カテゴリ:本、雑誌、マンガ( 18 )
ROCKIN'ON JAPAN
今発売中の号で、この雑誌は20周年を迎えるらしい。
僕が読み始めたのは7,8年前なので、そのずっと前から続いていたようだ。

雑誌コンセプトは「シリアスなロックをシリアスに語る」。

今号は20周年記念号と銘打たれて、雑誌の軌跡を振り返る大特集を組んでいる。
創刊当時の表紙や記事も掲載されているのだけれど、この当時僕がそこそこの年齢だったとして、この雑誌を手に取るかどうか、微妙なくらいなんだかよく分からない濃厚な匂いを漂わせている。アングラだし、不良だし、とてもやばそうだ。
90年代辺りに入ってくると、その印象はガラッと変わる。
全くもって今の音楽シーンやこの雑誌の扱っているメンツと違和感がなく、デザイン的にも雰囲気的にも時代性は感じさせつつもほとんど地続きな印象。
で、90年代後半に入ってくると、もうそこは自分の聞いてきたバンドたちばかりがひしめいていて懐かしい気分で振り返ることができた。
2000年代なんてもう6年半も過ぎているのに、悲しいかな個人的には全部「今」のことに感じられる。2000年のヒット曲に対して懐かしいとは思えないのは我が年輪のなせる技としかいいようがない。

と、こんな感じで邦楽ロックの過去を一つの文脈の中で振り返る機会がもてたのは、ちょっと嬉しいことだった。そして、それができるメディアは世の中を見渡してもとりあえずこの雑誌以外にはみつからないのだから、その点は感謝しなくてはいけないとも思う。
今号によると90年代前半はロックにとってもこの雑誌にとっても苦しい時代だったようで、実際この雑誌と近いスタンスの雑誌たちは、この時期よりずっと後になって創刊されたものがほとんどだ。

メディアはメディアでしかないけれど、その産業をしっかりと見つめるメディアが一つもなかったら、少なくともその産業は商業的に大きな成功は得られないだろうし、エンタテインメントの場合、それは全ての消費者にとっても不幸だろう。

とかいう俯瞰的な感想もあるのだけど、それとは別に今号もなかなかおもしろかった。
20周年特集はほんとにカタログ的意味合いしか持たず、期待したほどはおもしろくなかったけれど、それ以外の記事が充実していた。
アジカンのツアー初日レポはセットリストも当然ばらせない中で、ある1シーンのみにフォーカスしていて、それが僕が「ファンクラブ」を聴いて想像するライブ像と合致していて名古屋でのライブがとても楽しみになった。
フルカワミキのデビュー記事も期待が高まったし、RADWIMPSやチャットモンチー、planeといったニューカマーもロングインタビューで読み応えあり。今号から復帰の編集長山崎さんのインタビューは読み始めればすぐそれと分かるくらい語り口が独特だし。
あとライブレポのコーナーではなくて、ニュースを扱う「scene」というページでアナログフィッシュのジョントポールライブが紹介されてたのも個人的には嬉しかった。兵庫さん復帰に感謝。


あとこの雑誌について語るなら一つ忘れてはいけないものがある。
TEAM紅卍による「ニャンゲン失格」(今号から「ニャーと言える日本」より改題)。これ読みたさが他の同系の音楽専門誌よりこの雑誌を好きな大きな要因ですから。
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by kngordinaries | 2006-05-21 21:44 | 本、雑誌、マンガ
ONE PIECE 尾田栄一郎
“ひとつなぎの大秘宝”を巡る海洋冒険ロマン!!


毎度のことながら、この少年漫画には熱くさせられる。

言うまでもないことだけれど、「ONE PIECE」は優れて現代的な少年漫画の王道だ。
作品の善し悪しの優劣の付け方というのは難しくて、なかなかこうと決められるものじゃないけれど、少年漫画の世界というのは分かりやすくて、とにかく多くの少年達に支持されることで決まってしまう。
だからその作品を分析すると、その時代の社会が見えるようになっている。今、読み手はどんな物語を欲しがっているか、どんな世界に連れていって欲しいのか。

この作品が連載されている週刊少年ジャンプは「友情」「努力」「勝利」というキャッチフレーズを使っている。どこかの評論で読んだけれど、この作品や最近の連載作品には「友情」と「勝利」しかないらしい。
確かにこの作品に出てくるキャラクタたちは最初から強いものは強い。弱いものは弱いままだ。武器が改良されたり、頭を使ったテクニックで進歩したりはするけれど。

