From Nowhere 代官山UNIT
井上陽水奥田民生@Zepp Nagoya以来1ヵ月半ぶりのライブ、それが久々な感じがしてしまうのはなかなか問題ありだな、と思いつつも新幹線に乗って東京くんだりまで9mm・OGRE・STANという素敵ライブを観に来てしまった。多分、微塵も反省していないのだろう。

首都の圧倒的な人ごみに、何度訪れてもなれない地方出身者はただただぐったりしながらとりあえずUNITへ。

会場前に到着すると開場時間を10分程度過ぎているにも関わらずまだ100人を優に超える列が並んでいる。
あの伝説の(←極私的に)昨年12月の名古屋でのSTANワンマンのすでに倍以上の観客。
unit自体も予想していたより大きく、これでもかと地下に降りた分だけライブフロアの天井が高いこじゃれた感じの中くらいの規模のハコだった。

もの凄くざっと数えて300前後は入っていたと思う。混み合いすぎることもなくフロアの熱気もあるいい感じの入り具合。
ステージの楽器の配置から、トップバッターは9mmっぽいことが分かる。番号がわりと早かったことせいもあり、なんとなく右前方5,6列目に陣取る。

9mmはメディアで見かけるものの音源すらまともに聴いたことがないバンド。
OGREは1枚のCDと1回のライブを観てわりと気に入っているバンド。
STANはここ1年ちょっとの間にこれでもかとCDを聴き倒し可能なかぎりライブに足を運んでいるバンド。

それぞれ異なった視点からかなり期待させるラインナップに、胸踊らせながら開演を待った。




トップバッターは9mm Parabellum Bullet
登場から最前スペースはとんでもない熱気、メンバーが登場して爆音で曲が鳴り出した瞬間からモッシュの嵐、風評どおりかなり激しいバンドのよう。
ギターのパフォーマンスや、最初いったいどこからこの奇声は発せられてるのかと戸惑ったベースのスクリームもなかなか見ものでステージを見ているのがかなりおもしろい。コミカルなくらいの激しさに対して逆になのかそのままなのか、発せられる世界観はかなりシリアスでダークかつ冷たいように思える。直情的な激しさではなくて病んでいて乾いていてぐしゃぐしゃに入り組んでいる、そんな鬱屈した激しさだ。
またそれに加えてボーカルが強面なので、ごくごく普通のMCもどこか客席が引き気味に感じたけれど、きっと彼はいいやつだろう(私見)。
激しいバンドにありがちな「どの曲も一緒」感が薄いのは、リズムが曲ごとにアプローチが違って、メロディもわりと抑揚があるものだからだと思う。
ボーカルのひんやりとした声質のせいか、なんとなくGRAPEVINEやSyrup16gと似た感触を感じたようなそうでもないような。
エモでパンクな装飾を剥ぐと文系ナイーブな内省型で、サウンドは今後いろんな方向に広がれそうな可能性を持つ、という意味ではASIAN KUNG-FU GENERATION的にいずれ大きくポップに飛躍するような気も。
とりあえず一度音源をチェックしてみたい気にさせられるライブだった。

続いてOGRE YOU ASSHOLE
ステージに半円を描くように並ぶメンバーの立ち位置からして独特な魅力を持ったバンドだな、とつくづく思う。円の中心で製造される浮遊するような心地いいグルーヴに酔わされていく感覚だ。
MCでボーカルから9mmのベースのスクリームの謎が明かされる。
「僕、昨日が大学の卒業式だったんですけど、さっき9mmのライブで ベースの中村くんが『出戸くん卒業おめでとう!』って叫んでくれて。多分誰も(凄まじすぎて)聞き取れなかったと思うんですけど・・・中村くん、ありがとう!」
確かに、これっぽっちも聞き取れなかった。ここのMCだけでなく各バンドのMCはお互いがこのツアーを通じて刺激しあい高めあえたことをなんとなく感じさせるものばかりで、バンドにとって凄くいいイベントだったんだな、と感じるものが多かった。
一発で耳に残る印象的なギターのイントロとボーカルの高音から曲中で多様に音色が変化して音のアンサンブルの推し引きがあって、その波の中で生まれていくグルーヴ感が特に心地よく、知っている曲がほとんど披露されなかったけれど、楽しめた。
じわりじわりとこのバンドの魅力にはまっていってる気がするのだけど、そのうちなにか独特にして新しい決定的な1曲が登場するんじゃないか、という期待を抱いてしまう。今後もしばらく要チェックしていきたいバンド。


