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GOING UNDER GROUND TOUR TUTTI at 武道館
それなりにキャリアのあるバンドに対してこんな言い方は逆に失礼かもしれないけれど、この春から夏にかけて行われたTOUR TUTTIは、間違いなくGOING UNDER GROUND史上最高のツアーだった。
そのツアーファイナルの場所が、バンドにとってワンマンでは最高のキャパシティである武道館だったことは、本当に清々しいくらいに出来すぎたタイミングだったと思う。

本当に蒼すぎて切なすぎる青春ど真ん中のその光も闇も鮮烈に描き出した奇跡的な「かよわきエナジー」「HOME」の季節をとおり過ぎて、「トワイライト」や「ハートビート」を掲げて確かなコミュニケーションとステイトメントを模索し、豊かなメロディーを開放していく過程でついにはバンドサウンドの枠も壊してたどり着いた「TUTTI」というアルバムと「VISTA/ハミングライフ」という2曲。
特にハミングライフという曲は、どんな素晴らしいバンドでもそんなに何曲も持っていない、マジカルな力を持った1曲だと思う。このバンドはこの曲を生みだし、そして多くのライブ会場で歌い続けるために産まれたのかもしれない、などと思わせるような。


まあ、なにはさておきこのバンドはライブが素晴らしいわけで、メジャーデビュー以降、それはそれは相当な数のライブをこなしてきているにもかかわらず、ちゃんと1回のワンマンライブをパッケージしたライブDVDが出ていなかったことは、まことにいかんともしがたい事態だったわけだけど、この作品が出たことでもうオールOKだと思えた。

僕はTUTTIは長野と名古屋で都合2回観ていて、とくに名古屋はもう筆舌に尽くしがたい素晴らしいライブだったので、武道館もきっと素晴らしかっただろう、という確信はあったけれど、大規模な会場というところにほんの少しの不安もあった。
観てびっくりした。普段のライブハウスでのライブとまったく変わらない熱さ、空気感。映像で観てそう思うのだから現場で観た人たちはさぞかし嬉しかっただろうと思う。
2曲目「Happy Birthday」のイントロの会場全体でのシンガロングから、3曲目にしてずっと長年このバンドのライブアンセムとして君臨する名曲「グラフィティー」でフロアの拳が突き上げられてしまうと、もう止らない。怒涛の勢いでライブは展開していく。

ノラの妙に上達してしまっていて痛快な自己紹介ラップも、「シグナル」「南十字」の静謐な美しさも、「ステップ」からナカザボーカルの「ショートバケイション」へのダンスタイムも、後半の怒涛の名曲群も、普段どおりの、つまり最高に楽しく、胸の奥が熱くなる、このバンドのライブそのものだった。
松本素生のメガネは前半から曇りまくり、汗が滝のようだ。
他のメンバーも、それぞれのパフォーマンスが映像になることで、くっきりと見えて、このバンドのライブの緻密な構造がよりクリアに観ることができた気がした。


GOING UNDER GROUNDが体現するのは、若者たちの運命共同体としての悲喜こもごもの日常のリアルだと思う。
たとえばSMAPが「夜空ノムコウ」を歌っているときのあの感じ、RIP SLYMEが「One」を歌っているときのあの感じ、それを人生そのものでやっている5人であり、それをまんま音楽に、バンド活動にしてパフォーマンスしてる集団なのだ、という気がちょっとした。
だからダサいしむさいし、ときに脂っこく、ときに女々しく、ときにひ弱で、嘘がない。

だから初めての武道館でもライブハウスと全く変わらぬ熱さと完成度でやり遂げるくせに、アンコールの最後でぐしゃぐしゃに泣きじゃくるのだ(ボーカルのみ)。
だからいろんなバンドが苦心する会場全体の一体感なんてものを軽々飛び越した熱狂がライブの度に産み出されるのだ、と思った。

ほんとに全ての要素が絶妙なタイミングで重なり合った奇跡的な作品になっていると思う。このバンドがいてくれることに感謝。
by kngordinaries | 2006-11-13 00:30 | 音楽


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