「勝利」についても実は微妙で、昔の少年漫画にあったような、バトルトーナメントを組んで、純粋に一番強い奴を決めようと延々バトル、なんていう展開はこの作品にはこの先もきっと出てこないだろう。それはもう時代が望んでいない世界観なのだから。

では「友情」が一番のテーマなのか、というと、そうなのだ。「仲間」と言い換えてもいい。「同志」と言い換えてもいい。そこにとにかく重点を置いている。
主人公ルフィがたった一人で海賊を始め、志を同じくする仲間を得て冒険を続けていく、もの凄くシンプルな構図に落とし込めばこの壮大な海洋冒険ロマンはそういう物語だ。

とにかく脇目もふらずそのテーマは深化を続けている。「仲間」とはなにか。
この物語のなかでは「仲間」は苦楽も生死も共にするような究極の共同体「海賊」だ。それは航海士や船医やコックといった別々の役割を分担し、生活を共にする存在でもある。それは「世界政府」という秩序に対する「悪」党でもある。
そしていまは長い歴史の中で受け継がれる同じ意志を持つもの、という意味まで含んで物語は展開している。

最新巻の41巻では、「仲間」として迎え入れられながら、それを拒み離脱し自分の命が危険にさらされても「仲間」の助けを拒み続けるキャラクタ、考古学者ニコ・ロビンの謎に包まれた過去が明らかになる。
その深い闇と、それに相対する主人公ルフィのシンプルな解答に、大きなダイナミズムとカタルシスを感じた。少年漫画の主人公はいつだってこうでなければいけない。

物語もついに佳境に入ってきたような気がする。
歴史の闇の一部も明かされ始め、もう一つの伏線Dの流れもそこに絡んでいくと考えればおぼろげにこの作品世界の全体像が見えてくるような気がする。
それは何百年にも及ぶ同じ志を持ったものに連綿と受け継がれる意思の物語であるし、少年漫画として優れたロマンチシズムに彩られた最高の冒険ドラマでもあるんだろう。

41巻名セリフ集(ネタバレあり)
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by kngordinaries | 2006-04-14 07:37 | 本、雑誌、マンガ
DEATH NOTE 原作/大場つぐみ 漫画/小畑健
このノートに名前を書かれた人間は死ぬ…。死神 リュークが人間界に落とした一冊のノート「DEATH NOTE」。ここから、二人の選ばれし者「夜神月」と「L」の壮絶な戦いが始まる!! かつてないスリルとサスペンス!!


微妙な駆け引きがあって、一筋縄では勝負がつかなくて、ある一つの些細な動きによって情勢が一変して、視点を変えてみるとまた違う見方が生まれて・・・・というような闘いを傍から見ることほどおもしろいことはない。

将棋やチェスなんかのテーブルゲームもつまりそういうところがおもしろいわけで、しかもその勝負の裏にそれぞれの欲望や野望や信念が透けて見えたりすると、それはこのうえなく感情的な熱さと機械的な冷たさを同居させた何ともいえない物語を産み出してくれる。

天才的頭脳を持つ高校生夜神月がDEATH NOTEを手にして凶悪な犯罪者を次々に殺害し、理想的な社会を実現しようという野望を抱く。それを阻止しようとする世界一の探偵「L」。その複雑なパズルのような頭脳戦とチキンレースのような心理戦が様々に様相を変えながら延々と繰り返される。

このやりとり、退屈な人には退屈だろう。しかしおもしろい人にはめちゃくちゃにおもしろい。もちろん思いっきりファンタジーなので、ルールは厳密ではないようにも感じられるけれど。そこも含めてたまらない人にはたまらないツボをつく闘い。

もちろん犯罪者であれば殺してもいいのか、そういう存在は許されるのか、というシリアスなテーマもこの物語の根幹にはある。でもいまのところそれについての深い言及は作品内ではされていないし、その解答はもちろん一つの答えなんて出ないものだ。

この作品全体のスピード感はかなり独特だと思った。
展開が普通の漫画の3倍速くらい早い。とにかくめまぐるしく状況が変化し、常に何かの仕掛けが作動しているような状況。普通これだけのアイデアがあったらもう1巻くらい引っ張れるというような大胆にして衝撃の展開が出し惜しみなく、特別大仰にもせず淡々と連発されていく。ずっとオフビート。
原作と漫画が別人だからそれぞれの仕事に没頭できるメリットはあるだろうけど、それにしても話の密度が濃い。作画も完成度が高い。

