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ビョーキなアメリカにメスを入れる、
世直しリアル・エンターテインメント。


マイケル・ムーアの作品は社会的なテーマを扱いながら極論的だし、ドキュメントというにはエンタテインメント色が強い。
そこが個人的にはとてもしっくりくる気がする。
作り手の熱や主張がはっきりしていたほうが自分が考える材料になりやすいし、何より小難しくなくて分かりやすい。

アメリカの医療制度に焦点を当てた今回の作品も、今そこにある医療業界の現実を、客観的データと中立的視点で描写するのではなく、ムーア自身の正義と愛国心に基づく主観的視点とその考えを補完する物証や一般の人々の生の言葉を材料に強い主張が行われている。

でも、それがいいんだと思う。
一人の人間の熱い主張がある作品には必ず哲学がみえる。それと自分の考えを照らし合わせて物事を思索することが、きっと有意義なことだと思うのだ。というか、極端な話それがない作品には僕はそれをどう観ていいのかも分からなくなる。
情報の客観的な羅列は、新聞やニュースの一コーナーならそれが役割なのだろうけれど、映画館の劇場で観るものとして、お金を出して観るものとして、やっぱりこのくらいはかましてほしい。

医療制度は、その国の人々の日々の生活に密接に影響する、とてつもなく重要なものだ。それが利益追求の市場原理で行われていいのか、ということが結局言いたいところで、それをムーアはアメリカ人としての誇りというものと直結して論じ諭し啓蒙する。

このファットなアメリカ人の作品が好きなのはその点も大きい。
つまり、この人はもの凄く情に熱く、自分の国とそこに住む(特に貧困層の)人々を溺愛していて、攻撃的な主張とは裏腹に最終的な着地地点は真っ当で保守的で徹底して弱者の味方なわけで、そこがいいのだと思う。
といっても、今回の作品はそのテーマが観客にとってこれ以上なく身近なものであることもあってか、必要以上の企画性や娯楽性はなく、以前の作品ほど過激な試みもない。 というか、後半での刑務所へのアポなし取材シーンを覗けば、ほぼない。いやあのシーンはなくても十分成立しているのでは・・・。

まあ、そんな手法についてのいろいろはありつつ、華氏911にも増して、笑えて泣ける、悲しくてやるせなくて暖かくて優しい、現実の問題としての圧倒的な重みがある、まさにキャッチコピーどおりの「世直しリアル・エンターテインメント」でした。
この映画は「アメリカの医療制度」についての映画ではあるけれど、そこから得られる教訓や観点はそれに限定されたものでなく、とても広く大きいものだと思います。今の世の中へなんらかの危機意識を持つ人には、ぜひぜひおすすめの作品です。
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by kngordinaries | 2007-09-10 02:08 | 映画、ドラマ


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