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GOING UNDER GROUND tour"TUTTI" 名古屋ダイアモンドホール
かなり激しい雨とうだるような湿気のなか、開場時間を少しオーバーして会場に到着したけれど、まだ開場されていなかった。しばらくしてまだリハ中であることがアナウンスされ、結局予定を25分くらい過ぎてやっと開場。

ちなみにダイアモンドホールはお客さんの並ばせ方で、その日の入り具合が分かる。今回は5階の会場から階段下まででは足らず、反対側の階段も使用していたので、ほぼソールドアウトに近い感じのようだと推察。

会場に入ると、ステージに白い薄布の幕が張られているのが目に飛び込んでくる。否が応でも期待が高まる。
番号が早かったのでいっさんよりの前から6列目くらいのポジションに。

ここのところのGOINGライブは本当に客層の幅が広い。男女比もほぼ半々に近いし、10代から40代くらいまでかなりバラケている。
今回は大バコであるためか、開演前から会場全体の熱気が凄く感じられた。

開演予定から15分以上過ぎて、フロアを流れるBGMがボリュームを上げ、照明が落とされ、ライブが始まった。


※このさき公演中のライブ内容についてネタバレがあります。ご注意ください。曲順は不確かな記憶で書いております。あしからず。






大音量でPrimary Music が流れだし、会場が割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。そしてステージの照明が付くとそこには5人の姿が。さらに拍手と歓声が渦巻く。
TUTTIのはじまりの歌パスポートでライブがはじまる。
「始まりはいつだって 頼りないさよならと 日だまりを吸い込んだ 桜の花」
スタートからはっきりと力強い松本素生の歌声が、爽やかなキーボードの響きに乗って届けられる。そしてワクワクするようなイントロから一気にサウンドが疾走するポップチューン、Happy Birthdayへ。フロアの熱が一気に高まる中さらにグラフィティー。イントロから大歓声が巻き起こり、サビの大合唱では早くも会場が一体感に包まれていた。

簡単なMCを挟み、丈さん作の甘く切ないポップチューンキャンディが鳴らされる。
「雨も風も歌になっていた 生まれた希望」
会場全体で手拍子が巻き起こる。
さらに口笛どろぼう、松本素生のロマンチシズムが爆発したどこまでもセンチメンタルな夏の終わりの情景を歌った熱いポップソング。「ありのままで生きていくんだよ」という素生の表現のど真ん中のテーマを「命を燃やし僕らはゆける」という激情まで高めて歌い上げる。ラストのメンバーによる多重コーラスが切なく胸に響いた。
そしてノラではTUTTIツアーではおなじみだろう、ラップによるメンバー紹介へ。素生とよういっさんがステージを縦横に移動しながらこの驚きの趣向で一気に盛り上げていく。会場は笑顔笑顔。
そしてVISTA。前回僕が参加した長野公演ではリリース前でまだ披露されていなかったシングル曲。同じツアーなのにところどころセットに変化をつけてくれているのが嬉しい。
どこまでも爽快に突き抜けるこの曲は、丈さんの中に大きな変革があったことを感じさせる。新しいこのバンドのライブアンセムになっていくことが確信できる盛り上がり。

「まず、言わなきゃいけないことがあるんでしょ」
というナカザのフリに待ってましたと話し出す松本素生。
「そうなんですよ。あのー、前回の名古屋でね。俺、禁煙するって、してるって、宣言したんですけども・・・。その日のライブの打ち上げで、早速、よういっさんにそそのかされて吸ってしまいました!」
観客ブーイング。
「俺もほんとに思ったね。人間ってなんて弱いんだろうって。たったの7日だよ。で、ステージで言って、その日にってね」
と他人事のように話す松本素生。そこへナカザが追い討ち。
「しかもさ、その日ライブが終わって打ち上げの会場に行く途中でさ、こうみんなで歩いてたら途中に煙草の自販機があったの。で、そこ通りかかったらこいつ立ち止まって。そんで、買うだけ買わして!って言うんだよ。訳わかんないよね。買うだけ買わしてって」
観客笑。
「ほんとに人間ってなんて弱いんだ、と思うよね」
とナカザ。
「まあね、そんな弱さもひっくるめて俺は歌うんだよ!」
と松本。観客拍手。でもなにか間違っている。
「まあそのときよういっさんも、素生が禁煙したっていうから俺もとか言ってたけど、実は裏で吸ってたんだよね」
とナカザ。
「なんだよそれ」
と松本。
「素生が禁煙してたから言い出せなかったんだって」
「なんだよ、それ。いらねえよ、そんな気遣い」