しかし基本的な構図はわりとシンプルなものだし、すでに夜神月 VS Lという図式も微妙に崩れているわけで、この先あまり長く物語を展開させ続けるのが得策だとは思えない。今はこのスピーディーで緊張感溢れるサスペンスにいったいどういうオチが用意されているのか、そこに一番興味がある。
もちろんこれを延々続けることで最終的に大きなテーマ性を提示するのかもしれないし、すでに気付かれずに仕込まれている大仕掛けでルールを大幅に改編してさらにひと悶着という方向に行くのかもしれない。
このあまりに複雑で読めないこの先の展開を考えてもきりがないけど、考えたくなる魅力がある。


今まで漫画作品でいうと「賭博黙示録カイジ」という作品の1~5巻で行われる賭博ゲーム「限定ジャンケン」が一番おもしろいと思っていたけど、「DEATH NOTE」も負けてない。

個人的にはもうちょっとだけキャラクタやセリフに魅力(個性)があると最高なんだけど。ちょっと類型的。
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by kngordinaries | 2006-02-26 23:39 | 本、雑誌、マンガ
三谷幸喜のありふれた生活 4 冷や汗の向こう側 三谷幸喜
えーと、揃ってたんだっけ、と本棚を見やると1だけなかった。なんだか少し気持ちが悪い。

朝日新聞の人気連載エッセイをまとめた「三谷幸喜のありふれた生活」シリーズの第4弾。
毎回毎回、次はいつ出るかなー、と楽しみにしていて、出たらすぐに買って、そしてすぐに読みきってしまう。内容が薄いから、ではなくておもしろいからです。

今回は「冷や汗の向こう側」との副題どおりハプニングが多いけれど(毎回のことだけど)、第3弾と同じく大河ドラマ「新撰組」に関わることが多い。おもしろおかしい日常を綴る中でのそこにかける筆者の想いの熱さは相当なもので、この作品の台本・キャラクタ・役者・現場・スタッフに対する愛情のこもった文章が、とても温かい。1年に渡るドラマなので台本執筆は1年ちょっとかかったのかと思っていたら2年2ヶ月だという。売れっ子脚本家がそれだけの歳月を捧げた作品なのだ。
特に芹沢鴨のキャラクタについて語っている回と、ラストシーンを撮りおえたあとの香取慎吾のエピソードは、心に残るものがあった。

しかしながら三谷幸喜はおもしろい人だ。
いまや世の中のほとんどの人が彼を出たがりな脚本家であり、最近は映画監督である、ということを知っている。映画のプロモーションのためにしては張り切りすぎなバラエティ出演もこのところスベリ知らずといった感じでこなれてきているわけで。
そこで興味を持った人はこのエッセイをぜひ読んでみて欲しい。ここにはその印象とまったく同じ人がいる。小心者で気弱そうなのに出たがりでおもしろいことを言い、じゃっかん皮肉屋。なんてそのままなんだ、と驚くくらい。自らの生活を自らが描くエッセイで、傍から見た印象と変わらない人がそこにいるように書くことは、実は凄く難しいことだろう。

三谷家の内情も毎回のお馴染みになっているけれど、もっと読みたい部分でもある。
女優の妻。飼い猫のおとっつあんとオシマンベ。ラブラドールのとび。捨て猫のホイ。今回はかなり出番少なめだったけれど、相変わらず微笑ましい関係性が保たれていて、一度でいいからその実際の光景を見てみたい。でも友人も家に上げない三谷家のことだ。それは一生叶わない夢・・・。

このエッセイを読んでいて浮んでくる言葉は「好きこそものの上手なれ」。素晴らしいコメディ脚本を次々と筆者が産み出せるのは、誰よりもコメディを愛しているからに他ならない。ビリー・ワイルダーやキューブリックに対する畏敬の念や、坂上二郎やミヤコ蝶々、小堺一機といった喜劇人への羨望の眼差しは自らの仕事に対するモチベーションとなって常に彼を掻き立てている。
もっとおもしろいものを。今より素晴らしいものを。
これだけのキャリアがあってこれだけストイックな姿勢を当たり前のものとして平熱で保っていることが、ほんとに凄いと思う。
そしてその彼の熱が高ければ高いほど世の中の人の笑顔は増加の一途を辿るわけで、なんて素敵なサイクルだろう。

