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連合赤軍とオウム ~わが内なるアルカイダ
「しかし、私は問いたいのである。
 理想が殺意に変わる瞬間に、何が彼らに起きたのか?」

この本の前口上での著者田原総一朗の第一声がこれ。「彼ら」とはアメリカを始め世界から「テロリスト」と呼ばれるアルカイダであり、オウム真理教であり、連合赤軍のことを指している。ジャーナリストである著者は彼らについて調べ、当事者やその周辺人物に取材することで彼らのいくつかの共通点に気づいていく。

著者によると彼らのなかには
「まじめで、時代に流されず真摯に生きようとしている」
「理工系の大学や大学院で学問を修めた若者が多数」
いるそうだ。

アルカイダとはビンラディンという超大金持ちが、アフガニスタンなどイスラムを信仰する国を侵略する大国に立ち向かうために財力と同士で作った組織だ。9.11も彼らによるものである可能性が極めて高い。世界各地でテロを起こし続けている。
オウム真理教は、その名のとおり新興宗教。90年代前半に麻薬を使った修行や組織に邪魔な人物の殺害、そして地下鉄サリン事件を起こした。
連合赤軍は60年代から70年代にかけて学生達のあいだで巻き起こった全共闘運動という学生運動から生まれた過激集団。いくつかの襲撃事件により逃げ場を失い、仲間同士で山に籠りその仲間を次々と殺害。

これらの集団に属していた個人に著者は注目し、その人間性や考え方等を浮き彫りにしていく。心の内側もかすかに透けて見えるような、渾身の取材だ。そこからみえるのは時代や環境の違いこそあるものの、確かに真摯に生きようとした若者達の姿。しかしどこかで道を踏み間違えている。そしてそのメカニズムまで丁寧な取材で解き明かそうとしてみせる。どれだけ事実に近づけたかは読む人の判断にゆだねるしかない。

テロと呼ばれるような犯罪は100年前にはなかったと思う。この本を読んで感じたのは、今という時代のひりひりするような現実だ。
そこには「民主主義」というキーワードがあると思う。民主主義によって、政治は国民の代表者である政治家が行っている、ということになっている。民主主義は自由な競争社会で、ぐずは蹴落とされ、優秀なものは利益を得る、チャンスは皆平等、ということになっている。
そして「平和」、アメリカは独立以降、9.11まで本土に攻撃を受けたことがなく、日本は1945年8月15日の終戦以降、イラク戦争に参加するまで戦争をしていなかった。
そんな時代と環境のなかで、まっすぐに理想を求めるまじめな人たちがテロを行う、それがリアルに理解できたような気にさせられてしまった。

朝まで生テレビ、という深夜番組で司会進行をしている著者は、いつも小難しかったり分かりにくかったりする出演者の主張を、分かりやすく簡潔に、なかば強引に整理して、議論の道筋を立てていく。無知な僕にもちょっとは分かるところまで持ってきてくれるのだ。この本もそんな著者のすっきりとした論理が冴え渡っていて、あまりこういったジャンルが得意でない僕もさくさくと読めてしまった。
日々ぽけぽけと過ごしていたけど、9.11や自衛隊派遣でちょっと危機感を持った僕のような人におすすめの1冊。


追記 11月9日 米軍とイラク政府軍がファルージャを総攻撃しているとのニュース。
by kngordinaries | 2004-11-10 00:52 | 本、雑誌、マンガ


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