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夕景飛行 vol.1@池下 CLUB UP SET
ついにこの日が来てしまった。9.23今西ラストダンス(東海エリアでは)。

STANは3ピースのロックバンドである。いやダンスバンドである。
めちゃくちゃかっこよく、そして3人全員が上手いバンドである。別ちがたく有機的に結びついた集合体なのである。
と、いうような幻想を、素晴らしいロックバンドだけが持つことができるそれを、ファンに抱かせることのできる3人であるのである。
おまけに彼らは仲良しなんである。ライブを観ているだけでそれが伝わるのである。

そんなバンドからベーシストが脱退するのである。
いかんともしがたいのであるが、それらの決断の仕方もアナウンスのタイミングも内容も、彼らの表現と全く矛盾しない毅然としたものであり、どうしても見届けずにはおれんのであった。

である調終り。



さて、「STANを観るハコ」という個人的認識のあるUP SETに着いたのは6時30分過ぎ。
この日は、パノラマループというバンドの自主企画ライブで、STAN含め5組のバンドが出演するのだけど、6時開演なのでちょうど1組目が終わったくらいだろう時間。
受付の人が観客のお目当てバンドの計測をしている紙の「正」の字を覗き込んでみると、圧倒的にSTAN目当てが多かった。

会場内は全然満員ではないものの、ゆるゆるでもなく80~100人といった入り具合。

2組目はThe Pricelessという3ピース。ボーカルのMCが楽しい感じだったかなと。激しめのロックチューンから穏やかなミディアムまでいろいろと。
MCで「男の8割は女性のシャンプーの匂いが好きなんですよ」「日本の女性は美しい、っていうのはつまり髪です。匂い!それだけですよ」
という妙な主張のあと自分が好きなシャンプーベスト3を発表し、最後にマシェリという曲をやる、という流れが素晴らしかった。
MCでこの日がこのバンドの最後のライブということも言っていた。活動は2年くらいだったらしい。STANのことばかりを考えていたけども、無数のライブハウスで毎日のように解散や脱退が起こりまくってるんだという当たり前のことにハッと気付いてみたり。

3組目はMagentasmith。茶髪ロンゲに黒ジャケ、でジーンズといういでたちの4人組。メロディアスなナンバーが多く、とてもポップなサウンド。MCが非常に無骨。
ベースの人がとても淡々としているな、と思っていたら5組目のパノラマループのMCで最近ベースが脱退していたことが判明。サポートか新メンバーで演奏に一生懸命だったのかと合点。

次はいよいよSTAN。UP SET独特の演出でサウンドチェックはステージに幕が引かれていて様子が分からない。いつもどおりのKYGがミックスしたっぽいBGMのなか、サウンドチェックの音を聴きながらライブ開始を待つ。