次巻ではいよいよ「THE 有頂天ホテル」の監督業の日々が待っているようでますます楽しみ。最近のご本人の発言では今までより早いタームで監督業をやっていく意向があるようなのでそれもますます楽しみ。
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by kngordinaries | 2006-02-10 01:32 | 本、雑誌、マンガ
夕凪の街 桜の国  こうの史代
広島のある日本のあるこの世界を
愛するすべての人へ

本編「夕凪の街」が始まる前の一文ですぐに分かるように、これはヒロシマ、そして原爆にまつわる作品だ。

原爆から10年、大きな傷跡が残りながらも町としての姿を取りもどした広島の街で暮らす皆実という女性の恋と生活を描いた「夕凪の街」。それから40~50年後に生きる七波という女性を中心とした家族の生活を描いた「桜の国(一)」「桜の国(二)」。
という3つのそれぞれに関連しあう連作短編で構成された100ページに満たないマンガ作品だ。

とてもソフトなペンタッチと穏やかで簡素な雰囲気を持った絵柄が、リアルな広島弁で普通に生活する人々や街並みやそこに薫る風の匂いが伝わってくるような心地よさを感じさせる。そこには現実の生活の息吹が感じられ、そこで波打っている人々の感情が、なにかの分厚い膜に包まれながらうごめいている。
ぜんたい この街の人は 不自然だ
誰もあのことを言わない いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われたということ 
思われたのに生き延びているということ

そしていちばん怖いのは あれ以来 本当にそう思われても仕方のない
人間に自分がなってしまったことに 自分で時々気付いてしまうことだ

「夕凪の街」の主人公皆実は広島に暮らす普通の女性だ。当然、被爆者である。貧しくも普通に仕事をしながら生き残った母親と自分の生活を支え、疎開先の弟に会いに行くための倹約を怠らない。
そんな一人の普通の女性に残る傷跡が淡々と描写される。ひたむきに生活し、さわやかな恋をする彼女の人生のほぼ全てを覆う闇は、一人の女性としての描写が等身大であるだけにその驚くほどの巨大さに圧倒されてしまう。

「桜の国」の主人公七波は、ほぼ現代と思われる時代の東京に暮らすこれまた普通の女性だ。「桜の国(一)」では、ぜんそくで入院している弟を気づかってちょっとした事件を起こすおてんばでやんちゃなで少女時代の話が、「桜の国(二)」では、どうもボケてきたらしい父親の不審な行動を訝り尾行するなかで、自分の過去やルーツと向き合うことになる20代後半の話が、語られる。
この「桜の国」は、まさに「いまここ」で暮らしている人たちに深く深く残る悲しみや傷跡を、大げさでも控えめでもなく極めてフラットに描写している。緻密な構成を練り上げ、劇的に描きたくなる題材を務めて冷静に調理したことで、この作品は今までのいろんなマンガで出会ったことのない感情や情感が表現され、多くの人の心にズシリと残る力強さを持ったのだと思う。

そしてその物語は、生命の連なりや刻まれる時間の流れといった普遍的なテーマに帰結していく。真摯に一人の人間をみつめると全ての真実が透けて見えてくる。
優しすぎる視点で深い悲しさを表現しえた稀有な良作。もちろんヒロシマや原爆といった事実に自分なりに向き合う際のヒントにもなる作品。



満ち足りて幸せ
ほんとに幸せいっぱいさ それでも
満ち足りない心をうめる必要がなさそうな気配だ 困るな

涙を時代で拭えだって
そんな馬鹿な 置いてゆくなよ
                              /ロシアのルーレット



大国の英雄や 戦火の少女
それぞれ重さの同じ
尊ぶべき 命だから

精悍な顔つきで 構えた銃は
他でもなく 僕らの心に
突きつけられてる

深く深く 刻まれた
あの傷のように
                              /Triangle




いつ出会い、いつ別れ、いつ笑い合えるかって、
知らないし、見えない。
そこが行くとこなら、
出会い、別れ、笑い合えるまで、
もういないあなたを明日へと送るから。

逢いたいならば声に出して、逢う場所は、心にして。
みんな今、未来に手ぇ伸ばすぜ。
あなたは、ただ、心に居て・・・。
                              /やさしいライオン




あー教えて下さいよ 僕らの近未来を
緑の地球は どうなるの
なにかが爆発 するかもしれないよ
愛と平和だけ 捨てないでね
あー鳥が鳴く あー花が咲く
                              /近未来

