アナログフィッシュ ナツフィッシュ!!! ハジマリッ! 渋谷CLUB QUATTRO
蒸し暑い曇天模様の夏の日に、3年目のナツフィッシュに初参加するために、東京は渋谷まで来てしまった。

アルバム「ROCK IS HARMONY」からもう8ヶ月、アルバムツアーが終わり、素敵対バンツアーが終わり、リリースの予定もないままに3ヶ月が過ぎた今、もういてもたってもいられなかったのかもしれない。
「Hello」以降のこのバンドは、いつも異様なくらいの成長期にあって、いつでも新鮮な驚きを与えてくれる。このバンドにとっても久々のワンマンライブ、これを見逃す手はなかった。

さて、初めての渋谷クアトロは、名古屋のそれと同じようにパルコの上にあり、階段でずらっと地上まで並ぶパターン。
入場時に今回のライブの告知的なフライヤーともう一枚紙が渡される。「アナログフィッシュからのお願いでーす」と渡すときに謎のセリフをつぶやく係のひと。
そこには無骨で乱暴なカタカナがびっしりと並んでいて上のほうに「みんなで唄おう!!SUMMER TIME BLUES」と書いてあるので、これは歌詞なんだろう。

会場内に入ると、すでにかなりの人で埋まっていたので、下岡側7,8列目くらいに陣取る。わりとステージが高く観やすい印象。
800とか入りそうなわりと広いハコなのだけど、開演前にはかなりびっしりと後ろまで埋まっていた。久しぶりのワンマンへの期待の高まりが感じられる。

そして、客電が消え、ライブが始まった。

※この先、一夜限りのライブなのでネタバレもなにもありませんが、ご注意ください。(何に)




すっかり定番となったThe Yeah Yeah Yeah Songに乗ってアナログフィッシュの3人がステージに登場!
佐々木がいつもどおりに煽りまくる。サングラスに麦わらにオーバーオールな斉藤。なんだか異様な緑地に色んな色が散りばめられた長袖の柄シャツを着た下岡。
なんかとても見た目だけでちょっと面白い。

そして、登場の盛り上がりから一息つき、セッティングをフロアが固唾を飲んで見守る中、最初の一音が鳴る。
これは・・・・聴いたことがない、けどゴリゴリしてるのにポップなギターリフが素晴らしくかっこいい。いきなりの新曲でライブはスタート。
佐々木が歌い出し佐々木曲かー、と思ったのも束の間、次の1節は下岡が歌い、さらに→佐々木→下岡と交互に歌っていく。くらくらするくらい意外すぎる展開。
いったいどっちメインの曲なんだろうと思っていると、ついにサビに突入。なんと、佐々木下岡がユニゾンで主メロを歌う展開!
うわわわ。めちゃくちゃ新鮮。いやよく考えれば2人メインボーカルがいるバンドの場合、こういう作りがスタンダードなんだろうけれど、このバンドに限ってこの技だけはないと思っていた。しかし、これがいきなりとてもしっくりくるしパワフルでポップでダンサブルで、つまりど真ん中のキラーチューンなのである。いきなり最高だ。
驚きと喜びにフロアが包まれる中、立て続けに鳴らされたのはLOW。モダンなアレンジと感情の移り変わりのように変幻自在に様相を変えていくメロディ。いつ聴いても耳心地よく、でも苛立ちと焦燥に溢れたロックチューン。
そして印象的なイントロのギターが鳴らされると歓声が上がる。ジョイナーだ。
初期の下岡曲には珍しい激情のロックチューン。ダイナミックな演奏と鬼気迫るボーカル、そしてそのフォーマットで紡がれる不穏な物語。このバンドの中でも異色な名曲。
そしてこの辺で佐々木が叫ぶ。
「夏ですよー」
とかだったか。2,3回連呼し、アンセムへ。イントロから不思議なくらいに優しくも力強くフロアの熱を上げていくまさにライブアンセム。佐々木のしなやかで強靭な歌声がどこまでも高みに飛翔するような感覚を感じさせる。大きな盛り上がりのなか、最初のバースは終了。


