MADE IN JAPAN  RHYMESTER
初めてちゃんと聴いたのは2001年、彼らのメジャーデビューのときだった。

EAST ENDやスチャダラパーよりは少々ギャングスタ感はあるけれど、ZEEBRAみたいなコテコテでもない、といった印象で振りきれた感じがないものの、そのスキルの高さや心地いいトラックが気に入って、とりあえずそのあとのアルバムは全てチェックしてきた。

「ウワサの真相」「ウワサの伴奏」に比べ「グレイゾーン」はその名のとおりにどこか曖昧模糊とした匂いと内省的なライムが多く、ちょっと自分にはしっくりこない印象があった。
続く昨年春にリリースされた最新作「HEAT ISLAND」。日本という国の変な熱にのぼせているような、逆にこの袋小路な状況だからこそなにかが生まれそうな混沌としたエネルギーの胎動のような、そんなフィーリングをフィーチャーしたこの作品に妙に心を捉えられた。

昨年の夏フェスでのステージのまさに「音楽は素晴らしい」を体現する「キングオブステージ」を観て以降、「HEAT ISLAND」および過去作品のリピートがいつのまにか増えていった。

そしてグループ結成17年(!)、インディーデビューから14年の集大成というベストアルバムその名も「MADE IN JAPAN」が2007年1月に届いた。
日本のヒップホップの黎明期からそのジャンルの定義を作り上げてこねくりまわして広げてそして広めたグループなんだという自負と、クラブカルチャーとショービズの現場の証人とこの国の生活者という2つが混然一体となった視点からのこの国への愛ある批評と提言を表現に盛り込んできた軌跡を、素晴らしく表したタイトルだと思う。

いやほんとにこのベストアルバム全26曲は凄い。
今の耳からすると吹き出してしまうくらいつたない楽曲もあるけれど、そのつたなさこそが彼らが手探りで細部から一つ一つトライアルをして、今のヒップホップシーンの土壌を作ったうちの一組であることがよく分かる。
さらに、90年代までの作品のB-BOYアンセム的な作品群と、メジャーデビューあたりからのライムの社会性とサウンドのジャンルレスな音楽性が飛躍的に増し自分達のなかでほんとにリアルならもう何でもあり的になった作品群の振り幅が凄まじい。
決して譲れないぜこの美学 ナニモノにも媚びず己を磨く
素晴らしきロクデナシたちだけに 届く 轟く ベースの果てに
見た 揺るぎない俺の美学 ナニモノにも媚びず己を磨く
素晴らしきロクデナシたちだけに 届く 轟く ベースの如く
                                      /B-BOYイズム

きっと オレが温暖化の元凶 湯気とまんねぇスキンヘッド
ニッポン! 狂った桃源郷 ウォッチング中の望遠鏡
不眠不休で猛勉強 食生活? ホルモンの影響?
言わば人体への挑戦状 平成女子の異常成長
どうしてくれよう? この現象、 今の感情こう表現しよう
「けしからん!」(宇多丸)

Yes,Yes y'all to da beat y'all Mr.Dタマに空しーの
端から見りゃ相当C調なオマエらなんでそう調子いーの?
デビューしたばっかでその完成度 アラ探したって見つかんねーの
プラス人間出来てるんだからアンタもうやってらんねーよ
オマエが連れてるデルモちゃんと交換しようぜオレのアダモちゃん
「けしからん!」(Mummy-D)
                                      /けしからん

現場感覚が抜きん出て秀でているグループだけに、とにかくパーティーチューンは掛け値なしに最高だし、ライムの語彙の豊富さや表現方法の豊かさやリズムへの乗せ方はほんとにどこまでもハイセンス。頑張ってヒップホップ用語を使っていうと、ハーコーでドープでイルでリアルで・・・ってな感じである。

そんなこの作品を聴きまくっていて、今特に心奪われているのがリリース当時はあまりピンとこなかった「グレイゾーン」の曲たちだというのが自分的におもしろい。
全ての価値観がはっきりしないグレーな世の中であること、もしくはリリースされた2004年当時の不況と国際情勢への世間全体の漠然とした不安感、それらをちっぽけな自分の部屋での内省と世界の現状の対比、というテーマでアウトプットした楽曲がいくつかおさめられたこのアルバムは、例えばそれから2年あとにリリースされたASIAN KUNG-FU GENERATION「ファンクラブ」で表現されたそれと同様のことを表現していたと思う。
どこか遠い国で起こった大惨事 TVで眺める幸せな午後3時
所詮万事 他人事なのにホントイヤな感じ
まるでガンジーよりも逆卍 旗に掲げる野蛮人たちの勝ち
みたいな不吉な時代の暗示 感じながら食べるまずいブランチ(宇多丸)