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by kngordinaries | 2006-01-21 17:31 | 本、雑誌、マンガ
LuckyRaccoon  森田恭子
でもね、私はインタビュアーだから。答えてる場合でもなくて。最後のBREaTHという今にも破けそうなバックを抱えて、愛するボーカリストたちの言葉を受け取りに行かなくちゃ。あなたにとって、歌とは何ですか――。
愚問といえば愚問。けれど愚問こそ本当の答えを導き出す道具なのだと、誰が言ったわけでもなく、私が思うことなのだけれど。
真実は誰にもわからない。疑った時点でそれは既に真実じゃなくなる。すなわち、疑わなければ、それは真実となり得る。信頼を寄せてやまないボーカリストたちの、その愚問に対する答えは、私にとって真実だった。

僕は言葉・文章が好きで批評が好きで情報が好きで音楽が好きなので、音楽雑誌を読むのが普通の人より数十倍好きです。立ち読むものも含めれば相当数の雑誌を目にしてますが、その中でも雑誌そのものの雰囲気から丸ごと好きなものがいくつかあります。

その中の2つが(2年前までの)「BREaTH」と「LuckyRaccoon」。どちらも森田恭子さんという編集者というかインタビュアーの方が作ったものです。冒頭の文章は彼女が自分で立ち上げた雑誌「BREaTH」を立ち去る前の最後の「BREaTH」で、巻頭の桜井和寿インタビューの後書きで書いた文章の一部です。「歌う人」というキーワードでボーカリストインタビュー誌というとても個性的なコンセプトで作った雑誌が、季刊から隔月刊、月刊となって行くという状況の中で彼女はそこを去り、半年後に判型からデザインから全てが本人好みな雑誌「LuckyRaccoon」を作り始めました。

もともと「BREaTH」のころから大好きな文章を書く方だったので、「LackyRaccoon」も読むようになりましたが、この一連の流れから森田恭子という人の生き方のかっこよさにもほれ込みました。人気雑誌をやめて個人誌をやること自体ではなく、その雑誌の中身がほんとに自分の理想を追い求めたものなんだ、という熱さを感じるものだったからです。

といっても彼女の文章もインタビューも熱さは微塵もなく、どちらかというと柔らかく緩く軽いものです。意味性の薄い雰囲気のいい言葉の並びからほのかに浮んでくる、圧倒的な本当のこと、大切な日常のこと、何気なく読んでいると自分でもびっくりするくらいにグッときてしまいます。

10月25日に発売されたトータス松本表紙の「LuckyRaccoon」vol.13でこの雑誌は2周年とのこと。巻頭のトータス松本のインタビューではLR名物ともいえる「リリースとか全然関係ない時期の音楽すら関係ないインタビューというか雑談」が炸裂しているのですが、これによって引き出される表現者の素顔がほんと凄い。トータスからは「10年目の『バンザイ』」をこれから書きたい、というスクープな発言も飛び出してます。さらに倶知安ロックフェスの裏側全てを明かしたあまりにも感動的なレポート。トータスに続いて雑談から始まりこれから作る曲のビジョンを語った和田唱インタビュー等々、連載ものも含めて節目の号にして集大成のような充実した内容になってます。

そして「おめでとうって言わないで」と題したLR2周年に関しての森田さんの文章がまた素晴らしかった。キヨシローの35周年やスパゴーの15周年などいろいろ他の記念日を迎えた方々について書いた後・・・
で、あれ? LRの番? ちがうちがう、2周年で祝ってたら、6周年とか、11周年とか、17周年とか、32周年とか、なんだっておめでたくなっちゃうじゃないのー。毎日が記念日? そーゆーのきらーい。いや、そうでもないけど。って取り乱してますけど。(中略)
そう喜んでもいられない、そんな場合じゃない、もっと気を引き締めていこうって決意の中、挨拶代わりの「おめでとう」を言われちゃわないうちに、こちらから言わせてください。どうもありがとう。これからもよろしくお願い致します。

今後のLRにますます期待してます。

あとこれはごくごく個人的になんですが、森田さんの文章の魅力は奥田民生の歌詞の魅力と凄く重なる部分があると思ったり、してます。全ては言わないあたりが。
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by kngordinaries | 2005-11-02 23:46 | 本、雑誌、マンガ
働きマン 安野モヨコ
僕らはみんな
働くために生きている!