4組目、STAN
ステージに3人が登場し、今西が真ん中に出てきて
「こんばんわ」
と頭を下げる。律儀だ。
1曲目はS.T.An!イントロだけで、もうガツンと上がってしまう、最強ファンクチューン。クールな繰り返しのリズムのなかで沸々と熱を増す展開がかっこよすぎる。
何度かライブで聴いているため、ほぼ覚えてしまったけれど、サビ部分の49のコーラス「Fu~U~U~U~U~♪」のあたりがもうヤバ過ぎ。ここのところの新曲群のモードチェンジの先駆けとなる曲なんだとも思う。
続いてYOUNG&FINE。イントロから歓声が湧き起こる完全無欠のポップソング。やっぱりいつも以上に今西に目がいってしまうところなのだけど、ご本人はいつもどおりか2割り増しかくらいの絶好調っぷりでノリまくっていた。
この辺でMC。
「自民党の総裁が福田さんになったね」
なんていう言葉もあったような。
「あ、9月でベースの今西くんがSTANをやめることになりました」
とKYGから報告が。それに答えて今西。
「(超真顔でボソッと)辞めます。・・・こないだRe:mixで観た人もいると思うんですけど、Mちゃん。いいでしょMちゃん」
などと言って、マイクから離れる。観客微笑。
そんな今西へ向けてKYGが
「お前、戻ってきてもベース空いてねーからな。カスタネットくらいだよ。カスタネット担当」
「そっちの方がいい」
観客爆笑。KYGと49も笑っていた。
「次の曲は12月に出るやつに入ってる曲です」
という曲紹介から新曲へ。
バッキバキの演奏とポップなメロディが絶妙のバランスで独特の疾走感を産んでいくアップチューン。Re:mixで披露された仮タイトル大殺界だ。が、こんなタイトルは12月のシングルにはなかったよなーと思っていたら、曲の最後の最後に「ザ ファイヤ~♪」と歌っていたので、どうやらこれがTHE FIREのようだ。めちゃくちゃにカッコいい。
「次の曲も、12月のに入る曲です」
と言って矢つぎばやに曲を始めようとしたところでドラムの異変に気付くKYG。ドラムセットの一部が崩れ、それを直しながらKYGとアイコンタクトする49。
「49待ちで~す」
で、すぐにドラムは修復。というか、明らかに49の演奏のテンションがいつにも増して凄まじく、そのグルーヴィーなドラムの殺傷力がいつも以上に発揮されていたので、そのせいもあったのかもしれないな、と邪推。
そしてアメジストへ。STANの天使のメロディサイドのアップデイト版と言える無敵ポップ。こちらも全然シングルのタイトルチューンにしてもいいクオリティ。というか「多くの人達」もシニカルでシリアスなロックチューンとしてハイクオリティだし、まだ未聴の「頭の悪い奴等は醜くそして見苦しい」なんてタイトルからして素晴らしいし、次のシングルはとんでもないことになるっぽい。
「次の曲はSTANを始めて、俺らが3人になって初めて、作った曲のうちの1曲です」
という、KYGのこのライブで言うとどうしても特別な意味を放ってしまう一言からイアン。バンドのアンサンブルがガッチリと噛み合ったスローでヘヴィーな1曲。深遠な音のうねりに飲み込まれそうな迫力の演奏だった。
続いてJAPANISTAN。この曲だと特に分かりやすかったのだけど、やっぱり49の演奏がいつにも増して切れ味鋭く感じられた。KYGの歌声も素晴らしく好調。
さらにはULTRAMAGNECTICSTANS。以前はライブ冒頭が定位置だったけれど、今はこの位置がとてもしっくり来る気がする。待ってましたの「STANマジヤバイ」でお馴染みの自己紹介チューン。このロックバンドには珍しい(というかヒップホップ的な)バンド自身のアイデンティティの表明ソングは、当然のことながら今西の紹介もあり、そのパートでは当然いつになく大きな歓声と拍手に包まれる。
この曲によって音源にもガッチリと今西の足跡は残っていくんだな、とふと思う。そして、Mちゃんは正式メンバーとなっていくことが決まっていたからRe:mix時点で歌詞を用意し、この曲を堂々と披露していたわけだ。その嘘のないまっすぐなバンドの姿勢が眩しく感じられる。
そしてこれも見納め(東海エリアでは)のパールジャム!個人的にはこれぞ今西なこの曲。ぐいぐいと演奏のみの力でテンションを上げていきラストのTHE SONGへ。
「美しいな 僕らの出会い」という出だしからちょっとこの場にハマリすぎな1曲。「くだらないな こんなの歌うの 歌わせるなよな」と歌い替えていた。
アウトロ、いつもどおりめちゃくちゃに演奏が盛り上がっていく中、KYGが最前列の観客1名を無理やりステージに引っ張り上げ、その観客にギターを託し、さらには今西からベースを奪い、解き放たれた今西はステージ中央で飛び跳ねては踊り、最終的にはギター引っ張り上げられた観客、爆裂ドラムKYG、ベース49、そしてダンサー今西!という地獄絵図に。
一心不乱に、何かを振り切るように、全てを爆発させるように、半ば滑稽なくらい踊る今西の姿が、たくさんのことを雄弁に語ってくれていた。
最後は大団円、大きな歓声に包まれる中、4人は握手を交わしあい、1人は客席へ、3人は肩を寄せ合いながらステージ袖へ。
しばらく会場の熱気は冷めやらず、拍手と歓声鳴りやまずでした。


もうなんか、まさに今西ラストダンス。
あの最後の鬼気迫るくらいのめちゃくちゃなダンスに今西の気持ちが現われてたように思います。どれだけ大きな決断だったか、どれだけ名残惜しいか。 勝手ながらそれがリアルに伝わった気がして、妙なもやもやは消え、非常にすっきりしてしまった。

当然、今西のラストライブという目で観ていたわけだけれど、そういう観点を外しても今回の演奏もパフォーマンスも歌もとても素晴らしかったと思う。
それはこの大きな大きなバンドストーリーの転機を、いい燃料としてより高みを目指す力に変換していくバンド力学がこのバンドにあるからだ。感傷に浸って勢いが一時おさまるどころか、その感情の高まりがそのままロックを転がす力に直結していた。
1年と少し前に初めてSTANのライブを観たときは、まだ荒削りであるのと同時に何も背負っていない身軽さが感じられた。そしてそれは少しずつでもリスナーの支持を得てバンドを取り巻く状況が変化したり場数を踏むことで、段々失われバンドにかかる重圧は増していった。その結果、STANは重圧が増すほどにポップになり表現は研ぎ澄まされていったように思う。

今回のライブは、掛け値なしに素晴らしいライブだった。
そしてそれと同時に、より力強くより大きくSTANのロックが転がり始めたようなライブだった。


5組目、パノラマループ
非常に優しいポップを奏でる4ピース。ドラムが下手側の端っこにいる配置。
主催バンドらしく観客にも身内的な人が多いようで、フロアの野次と会話したり非常にアットホームな雰囲気がよかった。
ただ、ボーカルが歌詞を飛ばしすぎだと思った。




★★★の「パノラマループ presents ”夕景飛行 Vol.1”」にTBさせていただきました。

REAL or FAKEのSTAN:2007/09/26『君の景色』@福島2nd LINEにTBさせていただきました。
by kngordinaries | 2007-09-27 03:03 | ライブ


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