そんな緩いMCを突き破るように愛をちょうだいなでまたフロアの熱が上がっていく。素生の力強い歌声とそれぞれの楽器が主張しあい、バンドの演奏がガッチリ噛み合っていた。
曲が終わり、一瞬の静寂の末、響き渡るキーボードの音、シグナルだ。
どこまでも深い闇を抱えた、純粋で孤独な少年の心象風景が、劇的な曲構成と真摯な言葉で綴られる。ヒリヒリするようなリアルな焦燥。
「あぁ世界を燃やしてしまうほどの朝焼け
僕のきらいな弱い僕も燃やしてくれ
世界を焦がしてしまうほどの朝焼け
僕の凍えた薄い胸を焦がしてくれ」
「笑っていたいな 変わってみたいな
とまって見えた 世界が動いた」
そして祝福のマーチのようなイントロから南十字へ。
飛びきりのロマンと切実なリアルが交差してキラキラ輝くような世界を描き出す、このバンド独特の世界が研ぎ澄まされたようなミディアムチューン。
「冷たくなったぼくの手と 同じくらいの冷たさで
いま 気配を消して頭上を行く 幽霊の雲
生まれ変わった雨粒よ すべてを抱け」 

「すいません。俺ちょっとシャツ脱ぐわ。・・・事務所の社長に言われてさ、頼むから南十字くらいまでは脱がずにやってくれって」
と松本。
「意味わかんないけどね。頼むからって。まあいいんじゃない。南十字終わったし」
とナカザ。
白い長袖シャツを脱ぎ、Tシャツ姿になる松本素生。見事にたるんだボディに観客失笑。
「いや、分かってるんですよ。年々やばくなっていってるってことは。こんなに年々太り続けているね、バンドのボーカルが他にいるのかと」
観客爆笑。
「サンボマスターの山口さんだってね。実は全然太ってないんですから。俺は日々、重さを感じてますからね。ずっしりきてますからね!」
となぜか強気の松本。
「今日も重いなー、って思ってんだ」
とナカザ。
「そうだよ。・・・膝が痛かったりするもんね。水たまってんのかな、みたいな」
と松本。
「では、最近やってなかった曲をやります」