そして、いよいよ。STAN。というかSTAN!(意味なし)の順番を前に、OGREでドリンクのためにちょっと下がっていたポジションからぐっと前進し、右前方4,5列目へ。
セッティングに登場した49の短髪にちょっと驚く。
そしてなんだか違和感があるな、と思ったらKYGと今西の立ち位置が逆になっていた。一応なんとなくKYG側に陣取っていたのだけど、なんとなく今西側となった。まあそれがどうということはないのだけど。
と、興味津々、かぶりつきで彼らの一挙手一投足を観ていたら、会場に流れるSEがいきなりザッピングしたように変わり、ULTRAMAGNECTICSTANSの一節がいきなり流れ、そして止まる。会場騒然。しかも一瞬でよく分からなかったけれど、奇妙なリミックスがされていて、しかもボーカルが別人だったような。謎だ。が、しれっとした顔でセッティングする彼らが確信犯的に用意していたのであろう小ネタに嬉しくなる。
「さあ、楽しもー」
というKYGのゆるーい挨拶でどうやらライブ開始のもよう。

STAN
一曲目はULTRAMAGNECTICSTANS
いきなりのKYGのハンドマイクと奇妙なアクションに、のっけからフロアの温度はぐんぐん上がる。今までSTANを観てきたところよりも大きめなハコのせいか音の粒もクリアに感じられ、このタイトでグルーヴィーでトリッキーなファンキーチューンが軽やかに気持ちよく世界を描いていく。
そして2曲目はYOUNG&FINE。この曲順はヤバイ。どちらかというとメロディアスな方面の大名曲の中でもあまりライブで聴けないレア曲がここで投下。耳を離れないイントロのリフと、全編に渡っての非常に強いメロディと1曲の中での音像を緩急自在に変えていく技ありのソングライティングが栄える大名曲。
歌とアレンジとリズムと表現内容がここまで分かちがたく連なってる曲はあまりないと思う。「I Know」にハマリすぎていてちょっと久々に聴いたけれど、素晴らしすぎる。
「次の曲は新曲で『おおくのひとたち』(表記不明)という曲です」
と言うKYGの説明から新曲おおくのひとたち
ギター中心に疾走するわりとオーソドックスなサウンドに乗って歌われるのは、「おおくのひとたち」と「おおくないひとたち」というシンプルな2極構造の物語。寓話的な語り口に、生々しい現実の中の差別や格差や民族といったシリアスな問題の核心をザクザクと切り刻むような言葉の刃を仕込んだ劇物的ロックチューン。
歌いだしからその一語一語に震え、その表現のエッジの鋭さにやっぱりこのバンドしかない、と確信させられてしまった。「JAPANISTAN」ほど社会性に振り切れず、日常の個人対個人にも通用する分かりやすい言葉で複雑で矛盾をはらんだ問題に真正面から向き合った誠実なロックの名曲だ。早期音源化熱望。
そしてJAPANISTAN。この曲は突き刺さるメッセージと共にタイトで隙間が多いのにグルーヴィーなサウンドが聴き所だと思うのだけど、今回は会場の音の調整がよかったせいかそこが素晴らしかった。バンドの演奏自体もライブ開始からどんどんギアを上げていっているように感じられる。
「みなさんは恋をしたことがありますか?」
とKYG。静まる会場。
「え・・・・ないの(笑)」
会場笑。
「・・・だっせぇ」
そして直後いきなり歌いだされるLove Youに大きな歓声が沸く。