仕事が楽しければ、
人生は楽園だ!

うーん。難しい。
ひさびさにとてもおもしろい漫画に出会ったのでここに書いておきたいと思ったのが、もう10日くらい前。なぜだかどうにもこうにも筆が進まず、日々が過ぎた。
仕事が忙しかったというのもあるし。

そう、僕は普通に毎日働いている。今日も深夜のご帰宅だった。それがどうとか言うわけではなく、それだけ自分にとって「働く」ということが、もの凄く日常だということだ。

この作品「働きマン」は読んで字のごとく働く人について書いた漫画だ。
だからそれについて書こうと思うとき、社会人生活3年目の自分はふと立ち止まってしまう。

「働く」ってどういうことだ?答えのでない迷路に迷い込む。

「オレは『仕事しかない人生だった』 そんなふうに思って死ぬのはごめんですね」

それもある それも多分あって 確かにそのとおり でも

「あたしは仕事したな――って思って 死にたい」

前者は22歳のマイペースな新人編集者 田中邦男、後者は主人公であり28歳の働きマン・編集者 松方弘子、連載第1話の最終ページで、これだ。
正直、いまの自分にはどっちの意見だとか答えられない。答えたくないのか、いやどうだろ。はー。難しい。

あやまりマン、振り向きマン、根に持ちマン、報われマン、作品に登場するどれも僕自身とは似ても似つかないそれぞれのスタンスで働く人たち。でも同じような気持ち、似たような境遇、ちょっとだけかすってる体験は自分にもある。その共感の波は波長があうと、とんでもなく心にくる。
逃げマンにも共感するし、こだわりマンに憧れる。働きマンは素直にかっこいいと思う。

読んでる人にしか分からない感想で申し訳ない。

まだまだこれからだな、と凄く思う今日このごろ。明日も働きます。
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by kngordinaries | 2005-09-22 02:23 | 本、雑誌、マンガ
吉井和哉のマル秘おセンチ日記
イエローモンキー本?
ロビン本?
いえ、これは
吉井和哉本です

このエッセイは当時イエローモンキーのボーカルだった吉井和哉が92年秋から96年春までの3年余にわたって雑誌連載していた文章を単行本化したものだ。
帯にもあるようにイエローモンキーというバンドがほとんど無名だった時代から堂々たる「死んだら新聞に載るようなロック・スター」になっていく過程で綴られている。

これをROCK IN JAPANのロッキング・オン ライブラリで発見して思わず購入しました。高校の頃あまりお金がなく、ほとんど全部立ち読みしていたのだけどやっぱり手元に欲しくなってしまったので。

ここには吉井和哉の多くの構成要素が密に詰め込まれている。トレードマークであった寒い親父ギャグ、無駄にエロ過ぎる言葉使い、洋楽ロックバカ、イエローモンキー、生活にドラマを見出すロマン、社会問題への関心、父親、自問自答、涙、闘争心、等々、溢れる創作意欲や一つ一つのライブ・レコーディングを命懸けでこなす日々の緊張感が、文章を小気味よく、ときにサイケデリックにドライブさせ、そこから一人の人間の多面的な魅力を放出している。

毎年恒例のイエローモンキー杯ボーリング大会での下手すぎる吉井の心のうちを描きながら投げられる渾身の1投の行方なんてそこらの映画のクライマックスよりずっと気になるし、連載している雑誌ロッキング・オン ジャパンをその連載でバッシングした妙な本気さは鳥肌がたつほど微笑ましい。吉井は歌詞だけとっても恐ろしくぶっ飛んだ才能があるわけだけど、それはかなり初期からこういった文章でも十二分に発揮されていたわけだ。

iPod miniを聴きながら夢中になって読みふけった。かかっているのは「MOTHER OF ALL THE BEST」のDISC-1。RIJ直後だったこともあって頭の中に浮んできたのは、ロックフェスで演奏するイエローモンキーの姿だった。フェスで彼らのライブを観られたら最高だろうな、と何の気なしに思い、想像を巡らせてしまったのだ。

しばらくしてどうしようもなく苦しくなった。悲しくもなった。

どうしていないんだろう。
どうしていまこの楽曲はデジタルでしか鳴らないんだろう。
悔しいよ。だってこんなバンド他にいないじゃないか。
泥臭くかっこいいホンモノのロックスターだったのに。
ダークでまっすぐで血まみれのキラキラ輝くバンドだったのに。
「JAM」がこれから一切鳴らなくていいわけない。
「楽園」が響き渡るライブハウスがないなんて嘘だろ。
代わりなんていない。似た存在なんてない。
かけがえがない大切で重要なロックが歩みをとめてしまうなんて、嘘だ。

