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20世紀少年 浦沢直樹
夜のガラスに俺が映っていた。
そこにはマシンガンを手にした・・・・・・

無敵の男が立っていた。


強烈に心と記憶に焼きついてしまう名シーンというものがある。小説、ドラマ、映画、漫画、どんな媒体、ジャンルにおいてもそういうシーンがある作品は数えるほどしかない。
はずなのに、「20世紀少年」という漫画には、きっとずっと忘れられないようなシーンが頻出するので困ってしまう。

上に書いた文は、70年代にロック誌を読みあさり、ラジカセでロックを聴きまくり、駅前の楽器屋のガラスに顔をくっつけていた主人公ケンヂ(当時中学生)が、弟想いの姉からエレキギターをプレゼントされ、2階の自分の部屋を飛び出し、階段を駆け下り、店の入り口のカーテンを開け、ガラスに映ったエレキを構えた自分を観たシーンのモノローグだ。

20世紀少年は30代になって独身のコンビニ店長となったケンヂが、その平凡な生活を捨て、「地球の平和を守るために」奮闘する物語だ。と書くとこの複雑で緻密に構成された作品の内容は全然伝わらないと思う。
地球の平和を脅かすのは”ともだち”と称する宗教家とそれを取り巻く集団だ。その力は強大で、細菌による攻撃や爆弾テロが次々に行われる。しかしそれはケンヂやその友達が子供のころ秘密基地で計画していた人類滅亡計画をほぼそのままにトレースしたものだった。と書いてもこの物語のおもしろさを伝えられた気がしない。
1997年から事件は始まり、60,70年代の少年時代の回想シーンをはさみつつ、2000年の血の大みそかを迎え、2014年に飛び主役はケンヂが背負っていたケンヂの姉の赤ん坊だったカンナに変わり、そして2015年世界は滅亡し、ともだち暦が始まる。壮大すぎて実際読まないことにはこのおもしろさはわからない。

とにかくページをめくるのももどかしく新しい巻が出るたびに新事実に驚かされ、信じられない急展開に胸を高鳴らせ、登場人物の行動に心を打たれてしまう。

そして最新刊18巻、ついについにケンヂが帰ってきた。
いや、正確には15巻のラストでともだち暦3年のだだっ広い荒野をバイクに乗って「おらは死んじまっただ~♪」と歌いながら走る男が出ていたけれど。
なんだか亀仙人のようなグラサンをかけ、アコギを鳴らして歌う世捨て人のようなケンヂ(矢吹丈)はカンナと出会えるのか。カンナは正義の味方になるのか。新たな”ともだち”の正体は・・・?

とうとう最終局面が近づいてきた感じがする。めまぐるしい怒涛の展開はもうないかもしれない。ここまで規模を広げてきた物語がどういうかたちで終幕するか、楽しみで仕方がない。

「奴は投げた!!ものすごい回転で、ボールはガターギリギリをころがっていった!!どうなったと思うね?ボールはピンにかすりもせずに消えていった・・・・・・いいゲームだったよ」

ガーガーガガー♪
第4中学校に、初めてロックが鳴り響いた一九七三年のあの日・・・・・・
俺は、何かが変わると思った・・・・・・
あの曲が昼休みの学校に鳴り響いていた3分とちょっとの間・・・・・・
俺は無敵だった・・・・・・

「正義は死なないのだ」



12巻に挟まっていた「ひみつ集会のおしらせ」にはほんとに驚いた。リアルすぎ。
by kngordinaries | 2005-02-28 00:38 | 本、雑誌、マンガ


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