滋賀県は移動中に通過したことは数あれど、降り立つのはこれが初めてかもしれない。
米原駅のほど近くにある会場の周辺は街な感じはまるでなくのどかな印象。
少し早く着いてしまったものの、特に時間をつぶせるところもなく、ひたすらまったりと時が過ぎるのを待つ。
開場直前になって会場へ。
体育館のようなホールに椅子が並べられ、後ろには可動式の階段状に坂になった即席の2階席が。全体で1500人くらいは入るだろうなかなかの広さ。ステージはPUFFY10のロゴがドンと配された幕で覆われていた。
客層は地元の方々が大半のもようで家族連れ、小さな子供連れが多数。それとははっきり違う筋金入りのPUFFYファンらしき人も1,2割。
※この先ツアー中の公演についてネタバレがそこそこあります。ご注意ください。
客電が落ち、ステージが照らされると、ステージを覆っている幕に2人の大きなシルエットが浮かび上がる。湧きあがる拍手と歓声。
1曲目は
とくするからだ。いきなり迫力のバンドサウンドとポップに弾けるメロが心地いいアップチューンで飛ばしていく。音楽にノビノビと乗ってゆるく跳ねながら歌う2人が、予想を超えてかっこいい。歌声も綺麗に重なり真っ直ぐに届いてくる。
さらに畳み掛けるように代表曲の一つである
これが私の生きる道でフロアの熱を上げ、
渚にまつわるエトセトラ へ。
全く出し惜しみのない人気曲の連打が圧巻。
PUFFYのライブは初めて観たけれど、まずはそのバンドのたたき出す音のかっこよさに耳を奪われた。何と言ってもめちゃくちゃ恋しかったしーたかさんのドラムだし!
さらにその演奏に乗るPUFFYの歌声もアグレッシブでパワフルで、しかし二人の発声のタイミングが全然ずれない。それが凄く耳心地いい。
「ありがとうございます。今回のツアーは10周年ということで、これまでの流れが観ている人に伝わるような感じになっているので、楽しんで行ってください」
というような亜美MC。トークは少なめでサクサクと次の曲へ。
「次のアルバムは色んな素晴らしい人に曲を作っていただいたんですが、5月に出るシングル『Tokyo I'm On My Way』も凄くて、オフスプリングのデクスターが作ってくれました。なんかライブを観に行って、お会いしたときに、作ってよって言ったらオッケーみたいな感じで・・・(笑)。じゃあそれを聴いてください」
いかにもオフスプリングというようなパンキッシュなサウンドがかっこいい
Tokyo I'm On My Wayを披露。ステージ後方にスクリーンが登場し、PVが流れるという趣向も。着物を洋風に崩したような衣装で歌い踊るPUFFYが吹っ切れててかっこいい。
さらにハイパーなバンドサウンドが万華鏡のようにきらめく音世界を描くポップチューン、
ジェット警察。初期の超名曲に嬉しくなる。やっぱり奥田民生は最高だ(え?)。
さらに比較的新しい
ナイスバディ。ポップでパンクな最近のPUFFYらしい弾けた1曲。ライブ開始から上がりっぱなしのセットリストで押していく。
「滋賀はライブしに来るのは初めてなんですけど・・・あれですか?魚民?魚民しかないらしいですね」
といきなり失礼なことを言う由美。前日入りしていたメンバーが夜に飲みに行こうととしたら、魚民くらいしか行けるところがなかったもよう。
「なんですか。まいはら?まいばら?よねはら?ん?」
と、米原の読み方を観客に問う由美。ある意味挑発的。
多くの声が上がるが、全然聴き取れない2人。せーので言わせてやっと「まいばら」だと理解する。
「あーそうか。やばい!まいはらって書いちゃった」
と1人慌てる亜美。2人でなにやら相談しつつ、スタッフを呼び持ってきたなにかに濁点を書き込んでいるもよう。
「あとでちょっとね。お楽しみなんで」