「お待たせしました。アナログフィッシュです」
と下岡。湧き起こる拍手。いやほんとに待ちに待ったこちらとしては嬉しい一言。
楽しんでいってください的な言葉があったくらいであっさりMC終了。

続いてはのどかないなかのしずかなもぐら。不穏で鬱屈とした雰囲気が暴力性を感じさせる静かで激しいヘヴィなスローチューン。無表情に中空を見据えながら迫力を増す下岡のボーカルが圧倒的だった。
一転して今度は佐々木のアッパーチューン、世界のエンドロールで会場の雰囲気はガラリと変わり一気にヒートアップしていく。下岡曲佐々木曲が交互に、しかもこんなにカラーが真逆な曲を繋げるなんて、なかなか新鮮なセットリストだ。
とか思っていると続いてはTOWN!イントロのギターからもうどうしようもなくグッとくる。物語を紡ぐAメロBメロ、それを過ぎてのサビでの感情と演奏の爆発からはとにかくビリビリと痺れっぱなし。下岡が「サーモスタットいかれてんなぁ」を観客に唄わせようと手振りしていたのに驚いた。アレンジも微妙にダンサブルになっていて、以前よりは少し軽い気分でこの曲を演奏できているんだろうと思った。

ここでMC。
「初めて長袖着てライブやってみたんだけど、健ちゃんの大変さが分かったよ」
と早速あの派手な柄シャツを脱いだ下岡。
「夏だし、暑いとは思ったんだけど、どうしても自分のしゃれっ気に勝てなくて」
と下岡が言うと
「あのシャツいくらか知ってる?」
と会場に問いかける斉藤。知るわけがない会場。
「390円」
どよめき笑いが起こる会場。そして力強い下岡の一言
「審美眼を持って生きていきましょう」
で、今年に入ってからたくさん曲を作っているという話から、ここからは新曲を連続して聴かせる展開になっていくもよう。
まずは佐々木の新曲からスタート。

ABC(表記不明)はハッピーでダンサブルなポップチューン。うきうきするような陽性の雰囲気が新鮮だった。
曲が終わり、
「今の曲はABCという曲です」
と佐々木。
「昨日決まりました。昨日までは仮タイトルがジャクソン5でした」
と下岡。会場失笑。どっちにしても元ネタがバレバレだ。というか、思い返してみると曲もほとんどひねらずまんまだったような気が。
続いても佐々木曲のMY GENERATION(表記不明)。こちらは攻撃的に突っ走るロックチューンだけれどどこか蒼く切ない感じもあり。曲後半、メロディなしで
「未来は白紙で!僕らは自由だ!」
と何度か繰り返す展開にゾクッとした。佐々木は非常にモダンなベースを弾くベーシストであるのに、それとはまるで反対の泥臭く蒼いロック衝動も持ち合わせた人で、その混ざり具合がほんとにおもしろい。
続いては下岡の新曲披露へ。まずはエモーショナルなスローチューン、おとぎ話(表記不明)。子供のころに読み聞かせてもらったお話の裏側を知ってしまった、価値観が崩れ去った、そんな前提から語りだされ、美しいストーリーを求めるサビへと感情が高まっていく。歌詞が一節一節噛みしめるように唄われ、シンと静まり聴き入るフロア。
続いて、ベースとドラムの演奏に乗っかって語りだす下岡。90年代が自分に与えた影響は大きい、あのころは希望がないのが希望だった、あれから世界は変わって、今世の中は希望があるかのように言っているけれど、それは疑問で、90年代に別れを告げなきゃいけないと思った、というような感じのことを少したどたどしくも早口で話す。
そしてさよなら90's(表記不明)へ。今年に入って、何度かライブで披露されている曲だけれど、アレンジがところどころ変化していて、さらにラップのように矢つぎばやに90年代のカルチャーを並べていく新しいパートが加わって、曲前のMCとも相まって曲の持つメッセージの輪郭がよりくっきりと鮮やかになったように感じられた。

