2005年 04月 16日 ( 1 )
反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークV 石田衣良
群れて死ぬより、ひとりで生きよう!

毎回毎回、シャープなキャッチコピーが魅力の一つでもある池袋ウエストゲートパークシリーズの第5弾である本書。今回はいつも以上にはっきりとシリーズ通しての生と死というテーマを物語るコピーだった。IWGPで生と死を語るってことは、もっとも現在進行形の死生観のドキュメントを見せられるようなものだ。期待感がつのって、ハードカバーを購入。

いつもながらリアルな街の描写と、おもしろい題材と、クールでシニカルな語り口で、とことん楽しませてくれる。ストリートに毎夜立っている天才スカウトマンと彼に恋をするウエイトレスの悲劇、四半世紀前にヒット曲を放ったスターの企み、姉を死に追いやった人形会社を相手に闘う中国人キャッチガールの話、そして自殺遺児による反自殺クラブとの出会いでマコトが知るいくつかの簡単な真実の話。

今の時代の情報が織り込まれているのもこのシリーズの魅力だ。
これを読んでいるあんたは、ほど近いアジアの国の若い女の命の値段が、着せ替え人形ひとつよりずっと安いことを知っているだろうか。
と、思わずマコト風に問いかけたくなるような、悲しく厳しい現実の冷静なレポートがいくつもある。

特に表題作である「反自殺クラブ」は、同じ作家の「約束」という短編集にも通じるテーマを少しダークサイドの目線から池袋的に綴ったような印象で、刺激的だ。今までのシリーズに比べて刺激が強いわけではないけれど、どんなテーマを扱おうとれっきとしたエンタメ小説だったIWGPがちょっとその枠をはみ出てしまったようで、作家の伝えたいという強い意志を感じた。
今の日本では1日に100人の自殺者が出ているらしい。そして16歳以下の子供の父親が自殺した場合、通常の何100倍もその子供の自殺性向が高まる、というのが統計的事実としてある。その前提で、自殺遺児の男女3人が集団自殺(作中でいう「シューダン」)を事前に食い止めようと反自殺クラブという活動を行っている、という設定を用意した作者の心中はどんなものだったろう。それは、まさにこの本のキャッチコピーのままなんじゃないかと思う。
そして物語の終わりでマコトが思うことは、現実そのものだし、カラカラにドライだし、楽天的でもないけれど、とりあえずうだうだと考え込まず、すっきりとした論理で生を肯定したものになっていてすがすがしい。

最後にとってもうなづけるマコトの芸術論を。これはクラシック音楽について語ったことだけどエンタテインメント全般にも言えることだと思う。

心が豊かになるなんて、おれには偉そうでいえない。でも、話のネタくらいにはなるし、誰にもいえないほど悲しいことがあったとき、ひとり切りのあんたのそばで音楽はきっといっしょにいてくれる。
芸術はどれほど高貴だろうが、あんたの無聊をなぐさめるためにある。そうではないと偉そうにいうやつは、ただ蹴り飛ばせばいいのだ。

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by kngordinaries | 2005-04-16 01:49 | 小説