「カントリーロ~ このみーち~♪」
と歌いだされると会場全体から驚きの歓声と熱い拍手が湧き起こる。かよわきエナジーだ。約5年前のこの曲の蒼さもつたなさも、今ここで鳴っている音によって全然うそ臭くならないことが、このバンドの正しさの証だと思う。
誠実に音楽と観客と向き合い続けてきたバンドの道程が、どの時期の曲も美しく輝かせる。
「明日に何を持って行こうか
大人になってずいぶん経った」
そして
「旅に出ようぜ!!」
という松本素生の渾身の叫びからセンチメント・エキスプレスで、一気に疾走するサウンド。フロアの熱もここにきて最高潮に盛り上がる。どこまでも蒼くてださくてセンチでかっこ悪いこの曲の主人公が、実は一番かっこいいと全力で肯定できるからこのバンドは特別なんだと思う。
さらにさらにステップでフロアを波打たせ、大熱狂状態へ。
そして月曜日雨のメロディー~恋のナビゲーション~ショートバケイションと続く怒涛のナカザメドレーでは曲がならされるごとにフロアから歓喜の歓声が湧き起こり踊りだす、凄まじい盛り上がり。跳ねる跳ねる。
そしてそこからグッとテンポを落とすかたちで鳴らされたのは、ハートビート。穏やかであたたかな雰囲気に包まれ湧き起こる手拍子と大合唱。
「雨の日も、梅雨の日も、6月も 知りたくて走ったんだ」
「生き急ぐぼくらの 生まれたかった思いを!」
発表以来、ずっとずっとライブアンセムとして重要な位置で鳴り続けているこの曲は、しかしいつのときも新鮮に胸の奥の奥まで震わせ、背中を強く押してくれる。
そしてシリアスなギターのリフレインから歌いだされたのはグッバイベイビー
松本素生の歌声が切実に胸に迫る。弱さも臆病さもさらけだしながら、それでも震えながら未来を見つめるこの曲にどれだけの人が勇気付けられているだろう。
本編ラストはSTAND BY ME。イントロから湧き起こる歓声と掲げられる腕。歌詞の一節一節が深い意味を持ち、ずっしりと響くライブアンセム。最後はサビの大合唱も巻き起こり、大団円で本編終了。

メンバーの去り際から熱い熱い拍手が湧き起こる。
このバンドのライブに限っては、なあなあなアンコールを見た事がないけれど、このときのアンコールは本当に多くの人の強い気持ちが込められている気がした。

熱いアンコールに答えてメンバーが再びステージへ。
中澤がTシャツを着替えて登場し、それをアピールするようにお辞儀をすると盛り上がるナカザファン。それを見た松本素生が中澤に向けて中指を立て一言。
「ファック ユー」
それに対しナカザはも立てた親指を下に向け応戦。しばしにらみ合い指を突きつけあう両者。
松本「むかついたね」
中澤「何が」
松本「お前の見せ場(ナカザメドレー)はもう終わったんだよ」
中澤「(前髪をさらっとかき上げ、棒読み口調で)あー、そうですか」
といったショートコントが終了し、恒例らしい松本素生の即興ソングがいきなり歌いだされる。
「煮込んでー あ~煮込んでー 芯が残ってるくらいがちょうどいい~」
という歌い出しで始まった味噌煮込みについて歌った歌にフロアが沸く。歌い終わり声援にこたえる松本素生。
「・・・いや、いつもほんとドキドキですよ。次の言葉が出てこないんじゃないかって」
「歌い出しが斬新だったよね。煮込んで~って、何が始まるかと思ったよ」
とナカザ。
そして
「アンコールありがとうございます。では次の曲はちょっとパートを変えてやってみようかと思います。オン・ドラムス伊藤洋一!オン・キーボード河野丈洋!」
丈さんからよういっさんにドラムスティックが投げ渡され、二人とも律儀に同時にお辞儀をしてパートチェンジ。
「俺たちがまだ何者でもなかったころの、バンドの形ができるよりも前のころのことを思って作った曲です。聞いてください、orion」
という松本の曲紹介からorion
穏やかなリズムと歌謡テイストのメロディに乗って、切なくノスタルジックな歌詞が深い郷愁を誘うミディアムチューン。思いが溢れそうな松本素生の熱唱が会場に響き渡った。
「昔俺たちは 今より単純に
笑って泣いた後に 夢を見ていた
昔俺たちが 歌ったあの歌も
風と共に いつか消えてしまうから」
曲が終わり、長く熱い拍手が湧き起こる。
そしてトワイライトのイントロが鳴り響くと、フロアのそこかしこで歓喜の声援が爆発する。どこまでも特別で強い最高のライブアンセム。この曲の普遍的で真摯なメッセージはもう、これだけの人に強く必要とされていて、それはこのバンドが鳴らさなければいけないものになってしまっている。それを覚悟してからのこのバンドのライブはほんとに凄いことになっていっていると思う。
「約束しよう僕らは それぞれの地図を持って
旅立つ事はきっと さよならなんかじゃなくて
いつだって主役は君と僕で 期待とプライド背負って
主役は君と僕で それぞれほら違うストーリー」
そしてフロアの熱が高まるなか、キラキラと輝くようなイントロが鳴り響くとさらにヒートアップ。
いつまでたっても
意欲作にして大変化作でもあるTUTTIの最後を飾る、河野丈洋によるバンドへの愛を歌ったポップチューン。どこまでも軽やかで優しいビートと穏やかで牧歌的なメロディが、そのてらいのないまっすぐで熱い歌詞を、コーティングして、より胸に迫るものにしている大名曲。
ライブで歌われるとバンドによるオーディエンスへの愛情の歌にも感じられる普遍性もあるわけで。
穏やかなテンポだけれど、フロアは熱く波打っていた。
「ああ いつまでたっても
涙は涸れることなく
ああ 誰かにとっての愛は
いつだってそう
こんな風だった」
「助走を長くとる日々は過ぎて 暗い景色の中 僕は飛んだ」
「毎日ドラマはなくても
信じた嘘があっても
最後に何が残っても
ぼくはきみたちを愛している」
最後はやはり大合唱に包まれアンコール終了。
ステージからの去り際、丈さんから一言。
「ほんとにいい歌声だったね。みんなの声にのってドラムを叩くのがほんとに気持ちよかったです」