テロに対するビッグ・テロ 映し出す夜中のチャンネル・ゼロ
じっと眺めながら待つバッド・ニュース 傍らにはポテトスナックとジュース
それも喉元過ぎりゃ知らんぷり 報道打ち切ったニュース番組
見てりゃ誰もが思うぜ War is over 全世界に広がれ 青い空 だけど(Mummy-D)

911エブリデイ 驚くようなことたぁ別にねぇ
ミサイル 弾丸 雨降りで ただしカメラ回ってねぇ国で
911エブリデイ 驚くようなことは別にねぇ
ミサイル 弾丸 雨降りで もうできりゃ目ぇつぶりてぇ

ハウマッチ? 人の命の価値 気持ちは確かに等しく同じ
はずだが飢えて死んだ子の体重 よりもずっとズッシリ重たい銃
それは高値を更新中 そして世界を土足で行進中
そのオコボレを拾うチャンス来るさ ってな調子の黄色いアンクルサム(宇多丸)

また憎しみの連鎖 自爆テロ 子供達まで巻き込まなくてもと思うが
それを殉教と呼ぶらしい 本当虚しいが 今持って処置ナシ
民族 国家 主義 主張 宗派 自由もたらすのはその銃か?
ユナイテッドネイション メディアのアジテーション
越えろ オレらのイマジネーション(Mummy-D)
                                     /911エブリデイ

そこで連想する/議会でしょっちゅう寝てますよねえ
公務の全然途中/で、なぜか余裕で豪邸所有
料亭通うヤツらを「せんせい」と言う/世界一大人しい納税者
別名「いいカモ」さえも騒然としちゃう/この事態招いた張本人 戦犯ども
裁かれて当然とちゃうの?(宇多丸)

Y,E,N (Money) 日本銀行券 (Cash Money)
Y,E,N それが無きゃ始まらねえ
Y,E,N (Money) 日本銀行券 (Cash Money)
Y,E,N そのためにさぁ働け

(それが無きゃ始まらねえ) のは百も承知/達してみたい 成金の境地
金バラ撒いて飽きるまで放蕩し/まだ余るなら社会にご奉仕
なのにオレのオヤジは失業し/片や隣のダンナさんは過労死
これじゃ希望失って子供は自暴自棄/見逃せるならオマエらは非常識(Mummy-D)
                                     /続・現金に体を張れ

WELCOME2MYROOM ガラクタ詰まったオレの小宇宙
WELCOME2MYROOM
                               /WELCOME2MYROOM

MCというまずパフォーマンスありきのヒップホップ独特の職業は、1曲に詰め込める言葉数が多いし、なによりサウンドが変にシリアスにならずカジュアルに言葉を音に乗せられることからも、より素早く生々しく時代を描写することができるアートフォームなのかもしれない、とRHYMESTERを聴いていると思う。
ロックは50年前に生まれている。それはその時代の必然で産まれたのだろうけど、それより大分歴史の浅いヒップホップはより今の時代に距離の近い構造を要している。それはどんなカルチャーでも当たり前の真実なんだけど、それを体現するアーティストがいないと、そのカルチャーはなかったことになって消えていくわけで。
だから日本のヒップホップにとってRHYMESTERは「最も重要なグループ」という言葉で表されているのだということがよく分かった。

新レコーディングも数曲入り、「オイ!」という完全新曲の超痛快で最高の新ヒップホップアンセムもあり、大充実のこの作品以降の一連のリリースラッシュと3・31武道館公演を最後に、しばらくリリースを休憩(ライブ活動は続行)するらしいRHYMESTER。
ヒップホップを背負ってシーンを切り開いていた当時の作品も素晴らしいけれど、最近のバンドとのセッションなどジャンルレスな音楽性とどんなことでもライムしまくった結果今の時代を鋭く抉った豊かな批評性を持った作品が大好きな僕としては、また早い段階でのリリースを期待したい。

Hey,オレらもいいトシなのに いつまでたってもこの調子
Yeah,And You Don't Stop 騒ぎ続けるのさ いつも夜通し

生きてくだけでも ひと苦労 それでも上を向いて歩こう
目標は きっとあの丘向こう Yeah,And You Don't Stop
                               /And You Don't Stop

上手 (かみて) サイド 下手 (しもて) サイド MC'sの背後も照らせライト
しかと見ときなこのアイランド 飲み込んだ魔のトライアングル
Can you see that?/(オイ!オイ!オイ!オイ!・・・)
Nah,Nah, そいつぁマボロシじゃないぜ
Yo,これがキングオブステージ レジェンドの現在進行形 Like this
                                      /オイ!

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by kngordinaries | 2007-03-18 16:59 | 音楽


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