一連の「街」モノや「公平なワールド」で感じられたメッセージの発信者的スタンスが、下岡の中でさらに強まっているのが感じられた。ただ、街の傍観者だったころとは違い、おとぎ話に顕著なようにとても感情的で体温が感じられる生っぽさが新しい。
「公平なワールド」の怒りが下岡の表現者としての体温を上げて、その結果優しさや悲しさがくっきりと素直に出てくるようになったんじゃないだろうか。

陽性の蒼い衝動で突き進む佐々木と感傷的に真摯なメッセージを発信する下岡。なかなか対照的な方向にそれぞれ歩を進めている感じを受けた、どれも早く音源で聴いてみたくてたまらない贅沢な未発表の新曲連発パートはここで終了。

ここでMC。
「新曲、いかかでしたか?」
と斉藤が会場に問いかければ
「これはまだ氷山の一角でまだまだたくさんあるから」
と自信に溢れた下岡。もうほんとこのバンド、いつまでこの異常な成長期を続ける気だろう。
と、ここで下岡からいきなり爆弾発言が飛び出す。
「今年、僕らはいくつかのフェスに出るんですが、どこかのライブでは全部新曲をやろうと思ってます」
会場どよめき。
「え?」
と佐々木。
「あれ、お前に言ってなかったっけ? 俺ん中では決まってたんだけど」
というようなことを言う下岡。メンバーにも言わずいきなりステージでってどうなんだろう。というか、全曲新曲は絶対やめたほうがいいと思う。
「じゃあ、もうかなり山を越えたから、この辺でちょっと静かな曲を」
との下岡MCから次のパートへ。

そしてナイトライダーへ。深い夜のようなゆったりとしたグルーヴが心地いいミディアムチューン。かなり久々に聴く気がした。どうも今回のライブは「ROCK IS HARMONY」リリース前後以降のその辺の曲主体の構成からガラッとモードを変えているようだとこの辺でようやく気付く。
そして世界は幻へ。静かな歌い出しから衝動を爆発させるサビへの展開がドラマチックすぎるヘヴィなロックバラッド。光が溢れるような後半の開放感が素晴らしかった。
どんなに素晴らしい君を形容する言葉も
僕の口で 汚くなる 汚くなる 汚くなる 汚くなる

世界は幻
君フェチのオイラは
 
この辺でMC。
「今回、スペシャルとして何かカバーをやろうと思って考えたんだけど、健ちゃんがSUMMER TIME BLUESをやろうっていって、歌詞を書いてきたその紙があんまり面白かったんで、いまみんな持ってると思うんだけど」
と下岡。確かにこれは面白い。英詩を発音のままカタカナにしていて、抜粋すると「へ アイマ ノーリーズン フォサマ コラリゾ ハーロー」といった感じで汚い字で延々歌かれているわけで。そしてシメに「訳.ササキ」というオチがまた素晴らしい。

で、SUMMER TIME BLUES。開放的ないかにも夏なアッパーチューン。相当好きな曲なのか、佐々木のはしゃぎっぷりが凄まじく、思わず笑ってしまった。無駄にグルングルン腕をぶん回しすぎ。

そしてここで
「斉藤ー!州一郎――!」
という佐々木のシャウトから、斉藤のドラムソロが大炸裂。ドクンドクンと脈打つような高速ドラミングがめちゃくちゃにかっこいい。
そしてなだれ込むようにあのイントロが鳴る。
「ハローハローハロー。アナログフィッシュです」
という下岡の定番の挨拶からもう思わず顔がほころぶHelloだ。
ここが着火点、もう一気に歓喜が爆発するフロア、掲げられる腕。
決して超アッパーなサウンドではないスカスカのアンサンブルが絶妙に絡み合い、底なしにフロアの熱を上げていく、最強のライブチューンだ。
続いては確信なんかなくてもいいよ。こちらも文句なし、問答無用で衝動が炸裂する最強ロックチューン。
そして立て続けにスピード!熱っぽいギターサウンドが一気にドライブし、高まったフロアの熱をさらにさらに高みへ押し上げる。下岡と佐々木の接近戦も最高だった。