そして1回目以上にさらに熱いアンコールの拍手に、メンバーが再びステージへ。
「このTUTTIのツアーで、みんなとそのときだけの音楽を作れていることを、俺は嬉しく思います」
というようなことを語る松本。
「明日もライブで、大阪もあって、それが終わると東京に戻るわけなんですけど、戻ってからも俺たちは音楽をやりますよ。音楽をやっていきます。離れていても、しばらく会えなくても、音楽で俺たちはいつでも繋がりあえる、素晴らしいよね」
フロアから熱い拍手。
そしてほんとにほんとのラストチューンはハミングライフ
ステージ最前で身を乗り出し、ぐしゃぐしゃの顔でハンドマイクで今にも泣き出しそうな声で歌い、歌詞に合わせて身振り手振りで伝えようとする松本素生。
「さあ どこへ行こう
舞台はいま見てるすべて
アスファルトに映るぼくらは
重なり合い また離れていった」
後半はラララの大合唱。
「もっと!」
「2階席も!」
と最前列の柵によじ登って叫ぶ松本素生。
大合唱に包まれてここでライブは全て終了。

いつもツアーに参加して、フェスでも何回も観ている彼らのライブは毎回毎回が素晴らしいけれど、今回はその中でも特別に素晴らしかったような気がする。
それは、よりこのバンドがオープンな体制で練り上げた演出がしっかり作用したこともあるし、「TUTTI」と「VISTA/ハミングライフ」という最新の音源で、分かりやすく見えてきたバンドの成長の物語が感動的に映ったからかもしれない。

とにかくサプライズだったかよわきエナジーからアンコールのラスト曲ハミングライフまではほんとに全てが素晴らしかった。
タッシ合唱団に始まって、トワイライト・ハートビートの誕生で大きな転換期を迎えたこのバンドのライブ手法がここ最近で一つの到達点に達したことは間違いないと思う。今のGOINGはちょっと凄いバンド力学が働いている。


今月28日にはGOING初となるベストアルバムがリリースになるわけだけど、こんなに胸の高鳴るベストアルバムは自分的に初めてじゃないかという気がしてます。

どの時期の作品も素直にいいと思える。といっても金太郎飴のような活動は一切していないこのバンドの歩みは、単純にカラフルだし、分かりやすくドラマチックだし、他に類をみないくらい誠実で個性的なものになっていると思う次第です。

やっぱり特別なバンドだ。
by kngordinaries | 2006-06-19 02:07 | ライブ


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