上に書いた何倍ものもやもやとして鬱屈した想いが溢れ出た。どこかでしっかりとせきとめていたはずだったけれど、ついうっかりといった調子でぽろぽろと。

やっぱりイエローモンキーは特別だった。それは認めなきゃいかんと思った次第。

とにかくエッセイとしてめちゃくちゃおもしろいです、この本。音楽ともバンドとも切り離してみてもおもしろエッセイとしてレベル高い。今も吉井はオフィシャルで月一コラムを書いているけど、文筆業もたまには希望したい。
やっぱりホンモノは考えていることも日常で起こったことへの解釈も、一味違うという話。

もちろん吉井和哉の新譜も切実に待ってます。
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by kngordinaries | 2005-08-24 02:22 | 本、雑誌、マンガ
奥田民生ショウ2
まず、表紙を開いて目に飛び込んできたのは漫画家江口寿史氏によるOT道という漫画だった。続いてページをめくると見事に美味しそうなお肉のドアップ写真。その後、数ページに渡り焼肉を楽しむOTの写真が続き、やっとタイトル。
そしてその次のページにOTの筆ペンによるメッセージが記されている。

あついおふろはさける OT

なんだかなー。

といった感じで始まった本書は音楽ライター宇都宮美穂さんとカメラマン三浦治さんによる奥田民生のアーティストブックで、前作は13年前に出版されている。そちらは残念ながら読んだことがないけれど、特に内容に前回とのつながりはないらしく、十分楽しめた。

基本は宇都宮さんによる音楽誌PATIPATIの過去のインタビューと新収録のインタビュー、三浦さんによる写真とOTによる写真のよう。そのあいだに小林聡美×小泉今日子の対談だったり、那須正幹や斎藤孝とOTとの対談、さらには奥田民生少年の小学校の作文まで、おそろしく充実した企画がたくさんつまっている。全336ページ。

というわけであまりに大ボリュームなので、僕の極個人的な感想を箇条書きにて、つらつらと述べたいと思います。ほぼページ順。

・初めて宇都宮美穂さんのビジュアルを観た気がする。
・OTのスポーツを観る目の鋭さは凄いと思う。感覚的なんだけど的確っぽい分析。お笑い論も納得。
・魚の群れがなぜ統率とれているのかという話、こういう発想が大好きです。
「実はすごい練習とかしてたりなんかしたらすごいよね。見てないところで、夜中。”マグロに食われないためにはよー”みたいな。ハチローずれてるぞ。おまえいつもずれてるぞー”(笑)」(32ページ)
・OT着用のミッキーマウスのジャージ、ちょっと欲しい。
・フジファブリックの撮影は三浦さんと一緒にやってたのかー。この本のためだけ?
・意外と(非常に失礼)、民生作の写真がいい。ダーホソも溶け込んでるし。
・小学校の担任の先生の話は超貴重。天才は子供のころから一味違ったというお話。で、かわいかったというお話。
・本人の作文も、賢さ、素直さ、展開の上手さ、そしていきなりの結び、と証言を裏付けてる。
・10.30の思い出話。えっ次は宮島の浮いてるところでやるのか!行く行く(気が早い)!
・で、10月はタバコとお酒を多少摂生してたのかー。OTなりの自己管理ですか。
・市民球場の所長さんの話はいつもぐっとくる。
・那須正幹さんって!!この対談、事前に告知あったっけ。ズッコケ世代なのでほんとびっくり。広島出身だったのかー。対談から感じた印象は、いいおじいちゃん。
・compレコーディングの写真にヤングが見当たらない・・・。ちょっと残念。
・斎藤孝さん、「静岡の男と広島の男っていうのはほぼ対極」ってマジですか(静岡出身)。でも対談読むかぎり斎藤さん、めちゃくちゃOTと意気投合してるし。
・この辺(177ページ)から安齋肇さんのパラパラ漫画が始まってますね。宮部みゆきの小説にも昔似たような企画があったけど、なんかパラパラって夢がある。
・にしても斎藤孝って人はおもしろい。
・過去インタビューおもしろすぎ。
テレビに出演してる自分に対して
「あれは僕じゃないですよね? あれはただの緊張少年と呼んでいいんじゃないかと」
ソロ初ツアーは外に開いてなかったという指摘に対して
「つまり、閉じティブ?」
等々、OT造語がたくさん炸裂。
・インタビュー⑤「なんのために、愛のために」はこの本で語られていることがうまいこと集約されていつつ、笑えるインタビューになっていてとてもよかった。
・あとがきでOTの長文(というほどでもないけど)をひさびさに読んだ。
おそらく小学校の担任の話を読んで
「どうだい、今の俺しか知らない人はこれでやっとわかったろ。俺はオシャレでかわいいのだ。ホントは。今でもときどーきちらっと言われたりするし。」
ときどき言われるんだ・・・。

