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GRAPEVINE
テレビの歌番組が好きで、小さいころからよく観ていた。
毎週毎週、いままでに何百の楽曲をパフォーマンスを観たか知れない。その中でもいくつか強烈な記憶として残っているものがある。
「スロウ」もその一つだ。
覚えている感覚は吸い込まれてしまいそうなグルーブと息苦しいまでの切迫感だ。テレビのチャンネルを変えたくなるくらい苦しいけど、画面に観入り、サウンドに聞き入ってしまっていたのを覚えている。このときはバンド名も曲も知らなかった。

「ふれてイエーいよう! 全ては大成功! 君が笑った 明日は晴れ エヴリデイのブルーズ 消えていかねえぞ 恋ならでは そして・・・ 終わらねえ」
GRAPEVINEはバンドとして一度大きく化けた。それの象徴は「ふれていたい」だろう。ここには演奏のダイナミズムと爽快といってもいい空気感、そしてシンプルで大胆な言葉と歌唱がある。その後のGRAPEVINEのはじまりを感じさせる傑作だ。その直後に発表した「Our Song」は「スロウ」と同じミディアムバラードだが、その印象はまるで違う。世界は相変わらずどうしようもなく混沌としているが、それを見ている視線はより冷静で思考はクリア、そんな雰囲気だ。

グルーヴィな演奏と多彩なロックが味わえる「Circulator」とよりロックバンドの表現領域を広げた「another sky」。サウンド面は劇的に変化しつつ、世界観は緩やかに変容と揺れ戻しを繰り返し、よりはっきり世界を掴んでいっている。初めはなすすべない狂おしさのみだった世界。それを受け入れたり、ただ眺めたり、あざ笑ったりしながら、そこにいる。それは誰もが持つ運命との対峙のしかたになにか確信を与えるものだ。

そしてそこまで深遠な哲学めいた表現を得たバンドは「イデアの水槽」で完全体となった。それは激情が溢れる狂おしくて熱いロックアルバムだった。通低音としてある悲しい世界をベースにそれでも怒れるし笑えるし泣けるし幸せを感じられる。これまでシニカルだった表現もユーモアに変わったような印象。

GRAPEVINEが熱く支持され続けるのはいつでも何かと闘ってきたからだ。分かりやすいネガティブや、それに反発するようにむやみに明るいポジティブ、そんな極端なポップが人気を博しても安易にそこに行かず、ネガでもポジでもないリアルを求め続けた。その信頼がある。

そして今のGRAPEVINEはもうそこを抜け、独自のスタンスを得たように思う。
フラットで穏やかなミディアムロックが5曲入ったミニアルバム「Everyman,everywhere」が今日(2004年11月17日)発売された。新作としては「BREAKTHROUGH」以来のアクションだ。気持ちのいいロックが鳴らされている。

「これから ぼくらは繰り返してく 定まらない姿勢で何かに立ち向かう様 一層泳げ」
by kngordinaries | 2004-11-17 01:31 | 音楽


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