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J.Oと数寄屋建築
先日、両親が名古屋に出てきた。かわいい息子に会いにきたわけではなく、美術館に行きたいのだと言う。
かわいい息子は、なーにが美術館だ、気取りやがって、と内心思っていたのだけれど、道案内役として連れて行かれることに。

池下にある古川美術館は、美術館というよりは大き目の画廊といったほうがしっくりくるくらいの大きさで、ちょっと高級なマンションのような外観だった。
ここで行われているJ.Oの個展が2人がわざわざ静岡県から高速を飛ばしてやってきた目的だった。

J.OといってもJ.Loことジェニファー・ロペスのいとことかではない。かの有名な歌謡ポップス歌手、ジュディ・オングさんである。
僕も「エイジア~♪」と歌っているのがアジアではなくエーゲ海のことである、というトリビアくらいしか知らない方ではあるのだけれど、彼女は実は輝かしい功績を持つ木版画家でもあったわけで、その個展がこの美術館で開かれていた。

「木版画家 ジュディ・オングが刻む日本の風景」と題されているとおり、日本家屋を題材にした23点の木版画作品が飾られていた。日本版画院展や白日会、日展等で入選したものもたくさんある。
まず驚いたのが客層だ。まさか我が両親が若い部類に入るとは。なんとなく自分がいるべき場所ではないような気がしてならない。

作品は基本的に黒を基調にしてあり、遠近法を使った構図はゴムゴムのピストルを思わせる大胆さが魅力的だ。年代をおうごとに構図の複雑さが増し、所々に黒以外の色を効果的に配するようになっていっていて、それがとても綺麗だった。
版画どころか美術にはなんの見識もないけれど、版画は絵よりも写真に近いジャンルのようだ、と思った。黒と白が基本だからか光と影の組み合わせ方がポイントのようだ。

第2展示室にあった90年代後半以降の作品はどれも美しくて、いつのまにかかなり熱心に鑑賞してしまった。その中でも最後に飾られた2003年制作「鳳凰迎祥」は特別に素晴らしかった。100号というサイズの大きさ、被写体である平等院鳳凰堂自体の美しいたたずまい、重厚な黒と正面に配した仏像の金の鮮やかさ、ちょっとため息が出る。

ひととおり個展を見終えて、続いて爲三郎記念館へ。
こちらは古川美術館の分館という位置づけで、数寄屋建築によるお屋敷「爲春亭」がそれだ。昭和9年に建てられたそうで、とても味わい深く豪勢なつくりをしている。またそこから眺めることができる日本庭園がとても綺麗だった。岩の苔むした感じ、椎の雄雄しい大木、ちょろちょろと澄んだ水が流れる小川、その中にひっそりたたずむ茶室「知足庵」がなんともいい。

ここでの催しは「有松絞り~ジャパンブルーから現代まで」という愛知県の伝統工芸である有松絞りをいろいろと紹介したもの。山本寛斎の作品やJ.Oと有松絞りのコラボ作もあった。
とにかくその空間の和みオーラの凄いことといったらなかった。一生ここで暮らしたい、とすら思った。

昔、大阪城に行ったとき、天守閣まで直通のエレベーターがあることにショックを受けた。
やっぱり時代を越えてそのままに残っているものはそれだけで価値があるし、伝わってくるものがある。

心のマイナスイオンをたっぷり補給したとある日の出来事でした。


両親、グラッチェ!
by kngordinaries | 2005-06-27 22:46 | 生活


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