そして大きな盛り上がりを終え、本編ラストはまたまた佐々木の新曲バキュームが披露される。ミディアムスローな美しい1曲で、なんとなく「僕ったら」の感じを受け継いでいるような印象を受けた。
温かい盛り上がりの中、ライブ本編は終了。


熱いアンコールに答えて3人が再びステージへ!
というか、斉藤がTシャツを被って顔回りだけ出した状態でステージを飛び回ったり、佐々木がTシャツにネクタイだったり、もうなんなんだかという状態。
このあたりだったか、
「僕らはこの秋から新しい企画を始めます」
という下岡の宣言から、SIX PISTOLSが発表された。6ヶ月連続の自主企画ライブでワンマンも対バンもなんでもあり。最初の10月の対バンはなんとホフディランということも発表され、会場から大きな歓声が湧き起こっていた。
「ワン・ツー・シーロクロック!」
という斉藤のカウントから白黒ックへ。小気味いいリズムと朴訥としたメロディが、焦燥と衝動を爆発させるポップソング。4年前の楽曲だけれど。全然、全く、これっぽっちも色褪せない。
さらにマンテンローの伸びやかで柔らかなメロディがライブ終盤の大団円な雰囲気の中で、力強く会場を乗せていった。
ここでアンコール1回目は終了。

さらに勢いを増して熱い拍手のなか、3人が再びステージへ!
センターに斉藤が出てきて、
「ンバッ!」
というような奇声とともに手足をバッと広げるパフォーマンス。一体なんなのかと思っていると
「トトロ!」
とにっこり笑ってつぶやく斉藤。会場困惑笑。かわいすぎるだろう、それは。
そして本当のラストチューンはテキサス
静かに神妙に始まる前半からドラマチックな物語と狂おしいほどの願いの感情が少しずつ紡がれていく。世界と自分。理想と現実。多様な価値観。諦観と希望。

スペースシャトルが落ちた 
煙を出して
テキサスの原っぱのど真ん中
僕は夢を見ていた
そこから木の生える

new world is coming

結局君が優しいって事は
みんなのためになるよ

new world is coming
the world is changing

中盤「パッパパーパラッパー♪」と音源ではギターで響くファンファーレのようなパートを歌うアレンジになっていた。それは、とても効果的にこの曲の本質を魅せるいいリアレンジだったと思う。
下岡の最近の作風の発端はこの曲で、しかもこの曲が一番スケール大きくポップにそのメッセージを描けていたことを今さらに痛感させられた。
大きな大きな衝撃のなか、ここでナツフィッシュは全て終了。


もう冒頭の1曲だけでも全てを持ってかれるほど最高だったのに、レアな名曲を連発され、洋楽カバーもあり、充実と衝撃の新曲群も惜しみなく披露され、これ以上なく素晴らしいライブだった。

「白黒ック」を初めて聴いたとき、「Hello」を初めて聴いたとき、「BGM」を初めて聴いたとき、「TOWN」、「Living in the City」、「公平なワールド」等々、書き出したらきりがないほど彼らの楽曲はそれを初めて聴いたときに他のどのバンドも比べ物にならないくらいダイレクトに伝わるものがあり、激しい衝撃がある。
今回のライブの6曲も全てそれぞれに新鮮な驚きがあった。

そういえば「Living in the City」も「公平なワールド」も「magic」もやらなかったけれど、全くもって気にならなかったし、バンドにはまた新しい風が吹いているんだということが感じられるライブだった。ほんと新陳代謝が早過ぎるバンドだ。だから目が離せない。


しかし、こうなってくるとリリースのアナウンスがなかったことがとても気になります。曲作りはいつもどおり順調すぎるくらい順調なようだけど、レコーディングしてるという発言すらなかったわけで。
SIX PISTOLSも嬉しいし、名古屋・京都公演は行く気まんまんなのだけど、この半年が過ぎるまでワンマンやツアーは他でやらないのか、等々非常に気になります。
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by kngordinaries | 2007-07-25 01:48 | ライブ


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