とかなんとか。これ、どのタイミングか忘れましたが、どこかの曲の間奏で亜美が投げたメッセージ入りゴムボールを由美が打つという演出のときのボールだったもよう。
「じゃあ、ここからしっとりめで」
との言葉から
MOTHERが鳴らされる。淡々と伸びやかなメロディが瑞々しい衝動と穏やかな叙情に溢れた言葉をまっすぐにぶつけてくる。いつ聴いても何100回聴いてもいろあせない名曲(もっぱら奥田民生ひとり股旅バージョンで聴いてたのだけど)。
「何処まで行ってもついてくる大きな太陽
行く手を遮る邪魔者は誰も居ないよ
全ては忘れる事だと解った
正しい心で明日に向かった
僕等は海と青空に誓った」
暖かな拍手が湧き起こる中、聴き覚えのあるディン!ドン!ディン!ドン!というイントロが鳴り響き
愛のしるし。たくさんの人が振りを真似ている。パンクなロックシンガーとしてのPUFFYもOTの名曲の歌い手としてのPUFFYもいるけれど、ポップアイコンとしてのPUFFYもまたかわいくて楽しくて、クオリティ高い。
ここで
Hi Hi 。まったりとした盛り上がりから一気にフロアの熱が上がる。スクリーンには全世界的アニメキャラになったPyffyAmiYumiが映し出されていた。
さらに
海へと 。誰も文句のつけようがないOTによる至高のロックチューン。スクリーンにはいまや伝説的番組となった「パパパパパフィー」の懐かしい映像が矢継ぎ早に展開。うさんくさい占い師やセレブ気取りキャラなど、ミュージシャンらしからぬバラエティとしてハイセンスな番組だったよな、と感慨深く見入ってしまう。
ここでMC、と思ったら由美がステージ上にいない。
「由美ちゃんがいない!・・・・・・・・・・・・どうしよう。わたしこういうのが一番苦手で。無理なんです。1人で喋るのとか。 (客席から「がんばって!」という励ましの声援が) ・・・いやぁ!がんばりたくない!(←本気の逃避)・・・・困ったな。どうしよう・・・あ、そうだ」
となにやら思いつく亜美。
「わたくし、実のところパフィーのリーダーでして、影の権力者なんです。だからここでリーダーらしく宣伝活動を」
とアルバム発売等の告知を淡々とするなかこっそりステージに戻っている由美。
どうやら履いているパンツのボタンが取れたとかいうアクシデントがあったらしい。
「10周年ということで、たくさんの曲をみなさんに披露したくて、いろいろ考えてたんですが、あれもこれもやりたいけど、時間的な問題もあったりするので。だからそういう曲をたくさん詰め込んだメドレーを作りました」
Teen Titans Themeから矢継ぎ早に隙間なく披露される名曲たちの
メドレー。PUFFYはほんとに素晴らしく作品に恵まれてることがよくわかる。
夢のためにや
たららん、
日曜日の娘といった地味ながらじんわりと沁みる名曲やそれぞれのソロシングル
V・A・C・A・T・I・O・N、
Honey、さらに懐かしすぎるOTの脱力系チューン
パフィーのHey!Mountainなどなど。それぞれ通しで聴きたくなってしまう。
10分以上に及ぶ長大なメドレーのあいだスクリーンにはデビュー前からの2人のオフ&オンショットが。前半の5年くらいの映像だったと思う。ちょこちょこ顔を出すしーたかさん。
ここでバンドメンバー紹介。
デビュー翌年のツアーから9年ずっと変わっていないバンドメンバーとのこと。由美がカメラを持ち、それぞれメンバーの紹介ごとにそのメンバーと観客が1ショットにおさまるポジションから記念撮影。ステージ上を走り回りぜいぜい言う由美。
しーたかさんはWピース。PUFFYライブではお約束なのか、客席もみんな同じポーズを。長年のGOZファンとしてここは知ったかで参加しておいた。
由美がモグラライクの話をし始めるが、戸惑った感じの亜美。それに気付く由美。
「あ!違う!この流れじゃないね。なにやってんだろ。やっぱ写真撮って疲れてるんですよ。まあ今のはおいおい、後でそのうちやりますから」