歌いだしのギターのみの伴奏がいつも以上にもの凄く音が小さく感じられる。歌でもっていこう、というKYGの気合だろうか。ベースとドラムが重なり演奏が勢いを増していくパートが鳥肌ものだった。
「次も新曲をやります。これは『エスティーアン』(表記不明)という曲です」
と言ってエスティーアン。おそらく「STAN」と書いて「エスティーアン」と読むだろう、ULTRAMAGNECTICSTANSやSTAN'S HOUSEに続くバンド名入りソングなんだろう(全部が推測)。今までのSTANの曲のどれよりも分かりやすくダンスな最高パーティーチューン。
サウンドだけで十分に腰を動かす機能性があり、かつ「おねだりするならおめかししろよ」等々のなかなか常人には思いつかない言葉遊びが全編に冴えまくるとにかく聴いてて笑顔になる突き抜けた楽しさがある。こちらもヤバイ。早期音源化熱望。
「次はちょっとまじめな曲をやります」
とさんざん躍らせといてのKYGのMCからALL BLUES。不穏なギターのイントロがきらびやかだった会場の空気を一変させ、混沌とした暗がりへと誘う。歌いだしからもの凄いエネルギーでこの世界の不条理への怒りを一気に放ちだすKYGの鮮やかなモードチェンジに胸が震える。混沌とした矛盾を抱えるこの世界の一面をリアルに描き出す演奏が凄まじい。
「これはALL BLUES、という曲でした。Miles Davisの曲に同じタイトルの曲がありますが・・・マイルスにパクラレちゃった!(微笑)」
会場笑。ここで曲のシリアスなトーンを引きずり過ぎないところが、ライブなれしてきている感じがした。
そしてギターをチューニングし始めるKYG。足元のカンペを堂々と覗き見て・・・
「あっ!!」
いきなり声を上げ、軽く吹き出すKYG。振り返り49にオフマイクで何か言っているがわりと前方にいたので「間違えた?」という声がしっかり聞こえた。首を縦に振る49。マイクに戻るKYG。
「すいません、ちょっと曲順を間違えてしまいました(笑)。・・・この曲のあとに、あゆ。あゆはないよね~」
の言葉に会場大拍手。そしてちょっとためらいつつも全開であゆへ。
おそらくダンスチューン、エスティーアンとの波状攻撃で押したかっただろう、最強ポップチューン。その熱狂のあとのALL BLUESだったらさらにメリハリがあっていい演出だったのかもしれないけど、そんなことお構いなく問答無用に楽しい一曲。
そして間髪いれずに
「パールジャム」
とのKYGの小さなつぶやきから49と今西のセッションへ。
「おら、もっともっと。まだまだ~」
「最後だぜ、もっとこいよ!ほらもっともっと!」
と2人を楽しげに眺めながら煽るKYG。それに合わせ熱を増す演奏。ギターも加わって最高のバンドセッションが繰り広げられて、流れるようにTHE SONGへ。
歌い出しからサビまでの歌のエモーションとメロディの飛翔の美しくなめらかなラインがいつ聴いても素晴らしすぎる最高のポップチューン。歌われる言葉の一つ一つが全て結晶のように大切なものだけ凝縮されている。
大きなエモーションが広がり柔らかな大団円へ、とは行かず、ザクザクと切り裂くようなギターのイントロからI Knowへ。心地いいポップチューンから獰猛で強いビートのファンクチューンというここ最近お決まりの流れだけれど、何度聴いても最高。
大きな盛り上がりをみせてライブ本編は終了。