といった感じ。要はめちゃくちゃおもしろい本だった。最後にしめのOTの書を。

こまめに血圧をはかろう OT

・・・なんていうか、年輪を感じます。
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by kngordinaries | 2005-05-23 00:46 | 本、雑誌、マンガ
ファイブ 平山譲
バスケットボールの話。本当にあった話。

この本を貸してくれた友人から聞いていた事前情報はこれだけ。ちゃんとブックカバーもついていたので表紙も隠れている。1ページ目を開くまでにここまで情報少なく読み始めたのは久しぶりだった。

いきなりバスケの試合中、それも終盤から文章は始まった。小説のような映画のような普通のドキュメンタリーとはおもむきの違う語り口にさっそく話に引き込まれてしまった。

繰り広げられている試合は、日本のJBLというリーグの決勝戦だ。プロ化していない企業スポーツであるバスケットボールの年に一度の日本一決定戦は、世間的には大した盛り上がりをみせていない様子。僕もJBLなんて存在を知っている程度なので、その人気のなさはよく分かる。決勝戦を戦う2チームのうち、片方はこの試合を最後に消滅する。母体である企業本体の不況にによる経営不振から、利益を生まない部活動はまっさきに廃部にさせられるのだ。
この本で主人公的ポジションにいるのがこのチームのキャプテン佐古賢一。「ミスターバスケットボール」との愛称をもつ日本代表経験もある名PGだ。すでにベテランの域である32歳の名選手は、がむしゃらに奮闘し、最後の1投に全てをかけて3ポイントを放った――。

32歳のバスケット選手はチームの廃部とともに、引退の危機に陥った。本気でバスケットをやってやり抜いて燃え尽きるまでやった、とは到底いえない幕切れはどれだけ歯がゆくてやるせない思いだろう。鬱屈とした状況とあきらめきれない想いを抱えて川辺でぼうっとしているところは痛々しかった。

結局、佐古はアイシンというチームに移籍することになった。数年前までは弱小チームだったこのチームは佐古のようにリストラにあったベテランの名選手を獲得し、成績をあげてきたチームだった。
そのチームのコーチや部長、選手の一人一人にドラマがある。若いとはけしていえない大人たちがバスケットボールにかぎりない情熱を捧げる姿がとても力強く描かれている。興行として成功していないスポーツに人生を賭けることのリスクは計り知れないものがあると思う。

今NBA挑戦中の人気者、田臥勇太選手もところどころで登場。そのまぶしさとリストラチームの泥臭さの対比がなんともいえない。「二十二歳の田臥が『明日の選手』であるなら、三十二歳の佐古は『今日がすべての選手』であった」、なんて描写も印象的。

リストラチーム、アイシンの活躍だけ描かれるのではなく、その周辺の多くの人たちの関係性もつぶさに描かれていて、後半にそれが冒頭の決勝戦から1年後にアイシンが上り詰める決勝戦で1つの大きな物語としてまとまっていく構成は、どんな作り物のお話よりも感動的でできすぎている。
特に佐古と同様に廃部によって多くを失った小浜監督70歳のそこからの這い上がり方のパワフルなことといったらもう、痛快だった。

僕あたりの世代でいえば、バスケットボールといえばイコールそれはスラムダンクだ。もちろん漫画の。ミッチーが安西先生に「バスケがしたいです」といったとき日本中の少年ジャンプを読んでいた中高生が流した涙はどれほどかわからないし、僕も例外ではなかったけれど、この本も負けてなかった。

悲しいとか涙ぐましいとかじゃなくてこのうえなく爽快な涙という意味でも、いい勝負。
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by kngordinaries | 2005-05-18 00:55 | 本、雑誌、マンガ