と取り繕う由美。
「じゃあ後半戦行きますか」
ハリケーンのイントロが響くとまた一気にギアが上がって、すぐにボルテージは上がっていく。まったりMCが嘘のような爽快なロックンロール。
ここでステージ後方にはきらびやかな電飾で「PUFFY」の文字が輝きだす。こんな演出、KISS
かTHE YELLOW MONKEYくらいでしか観たことない。あ、あとウルフルズ。
そして現時点の最新音源
モグラライクでは後方ステージ上部の踊り場に工事現場用の黄ヘルメットを被ったダンサー(?)が4名ほど現われステージ上のPUFFYと同じフリを展開。OTからパフィーの10周年への暖かなメッセージでは?とも勘繰ってしまう感動的なポップチューン。
「海を見たい 星を見たい ゼンマイ巻いて ぐるぐる巻いて ほら も少し上げてけ」
「まだまだ見えないよ どこにも見えないよ
考えてしまうよ だから手を動かし続けよう
掘って掘って また掘って
振り向けば道ができてたよ」
はじまりのうたでさらにかっ飛ばす。昔トータスが言っていたけど、ほんとに奇跡的に気持ちのいいユニゾン。
さらに
赤いブランコは2人に特別な1曲らしく、この後半に固められた曲たち全部に多くの感情と熱と意味が込められていることが感じられた。10周年をことさら凄いことのように持ち上げる必要はないけれど、それだけの時間をこのユニットは経過して、これだけの実りがあったことはまぎれもない事実。
さらにまさに2人のテーマソングといえる弾けたポップチューン、
パフィーのルールではっちゃけた盛り上がりに。
そして
ブギウギNo.5。PUFFYの楽曲のなかでも最高に完成度の高い堂々のライブアンセム。これを聴いてアメリカのプロデューサーがPUFFYのアニメ化に乗り出したのは有名な話。何処でも通用する最強ファンキーチューン。
そしてまたまた大ヒットチューン、
サーキットの娘はアグレッシブでパンキッシュなアレンジで披露。最高の盛り上がりをみせ、ライブ本編はここで終了。
「ありがとうございまーす」
とあれだけ熱いライブを展開しといて平熱な挨拶で2人が再びステージへ。といってもそういうポーズをとってしまうタイプなだけでテンションが高いのはなんとなく伝わってくる。
そしていきなり披露されたのは
Basket Case!GREEN DAYのカバーなのだけど、今のPUFFYに似合いすぎてオリジナルかと思ってしまう。
ここのMCによると次のアルバムのボーナストラックに収録されるのだとか。
続いては一転してしっとりと
ともだちを切なく優しく歌い上げる。
そして暗めのブルーの照明に染まるステージ。なにかがうごめくような音響から徐々にハイパーなシンセが鳴り曲の輪郭が浮かび上がってくる。拍手と歓声が巻き起こる。あの曲だ。
デビューシングル、
アジアの純真が鳴り響く。結局のところいつまでたっても褪せない名曲。会場全体でシンガロング。大団円の盛り上がりでアンコールも終了。おなかいっぱい。
まずはとにかく全てが予想以上。バンドのサウンドも、2人の歌声も、演出も、セットリストも、MCまでも、驚くほどハイクオリティで、問題なく全部まるごと楽しめるライブだった。
さらにPUFFYというユニットの特異で奇跡的なここまでの軌跡にもなんだか感慨深いものを感じたし、やっぱりとにかくOT氏の高性能な楽曲には改めてメカラウロコ。
まだまだ、というか今またPUFFYは新鮮でおもしろいユニットとして現在進行形だと確信しました。十分にポップアイコンとしての魅力があって、ある種ロックスターでもある感じ。
まずは6月のアルバム待ち。続いて夏フェスで観られる機会があるのならばぜひ観たい。で、今年中にまたツアーと行ってほしいな。
もちろん今後もOT氏がつかず離れずこのプロダクツに参加してくれることを熱烈に希望。