熱いアンコールの拍手と歓声に包まれて3人が再びステージへ。
「アンコールありがとうございます!」
と話し始めるKYG。
「このイベントは名古屋大阪とやってきて今日がラストなんですけど。他の2バンドがすげーいい人たちで、普通対バンって結構みんな突っ張ってるっていうかね。楽屋でも喋らねぇ、とかって感じの人が多いんですよ。でも彼らは喋ってくれて」
「真面目な話をすると他の2組が今24歳くらいで、ちょうど俺らが1st出したくらいなんですよ。
なんていうか、初期衝動? (観客笑) いや笑うとこじゃない、ここは。そういう初々しい感じっていうのをね、なくしちゃいけないなと。凄い刺激になりました。分かる人もいると思うけど今日はそういう意味もあって1stからの曲が多めでやってるんですが、最後も1stからの曲で・・・」
ここの一瞬の間に1stからでまだやってなくてアンコールでやりそうな曲を考えたのだけど、思いつかなかった。そしてKYGの口から発せられたのは、意外な曲名だった。
「『いずれみんな気付くさ、俺たちはただのダンスバンドなんだって』という曲をやります」
もう『いずれ』という単語が出た瞬間からフロアのそこここから歓声と拍手が湧き起こる。意外な選曲にしてこれ以上なく最高の1曲。まさかやってくれるとは思っていなかった。
いずれみんな気付くさ、俺たちはただのダンスバンドなんだって
イントロのギターからもうあまりにかっこよすぎる。ずっと聴きたかった1曲。
STANの持つ個性を濃縮し、1stの中でも特に蒼い少年的ロック観と無鉄砲な攻撃性と万能感が漲りつつ、世界の矛盾や嘘の全てを嘲笑するような批評性に溢れた超ファンキーでグルーヴィーなロックチューン。(←好きすぎて意味不明)
モッシュとダイブが捲き起こりぐちゃぐちゃな盛り上がりをみせてライブは終了。
「イエーイ」
と言いつつ、他の2人が退場してもくねくねしながらステージに残るKYG。
「いまの気持ちをバンプオブチキンの人のモノマネで表現します」
場内騒然笑。
「今日は、ステージから下りたくないぜ」
場内爆笑&大拍手。とは言いつつもすぐにステージを去るKYG。これでライブはほんとに終了。

いやもう、とにかく素晴らしかった。
まずなんと言っても「いずれみんな(長いので略)」の大披露。僕はこの曲が全国どこのライブハウスでもガツンと披露されて熱狂に包まれる日を心待ちにしていて、そんな状況が作られていかないといけないんじゃないかと思っているのだけど、今日がその第一歩みたいな気がしてならなかった。
だってこんなに最高なのだからこれはそうならなきゃいけないだろう(盲目的ファン心理)。

そしてほんっとに素晴らしい未発表曲2曲!
「エスティーアン」は曲名はこの日初めて知ったけれど、何度か聴いてきて聴くたびにその中毒性にやられている。間違いなく新たなバンドの名刺になる必殺ダンスチューン。
「おおくのひとたち」はもうとんでもない。よりポップに振りきれたサウンドに乗っかる恐ろしくクレバーで鋭い言葉の刃。アナログフィッシュ「公平なワールド」にも繋がる、この今の社会で生きていたらどう考えてもぶち当たらないわけがない多種多様な問題たちに共通する核心部分を、痛烈に射抜いた1曲だと思う。やっぱりどうしても必要なバンドだと強く思わされた。

ALL BLUESに顕著なようにKYGのシンガーとしての覚悟もさらに強くなっているように思えたし、タイトな演奏もいつもどおり素晴らしいキレ味だった。

毎回毎回思うことだけど、ほんとに間違いない。STANはあまりにも正しい。このバランスでこの大胆さでこんなロックができるバンドはSTANだけだ。あまりに独自で抜きん出ている。

そしてそれはとても危ういバランスのなか、いまだにまっすぐに進化している。それはほんとうに嬉しいことだ。
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by kngordinaries | 2007-04-09 00:49 | ライブ


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