カテゴリ:演劇( 2 )
マトリョーシカ
5月に観た「コンフィダント 絆」の感動が忘れられない。
というか、それは作品に対するものだけでなく、初めて演劇というものを生で観た、という感動も含まれているわけだけど。

というわけで、それからしばらく舞台の三谷作品の中でもDVD化がされているものをどれから観賞しようかとパンフレットを眺めては頭を悩ませていたわけだけど(どれもこれもおもしろそうすぎ)、結局はこの作品になった。

「マトリョーシカ」、松本幸四郎が立ち上げた劇団シアターナインスに三谷幸喜が書き下ろした1999年の作品。
コテコテのコメディーというよりはどこかシリアスなミステリっぽいジャケット等のアートワークや書かれていたあらすじが決め手になった。「古畑任三郎」「笑の大学」等で10代の多感な時期に何度も本気で罪と罰や生と死について考えさせられる衝撃を受けた例を挙げるまでもなく、彼の作品は深遠なテーマの筆力ももの凄いものがある。

タイトルはロシアの民芸品で入れ子式に構造を持った人形の名前で、これはこの作品が入れ子構造であることを示している。
そういえば、最近三谷幸喜はJALのCMでマトリョーシカを手にマイレージのシステムについて説明していた。彼のファンはにやりとしていたんじゃないだろうか。

物語は非常にシリアスに、しかしどこか単調で分かりやすいミステリ劇として始まる。
いくつかの違和感がありながらも話は進み、始まって30分も経たない内にクライマックスを向かえる。松本幸四郎、市川染五郎、二人の役者の力量の凄さもあり、圧倒的な緊迫感なのだけど、まさかこれで終わりではないだろう、いったいこの先どう展開するんだ、という疑問が頭の中を駆け巡る。少し笑いの要素がないこともないところがまた憎いところで、本当に大真面目でやられていたら単なる振りとして捉えられるのに、絶妙な曖昧さで前半が進む。

そして、物語が一つのピークを迎えてからは、舞台転換も時系列の変化も何一つないままに、ステージの空気は一変して一気にテンション高いコメディへと突入していく。
そのしてやられた感、仕掛けを作動させる鮮やかな手際が心地いい。そこまでの前振りを隅から隅まで使ってオチをつけていく快感。それでいてシリアスなミステリとしての伏線はさらに静かに張られていくという、もう天才的としか言いようのないプロット。

何よりも特筆したいのは9代目松本幸四郎の演技だ。
エンタテインメントとして楽しませながら、複雑に入り組んだ脚本をはっきりと観客にその細かなキャラクタの心の機微まで伝えながら、それでいて観客や若き青年役者を欺き、終幕ではリアルな感情の爆発を魅せる。その圧倒的な技量と独特の洒脱な雰囲気は、本当に唯一無二なものがあると思う。
正直に言って、そのほかの出演者である市川染五郎と松本紀保との力量の差がとても大きく感じられてしまった。決してその2人が上手くないというわけではないのだけど。

いや面白い。こんなにも面白いものを今まで観てなかったのが悔しいくらいに面白い。
しかもこの作品はここで使ったら二度は使いづらい新鮮なアイデアが幾つも盛り込まれているわけで、その出し惜しみなさも含めて、ほんとに凄い。

次の観劇は「 恐れを知らぬ川上音二郎一座」を狙ってますが、異様に豪華キャストだしチケット取れるものなのかなー。
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by kngordinaries | 2007-07-30 00:22 | 演劇
コンフィダント・絆 070513
ここ数年、なんとなーく漠然と、なにか演劇を観に行きたいものだなと思ってはいたのだけど、ずっと行動には移さずにいた。
ほとんど知識もないもので、なにか観たいとは言いつつも具体的にこれといったものはなく、わりと忙しい日々の中でそんな気持ちを忘れていることもしばしばであったし、たまに観たいと思う舞台の情報を知ってもそれはすでに公演後だったり、といった具合にタイミングを逃し続けていた。

ついにこの「コンフィダント・絆」を観ることになってから、それは楽しみにしていたのだけど、公演までのあいだになんとなく思い返していたら、なんで演劇を観に行って観たいと思い始めたのかを思い出した。
もう10年近く前のNHKのお正月特番にて、「笑の大学」と「巌流島」という2つの三谷幸喜作の演劇が地上波で放送され、高校生の僕はそれをVHSに録って繰り返し観たのだった。どちらも素晴らしいコメディだったけれど、特にたった2人の役者が場面展開もなしでたっぷり2時間絶妙な間で掛け合い、長ゼリフを発し、最後には深い深い感動とそれに負けない笑いが溢れるという「笑の大学」の奇跡のような光景は強烈だった。
こんな作品を生で目の前で観られたら、とそのとき思ったのだと思う。

そんなこんなではるばる大阪まで、近鉄特急に乗り込みプチ旅行気分で行ってまいりました。

※この先、公演中の舞台について、少々ネタバレを含む感想があります。ご注意ください。

しかし皮肉なものだな
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by kngordinaries | 2007-05-20 02:18 | 演劇