手を挙げると、スティックを客席へ投げる。
「あ、そうだ。今言うことでもないけど、きよしモデルのスティックが出てます」
とかなんとか。
そして遅れて出てきた後藤が
「あーなんかMCしようと思ったけど、とりあえず1曲やりたい」
となかばバンドに向けて言うように言い放ち
「新曲をやります。十二進法の夕景」

ちょっとソルファの感触に戻ったようなポップさとファンクラブの最後を飾る2曲のバラッドの先を見せるような雄大なサウンドスケープ。
そしてここで後藤が
「山ちゃん、告知」
と振ると、見事にそつなくnanoコンピの告知をすませる山田。その後に後藤が
「無駄がない!・・・山ちゃんの告知は無駄がない。・・・そして冷酷。(会場笑) 体温がない。誰の感情移入も許さない。いっさいの感情がこもってない。・・・キラー告知。(会場爆笑)」
と次々にきついツッコミを。
このあともグッズのことを言い出す山田に
「山ちゃんはお金の話しか興味がない」
とさらに攻撃していた。
このあと初めて名古屋でやったライブは盛り上がらなかった、という話などをして、静まる会場を見て
「なんかしんみりしちゃったな。こういうときは盛り上がる曲を」

アジカンのポップネス爆発のキラーチューン、ループ&ループで一気に会場はヒートアップ。さらに喜多ボーカルの嘘とワンダーランドで柔らかい盛り上がりを産み出したかと思えば、羅針盤でガツンと挙げていく。
そしてフロアの熱が最高に高まったところで、おなじみの4つ打ちのイントロが鳴り響くと大歓声が湧き起こる。後藤が音頭をとり、全体でカウントダウンをして始まったのは君という花。このバンドのスタンダードにして時代を代表するような風格まで感じる名曲。

大歓声と拍手が鳴り止まないなか、口を開く後藤。この盛り上がりに呼応するような熱い力強い言葉が投げかけられるかと思ったら・・・。
「くやしいね・・」
観客コケ笑。ここにいたってもストイックに自分を追い込む後藤はやっぱり特異な人だ。
「高校のころ、俺野球やってたんだけど、全然真剣にやってなかったんだよね。それである試合でエラーしてしまって、これで次から試合出れない感じになって、俺泣いたの。くやしくて、家で。そしたらさ、親父に言われたの。『お前は努力してないじゃないか。努力をしてないヤツには泣く資格はない』って。これはグッときたね。ほんとそうだなって思った。
だから、今は出来ることを目一杯やって、それでダメだったらくやしいよ。くやしがるよ、俺は。でも努力もしてなかったらさ、そりゃ涙も出ないよ。
・・・次で最後の曲だけど、後悔しないように全力でやります」
との言葉からアンコールラストはもちろんファンクラブのラストナンバー、タイトロープ
悲しいほど 綺麗なメロディ

どうか投げ出さないで そっと心に繋いで ねぇ

見失った此処が始まりだよね
そうだね

壮大なサウンドスペクタクルと叙情的な美しいメロディー、最後の希望を歌ったバラッドでライブは全て終了。

徹頭徹尾、伝わるもののあるライブだった。
こんなに時代性や社会性を当事者感覚で直接的に訴えたメッセージを持ち、それをライブの場でさえもがっちりとコンセプチュアルにシリアスに差し出すバンドが今現在、他のどこにいるだろうか。
しかもそこに気難しさや難解さは薄く、それどころかサウンドに酔いしれる快感や、機能性は今まで僕が観たアジカンライブの中でも一番だった。もちろん初期のパンクやエモ風のノリではなく、もっとダンサブルな意味で。

そして後藤の公演延期に関するしつようなまでのこだわり、自身への叱咤は、全然重いものではなかったけれど、この人の嘘のなさ、生真面目さ、ストイックさをはっきりと伝えていて、後藤日記での延期以降の発言も含めて、リスナーの信頼をさらに上げることになると思う。

にしても最高のライブアンセムを連発して、会場全体が熱気で高揚してのぼせ上がっている中、一人平静に「くやしい」と言いながら、最後の曲まで表現を絶対に成し遂げようと集中力を高めてる後藤の姿は、逆に大丈夫なのかと心配するほど真摯でシビアだった。
自分の不摂生にしろ不幸なもらい風邪にしろ、ライブで声が出なくて、頑張ってもやっぱり無理で、観客に歌ってもらって、ボーカルが感動してファンも感動して大団円、みたいな話はいくらでもある。それも素晴らしいことだ。
でもそれとは違うバンドもいるし、その一例としてこんなボーカルもかなりかっこいいってことだ。

最近のインタビューでファンクラブは作らずにはいられなかったアルバムだ、とメンバーが口を揃えて言っている。しっかりと時代を切り取ったメッセージは、確かにいまここで生きる人たちに必要な、ロック・バンドにしかできない表現たりえていると思うし、こんな志、スタンスで闘っているバンドを僕は他に知らない。
今のシーンにアジカンはどうしても必要だ。変に「音楽、楽しい」に偏らず、小難しい哲学に傾倒せず、ど真ん中の健全で真っ当な表現を切り開いているこのバンドに、まだその先を期待してもいいだろうか。
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by kngordinaries | 2006-06-22 01:24 | ライブ


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